表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
裏の《百物語》 ― 木彫りの猫のはなし ー  作者: ぽすしち


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

8/12

もったいねえなあ




 四、

 


 その家はおもったとおりしっかりとした造りで、しっかりとしたたてつけの戸をしめると、隙間風もとおらず、納屋からもってきた薪はよく乾いていて、かまどにくべて湯をわかせば、すぐに暖かくなってきた。

 土間には作業場だろうゴザがしかれ、丸太があちこちにころがり、木を彫ったときにでる、みなれたおおきさの木くずがそのままちっている。


 だが、どこをさがしても、木を彫る道具がない。


 ここにはときおり訪れるだけなのか。仕事場というわけではなく、息抜きの場なのか。



「・・・もったいねえ・・・」


 キヘイジはつい声をもらしてしまう。



 彫り物をするのに、こんな静かでいい家をもっているなんて、うらやましい。職人がこんな隠れ家みたいな仕事場を持てるとなると、それなりに名がとおり、弟子もかかえた彫師なのか。だが、それにしては、彫りかけのものや、彫りあげたものもない。試しにつかう木材もないし、あるのは木屑ばかりだ。


 ともかく、包丁ではなく、木につかう刃物がひとつもないなら、やはりこの家は仕事をするところではなく、息抜きでくるか、または、ふだんちがう仕事をしているのに、木を彫ることを道楽にしていて、ここへきているかだ。


「・・・もったいねえなあ・・・」


 また、声にだしてしまう。



 あちこちさわって、仰ぎ見て、縁の下までのぞき、また、「もったいねえなあ」と息がでる。



 ここの持ち主にあったら、こうやってつかっていないときに貸してくれないかと頼んでみようか・・・。



 そんなことを考えながら、手入れのされた板の間に横になり、囲炉裏のおき火をみてよこになった。かまどの始末はした。鍋といっしょにおかれてあった椀に、おかみさんの親戚の家をでるときにもらった握り飯をいれ、煮立った湯をいれてふやかし、それを食べたので、すこしねむくなってきた。



 はやく帰って、うちの飯がくいてえなあ・・・


 そんなことを考えて目をとじたら、つぎに目をさましたとき、 ―― 真っ暗闇だった。



 そうか。そういえばこの家を見つけたとき、お社みたいだとおもったのは、中をのぞける窓も隙間もなくて、すこし息苦しそうだとおもったからだと思い出す。

 入ってからみつけた、長押なげしの上、軒との隙間につくられたあの横長でせまい連子窓れんじまどじゃあ、外からの風も光もはいらないだろう。だが、板壁ような板は、すべて戸になっていてあけることもできるだろうから、普段は戸をはずして開け放しでいるのか。だとしたら、家主はもっと暖かくなってからここにくるのか。


 それなら、冬場から春先まで、ここはずっと空いたままか?


「・・・もったいねえ・・・もったいねえなあ・・・」



 なんどめかわからないその言葉がでたときだった。




  『 おまえ ここが気に入ったか? 』



「 っつ!? 」

 とつぜんの声にキヘイジは跳び起きて、暗闇に目をこらした。


 だが、あまりにも闇が濃すぎて、なにも見えない。気配もない。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ