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メランコリアな転生者は何もしないでグダグダ寝たい  作者: 蔵前
第一章

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バルバドゥスさん家のご内情

俺が生まれたバルバドゥス家は、伯爵家であった。

それも、それなりの収入のある領地とそれなりな歴史を持っている、よっぽどのことが無い限りは落ちぶれそうもない家だ。


また俺の家族達は、ライトノベルの登場人物らしく美麗な人達だった。


父、ゲオルグ・バルバドゥス伯爵様は、大柄で筋肉質な体つきに似合う少々いかつい顔立ちの三十代。鬣みたいな金色のふさふさの髪に水色の瞳という組み合わせで、威厳がある王様みたいで格好いい人だ。俺の母親らしきアリシアさんは、ゲオルグと比べると緑色がかった琥珀色の髪と瞳で地味な印象だが、繊細な整った顔立ちと柔らかな物腰と楚々とした清楚でさで心安らぐ。


そして俺の兄となったヒューベルトとデューイは、父親譲りの髪色に水色の瞳とゲオルグのミニチュアだが、雰囲気は父よりも母の方に似ている。

そんな麗しい彼らはどう見ても俺の存在を喜ぶばかりであり、前世の俺の両親みたいに俺を自分の人生の邪魔だと思いそうもない。


俺は彼等の愛に包まれて、ゆっくりと成長していけばいいんだな。

勝ち組?

俺の気分は高揚したが、すぐにぺしゃんと落ち込んだ。

高揚した倍なぐらい、ずしーんと。


だってさ、気がついたんだ。

俺が三男ってことは、バルバドゥス伯爵家には跡継ぎとなる長男とそのスペアである次男がすでにいる、ということだ。つまり俺は、伯爵家のいらない子。離婚の時に押し付け合われた前世と同じ、この家の邪魔っ子だ。遺産相続なんて無い、大人になったら親の脛を齧れない立場という事なのだ。


どうしよう、もう一回人生頑張らなきゃって思ったら、胸が痛い。体重くなる。

いやいや、大丈夫だ俺。

ほら、俺はまだ赤ちゃんだし、何も考えずに赤ちゃんライフ送ればいいんだよ。


だけどさあ、と俺の中の俺はそんな訳無いと俺に囁く。


流行のラノベの転生ものは、主人公は赤ん坊時代から頑張って能力値を上げた事で「ざまあできる」とか、「溺愛される」とか「無双できる」とかじゃね?

逆に何もしていないと、なんか処刑ルートとかいかねえ?


あ、でも、頑張ったところで、五歳くらいでなんか祝福とかスキルが屑ってことになったら、追放されたりするかもじゃない?


あ、追放されたら積むよ。

俺は家電無きゃ家事出来ない。

料理するったって、レトルトや冷凍飯だ。


サバイバル? キャンプ飯? 何それ美味しいの? 

インドアで友達いない俺氏は、バーベキューだってした事無いんだよ!!

追放されたらその時点で死ぬな。


…………。

頑張っても死亡フラグ折れない、か。


もう死んじゃってもいいかな。

赤ちゃんて、毛布が鼻と口に被っただけで窒息死するんだっけ。

ああでも、動くのも面倒だなあ。

もうイイかなあ、何もしたくない。


「きゃああ、フィール様が目を開けたまま動かなくなりました!!」


「お医者を、お医者を!!」


俺の世話をする小間使いと乳母の悲鳴で俺はびくんと物思いから覚めた。

それでもって、なぜ乳母達が大騒ぎなのかと考えれば、だよね、と。

赤ん坊が無気力にだらっとしたらヤバいよ。

死んだ魚みたいに目を開けたままじゃ、確実に怖いわ。

俺はごめんねという気持ちで、とりあえず赤ん坊らしく振舞う事にした。


「あ、あぶ~? あぶ~」


「ああ、フィール様が無表情でうなされてる」


余計怖がらせてしまったようだ。……すまん、死んでくる。


バタン!!

「どうした!!」


「旦那様!!フィール様がおかしな発作を!!」

「まるで呪いでも掛けられたようですわ!!」


「発作?」


ごめん、パパ。

これが俺のデフォなんだよ。

普通の赤ちゃんでなくてごめんなさい。俺のせいで不幸だよね。ほんっと、俺が死ねばいいのに自殺も出来なくてごめんなさい。


そうだよ、俺は死ねばいいんだよ。


え?


俺はしっかりした腕に抱き上げられた。

宙に浮いた俺は、自分の体がぐんにゃりし過ぎて怖い、と感じた。

でもすぐに、俺の首を支える大きな手や体を支えるしっかりした腕の心地良さに、俺は恐怖よりも安らぎばかりとなった。


気持ちいいって思ったら、全身が嬉しさばっかりでふにゃあととろける。

いいよね。

俺は赤ん坊だもんな。


「あぶ」


「ハハ。なにが発作だ。フィールは普通の赤ちゃんだよ」


「旦那様?」


「弱くてしっかり泣けなかっただけだ。さあ、お母さんの所に行こうか? ミルクを飲んだらもっと元気になるだろう」


俺を抱いているのはゲオルグお父さん。

強面のオッサンの癖に、なんて柔らかく俺に微笑むんだ。

俺、ゲオルグが俺に向ける微笑みで思い出した。

ばあちゃんが大事にしていた大き目の缶箱を空けて見て見れば、中身が俺がばあちゃんに書いた手紙ばっかりだったことを思い出した、のだ。


唯一俺の存在をありがたがってくれた、……ばあちゃん。

どうしてばあちゃんに電話一つしなかった!!


「おぎゃあああああああああ(俺のバカあああ)ふんぎゃああ(ばあちゃ~ん)」


前世での辛さも吐き出すようにして、俺はめっちゃ泣き叫んだ。

でもって俺は赤ん坊なので、俺が沢山泣いた事でゲオルグを安心させることができたらしい。


でもそれ以降は、やっぱ脱力系屍状態赤子。

それでも父親であるゲオルグがこんな変な赤ん坊な俺をそのまま受け入れたからか、俺の家族は無気力な赤ん坊な俺を訝しがることなく可愛がってくれる。


俺はこの家に生まれて良かったと思った。

何もしたくない俺が何もしたくなくても、誰かが俺に飯を食わせてくれるし、ベッドの中だけじゃいけないと俺を色々な部屋に持ち運んでくれるのだ。


俺がデレって脱力状態で転がっていても、もう誰も悲鳴を上げることは無い。

反応無い事を不安がるどころか俺の個性として受け取り、彼らは好き勝手に俺を持ち運んで俺に好きなようにしゃべりかけるのだ。


うっせえな。

俺は鬱なんだからそっとしといてくれよ!!


こんな悪態を心の中で叫んでいるなんて知らずに。


ほら、俺はこんな根性悪だ。

俺は捨てられないために頑張るのに、もう疲れちゃったんだ。

だからそっとしておいて。

俺にあなた達を愛させないで。

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