第13話 事故
「下であの時に一緒に居た人たちがいて、それでサカキさんがいたって聞いたので来てみたんです。本当は関係者しかダメだと思うんですけど」
エザキ君は走ったからか顔が真っ赤になってる。少し息を切らせてるから思わず笑っちゃう。そんなに焦らなくてもいいのに。
「落ち着いてエザキ君。そうだ! 試験はどうだった?」
「え? なんでそれを?」
「ここで仕事してるから」
「あ、そうですよね」
恥ずかしそうに頬を掻くエザキ君。試験の結果はあまりよろしくないのかな?
「えっと、結果はどうかわからないんですけど。大丈夫だと思います。経験したことが役に立ちました」
「そういう問題がでるのね?」
「はい。ゲートが出た歴史とかとそう言ったゲート内の常識ですね」
なるほど、それならエザキ君の得意分野ね。私よりも知ってるだろうし。
「合格発表は何時ごろ出るのかな?」
「えっと。三日以内に通知が来るみたいです」
「三日か~。合格したらお祝いしなくちゃいけないね」
「え……。あ、そうですね。えっと……」
終始モジモジと恥ずかしそうにしているエザキ君。言い出しにくそうにしてるから気になる。何か私ダメなこと言っちゃったかな?
「連絡先を! ……その合格したと連絡したいので」
「あ! そういえば一緒にゲートに行くのに連絡先交換してなかったね」
エザキ君の言葉に思い立つ。一緒に行くって言ってるのに連絡先を知らなかったらできないよね。
「エザキ君っと。はい、これで一緒に行けるね。合格祝いは何がいい? お姉さんが奢っちゃうよ~。なんせ私お金持ちだからね~」
「そ、そんな。合格は当たり前のような試験ですからいいですよ。僕はゲートに一緒に行けるだけで嬉しいですから」
エザキ君は凄い嬉しいことを言ってくれる。私に胸に突き刺さる言葉ね。ほんとに今日は嬉しいことしか起こらない。大丈夫かな? 今日が私の命日になるんじゃない?
「嬉しいこと言ってくれるわね~。でも、合格祝いはしないと。そうだ! 私が装備を整えてあげる」
「あ、その……。軽装鎧は両親が買ってくれてて」
「両親……。はぁ!?」
大切な一人息子をこんな私のような女が連れまわす。そんなことしていいわけがないわ。ご挨拶だけでもしないと法律に関わるわ。
「ご両親に挨拶をさせて!」
「挨拶ですか……?」
「大切な息子さんを預かるんだから。あ~、考えが至らなかったわ。こういったことは事前に言わないと」
「そ、そういうものなんですか?」
「そういうものです! 明日にでも行かないと」
「は、はい……」
私が至らないからエザキ君に呆れられてしまった。これは私の両親にも謝らせないといけないかもしれない。
ってそうなると私がお母さんに叱られるということになるわ……。まあ、私の両親には内緒でいいかな……。
「じゃ、じゃあ。両親に連絡しておきますね。えっと、今日は連絡先教えてくれてありがとうございます」
「あ、いえいえ。エザキ君こそありがとね。前見ないとぶつかるよ~」
「大丈夫ですよ。って痛っ。ははは、おやすみなさい~」
「言わんこっちゃない……。ほんとかわいい子ね~」
エレベーターの扉に顔をぶつけるエザキ君。あんなに喜んでくれると冒険者になったかいがあったな~。
エザキ君がエレベーターを下りてく。1階に着くのを確認すると少し寂しく思える。
「ん、少し元気もらえた」
若いこと話をしたおかげでやる気が増した。ドモンさんに所に行って早速このやる気をぶつけよう。
「サカキさん!」
「え? あ~! ウエウエチャンネルのウエダさんだ~!」
ドモンさんの所に向かっていると声をかけられる。ミーチューブのウエダさんが声をかけてくれる。有名人に会ったような気分で手を振ると、彼は嬉しそうに頬を掻く。
「やっぱり知ってるんですね。配信やってるの」
「あ、ははは。最近見るようになって。新しい武器で戦ってましたよね~」
「過疎配信ですけどね。あ、サカッキーさんはサカキさんですよね?」
「え!? あ、うん。名前そのままなのあの時に気がついて~。恥ずかし~」
赤スパを投げたのバレバレだった。身バレしてるの恥ずかしすぎる。変なコメントしてないかな?
「新しい武器で初めてオークを一人で倒せたんです。サカキさんからのスパチャ嬉しかったですよ」
「えへへ。なんだか有名人に話しかけられてるみたいで嬉しいですね」
ウエダさんは配信する程のイケメンですし。そんな人にお礼を言われると恐縮してしまう。
「今日はどうしたんですか?」
「オークの素材と魔石を卸しに来たんです。ついでに何かいい装備はないかな~と思って」
ウエダさんはそう言って周りを見回す。今売りに出してるものはウエダさんの持っている装備と同じもの。目新しいものはないかな~。
「あ! ウエダさん! いい所に来てくれました!」
「ミズキさん?」
ウエダさんと一緒に商品を見回しているとミズキさんが焦った様子で声をかけてくる。何かあったみたい?
「一般人がゲートに入ってしまったみたいなの。一緒に来てくれる?」
「ええ!? 一般の人が? また事故ですか?」
「いえ……。その人は自分からは行ったみたいなの。秋葉原のゲートに」
「え!? あそこはまだ出口の設営が進んでないですよね?」
「そうなのよ……」
ミズキさんとウエダさんは深刻そうに話す。
秋葉原のゲートは私の入ったゲート。3階くらいの高さにあるゲートになっていて、自力で出ることはできない。ウエダさんが助けてくれた時は縄で何とか出れたけど、今は縄もないはず。
「その一般人の方の身元は? もしかして子供?」
「いえ。普通のサラリーマンよ。目撃した人はブツブツと『冒険者になるんだ』と言っていたらしいわ。そういった人は最近みなくなっていたんだけどね」
ミズキさんの答えに私は首を傾げる。
……なんだかどこかで聞いたことのある言葉ね。
「名前も判明しているわ。カンザキ ナオトというらしいわ」
「……」
いやな汗がブワッと噴き出る。思い出したくもない名前だわ。
「じゃあ行きましょう」
私は無言で二人を見送る。ほんとあの人は余計な仕事を作ってくれる人ね。




