三歳になりました
無気力だろうが時の流れは無情なもので、俺は成長して三歳になった。
そして我が家は伯爵家であるので、三歳になった俺の祝いとしてお披露目会が開催される。これはこの国の慣習で、庶民貴族問わず子供が三歳の誕生日を迎えれば、家族だけでなく友人知人を招いてのお祝いをするものなのだ。
我が家は貴族という事で、お呼びする方々も多い。
それで庶民よりずっと規模が大きな会になるというだけだ。
ちなみに、五歳の時には神殿で祝福と能力鑑定を受けるのでその祝い、七歳時は幼児ではなくなった祝いとして初めてのお茶会を開催する。
子供の成長の節目節目にこのようなお祝い事をするのは、この世界は子供の死亡率が高いんだろう。ここが異世界転生もののライトノベル世界だから、日本の七五三にちなんだ行事があるわけでは決してない、はずだ。
もしもそうでも、俺はモブだ、モブのはずなのだ。
そうでなければ、俺は今からでも追放に備えてレベリングしなければいけない。
多分、この便利で進んでいるようなのに貴族がいて魔法もあるなんてライトノベル的世界でも、追放されたら、普通以下な幼児の俺はその日のうちに死ぬ。
…………どうせ死ぬならもう死んじゃおうかな。
あがいたって俺に何かできるはずなんかないし。
転がっている俺の上に影が落ちた。
「フィール。またこんな所で転がって。でも凄いよ。君は一人でここまで歩いて来たんだね」
いいえ、俺を着替えさせた乳母達によってこの部屋に運ばれただけです。
それで立って待つのも億劫なので、そのままごろりと横になりました。
そんな陸上のクラゲと化している俺の横にしゃがんで俺を見下ろすのは、七つ上の俺の長兄ヒューベルトである。
十歳の彼はもはや父のミニチュアでは無い。
成長してみれば両親の良い所を上手に遺伝しており、誰が見ても美少年となっている。このまま成長したら父親みたいなゴツイ強面騎士風ではなく、すんなりした肢体を持つ王子様風貴公子になるのかもね。
けど、もしかしたら、ブリの子がハマチからブリに成長してしまうのと同じく、今の姿も少年時代の父そっくりで最終形態が父なのかもしれないが。
「ん。おいで、フィール」
ヒューベルトが母がするみたいな柔らかな表情で俺に両手を指し伸ばした。
三歳の俺はヒューベルトが差し出した手を掴むどころか、ごろんと、長兄から離れるみたいにして転がった。
生きててごめんなさい、とか、こんな俺はほっといてください、的なものじゃない。普通にひねくれただけだ。
現在六歳の次兄デューイだって時間差なだけで、ヒューベルトの双子と言えるぐらい、ヒューベルトが六歳の時とそっくりな美少年なのである。それなのに。
ここまで言えば気付いて頂けるであろう。
そう、俺は美幼児ではないのである。
顔面偏差値で兄達が百だとすると、俺は三十程度。
何だろうねえ。
母親譲りの薄茶色の髪に緑がかった琥珀みたいな瞳。
ここは純粋にきれいだと俺は思う。
だがしかし、金髪碧眼なだけで美形認定当たり前の世界では、薄茶色は平凡極まる色合い。そこに平凡極まる顔立ちだ。俺だけバルバドゥス家違う。
でもな、親に似ていないわけではないのだ。
兄達と違い、親のパーツの地味な所だけを集めた感じなのである。
なんか格差感じる。無気力な俺の心でも兄達との顔貌差にジェラるくらいの格差。
スタート地点から俺は違うっていうか、……やる気無くす。
最初からやる気なんてモノは存在しないけど。
「どうしたの? 不機嫌? いつもと違う服で、きつくて嫌になっちゃった?」
ヒューベルトが俺の頭をそっと撫でた。
優しい。
こんなどうしようもない弟に愛情深い。
俺は兄の方へとゴロっと転がり直し――!!
長兄の嬉しそうにほころんだ笑顔に心を打たれた。
フィールはSAN値を三ポイント回復した、よ。
美しいものは癒し効果があるって本当だね。
俺は身を起こしながら兄へと手を伸ばす。
「よしよし、いい子。さっと挨拶したら終わりだよ。僕が付いているから大丈夫。心配などいらない、いらない」
「あいさちゅ、しなきゃ、だめ?」
「決まり事だからね。ふふ、デューイの時を思い出すよ。あいつも」
「兄さん。僕の悪口は許しませんよ!!」




