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メランコリアな転生者は何もしないでグダグダ寝たい  作者: 蔵前
第四章 ブリュー・グラナータになったもんでブルーな気持ちでいられない

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デュッセンドルフのモテない男(25歳)は弟妹属性にはモテている

ヴァルターの外見は俺は好きだ。純粋にイケ面だと思っている。

だから本心からそう伝えたのに、ヴァルターは褒められ慣れていないのか、真っ赤になって耐えがたきに耐えているような感じになってしまった。


ちょっとオモシロ。


けど、俺が期待込めてじっと小刻みに震える男を見つめていたのに、ヴァルターったら更に面白くなるどころか全部台無しにしてしまった。


「ハハハ、乗せられるところだった」


すかした大人に戻ったのである。

だからモテないんだよ(怒)。


「いや、本気ですって。俺はあなたの造形が好きですよ」


「造形って言い方。ユーグにも黄金律とか意味の分かんない褒め方だったな。だが、くっそ。ああ~。ブリューが女の子だったらな」


「すいません。嫁げない男で」


「馬鹿。そうじゃない。君が女の子だったら、君の言葉に素直に頷けるが、君は男の子だ。君の美意識が貴族令嬢と同じ感性だとは言い難いだろ?」


「難しい男心ですね。ちょっと卑屈すぎて引くわ」


「君は言葉の刃が尖り過ぎ。歯に衣着せようよ」


「野営テント布ぐらいの?」


「どんだけ鋭い刃で俺を刺す気だよ」


「ハハハ。それで、俺はあなたのお母様からあなたの大お見合い会を開催するように命令されているんですけど、なんか好みはありますか?」


「それって、べルテーリアに捧ぐ春の宴に持ってくるサプライズか?」


「そう。ヴァルターの結婚は愛と美の女神に縋りましょうって、デボラさんが」


「ルーたんの誕生祝いで大人しくしていると思ってたら!!」


デュッセンドルフは糞寒いので、食糧不足や凍死者の発生に気を付けないといけない冬季には他領みたいに新年の祝いも祭りもしない。ユーグの娘(ルーたん)の誕生祝いのパーティは、ほんとうに例外的処置だ。そのぐらい祝いの気持だったってこと。

そのかわりべルテーリアの季節(三月~四月)に入り暖かくなれば、冬に籠っていた分大きく祝い騒ぐのだという。


「ああ。どうして母は二十五歳の俺よりも十四歳のブリュー頼みにするんだ」


「あなたが一向に動かないからでしょう。リーザは可愛いと思ったけどなあ」


「んぐ。あ、あの子は、か、可愛いよ。だが俺と年が離れすぎている。それに」


「それに?」


「ケヴィンが長期休みでそろそろこちらに戻ってくる。あの子だって話の通じる同年代の方が良いと気が付くさ」


ああ、この人の卑屈は、弟の方が優れている、と思い込んでいる所からか。

広い視野を持つこの人は、客観的に物事を見れるからこそ、ケヴィンと同じ年齢の時の自分とは違う、とか思っちゃったのかな。次男て長男がするのを見て成長するから、要領良くこなせるだけだと思うよ。


それだけじゃないか。

ケヴィンがデュッセンドルフの瞳を生まれ持っていることも原因かも。

ケヴィンを跡取りにと持ち上げていた親戚もいたようだし、ケヴィンこそ目元を前髪で隠すなんてことをするから、ヴァルターは尚更に追い詰められたのかな。


それで卑屈で視野狭窄かよ。


リーザが辺境伯夫人になる未来は俺的にも微妙だが、リーザの一途さでこの自己評価の低い人をなんとか出来ないものだろうか。


「では、大お見合い会はリーザの参加は確定と」


「え、ちょっと?」


「え? リーザは参加させたくないと?」


「いや、そういうことは言っていないが、あの」


「あ、リーザは家がちょっと悲しい感じなので、ドレス買う余裕ないですね。参加させるならドレスの一着くらい贈ってあげてください」


「ふええ? ん、んん。ダメだ。彼女は砦の騎士だ。責任者として彼女をひいきしていると見えることをすることはできない」


「そうですか。じゃあ俺が手配してやるんでお金ください」


俺が手を差し出せば、俺の手の平には金貨一枚が乗った。

ヴァルターって金銭感覚とか庶民に寄り添って考えられる人なんだよな。

貴族女性のドレスだったら金貨十枚は下らないが、平民に近い階級女性のパーティドレスならば金貨一枚で充分だ。


「喜びますよ。ありがとう」


「ブリューはいい感覚している。俺達が心を砕かねばならない領民は裕福とはいえない平民がはるかに多い。彼等の生活がちゃんと過不足ない状態なのか見定めるには、彼等の生活と俺達の生活の違いを理解している必要がある。だから」


「待って待って待って。あなたの側近というお話は困ります」


「給料は相談に乗るぞ」


「ハハハ。俺は三食昼寝付きの生活できれば何もいらない人間です」


「それって、飯食って寝るだけの自堕落したいって奴だろ。すごい贅沢。俺こそ夢だよ。何を謙虚を装って傲慢な夢を語るかな」


「くっそ。妙にヴァルターに親しみが湧くと思ってたら、精神的に俺の双子だったとは」


「ハハハ。やば。君の言い分に俺も確かにと頷いちゃったよ。十一も年下の子なのに、会話が合い過ぎ。俺の方がヤバイ」


まあ、前世って奴で俺もアラサーだったからね。

俺はペンを持ち直し、再び書類へと目線を戻した。

こんなに書類仕事があるのは、デュパール領の領地問題だけではない。俺が連発した特許とそれらの商品の販売利益のせいもあるのだ。


凍った冬の季節なのに、デュッセンドルフはどこもかしこも好景気で沸いている。

税の計算が例年と変われば、一から計算し直しの所も出て来る。

そして基本的に自分以外には甘いヴァルターは、自分の部下達には恒例の冬季休暇取らせて自分一人で仕事を抱えるなんて馬鹿をやってるのだ。


「ブリューありがとう」


「いいよ。新作した計算機(そろばん)が使えるかなって、その検証もできるし」


「ブリュー馬鹿! 余計なもんをもう新しく作るんじゃないよ!」


「あ~。確かに。こいつも今期分の売り上げにギリ入るわ。逆に今期分の売り上げにしたいってんで、木材屋と工芸屋が作成急いでたもんなあ」


「あ~、計算やり直しかよ!」


「ごめん。お手伝いするから」


「今回だけじゃなく、頼んだ時はいつでも助けてくれるなら、俺は許すよ」


「何を口説いてるみたいな言い方で恐ろしい約束をさせようとするかな。だけどまあ、俺はいつでも付き合うよ。あんたが倒れたらこの世界が終わってしまう」


「君こそ口説いてきやがって。わかった。ひと段落したら君は帰っていいよ」


「ひと段落するまで残れと?」


「揚げ足取りかよ。このひねくれも」


「も?」


ヴァルターは俺の額にデコピンしようとしたそのまま、カキンと動きが止まってしまった。なんか浮気を見られた人みたいだなと振り返れば。


いつのまにか半開きになっていた執務室の扉の影から、金に近い薄茶色のぼさぼさな髪がひょひょいと覗いている。


「おかえり、ケヴィン」

「も、戻るのは今日だっけ。お、おかえり」


ヴァルター、だからなんで浮気がバレた旦那みたいに挙動不審になってんの。

まあ、わかるけど。

あの日ぶりのケヴィンは、あの日よりも体は成長して青年っぽくなっていたが、表情があの日よりも子供っぽくなっているのだ。


今にも泣きだしそうな五歳児?


「兄さんはなんで俺よりもそいつを可愛がっているの? 俺の服を着てるそいつは誰? 兄さんの弟は俺だ。お前は出て行けよ!」


「ヴァルター、帰っていいか?」


「今日は逆に泊って欲しい感じだ」


「今夜も寝かせないって?」


「兄さんが爛れた。爛れてるよ! お前のせいだ、出て行け!!」

「ブリュー、言い方。わざとかよ!!」

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