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静かなる包囲網 ―― 備蓄ゼロの臨界点

まえがき


本作は、綺麗事の裏に隠された国際政治の力学と、資源の絶対量という物理的限界から逆算して導き出した、「ただの思考実験を兼ねた、最悪のシミュレーション」である。



報道が伝える「正常化」や「和平の兆し」といった楽観論を剥ぎ取り、各国の「備蓄(余裕)」が底を突いた瞬間に起動する破滅のドミノ倒しを、冷徹に描き出す。



1. 偽りの蛇口東京のオフィス街。

会社員のレンは、スマホの画面に表示されたニュースを冷ややかな目で見つめていた。


『ホルムズ海峡、米イラン合意により通航再開。原油供給は正常化へ』

テレビのコメンテーターは

「これで一安心ですね」

と胸をなでおろし、街には安堵の空気が流れている。


パニックを防ぐため、あるいは政治的成果を誇るための「嘘の情報」が、今日も社会を包み込んでいた。


しかし、レンの胸のざわつきは消えない。

「本当に関係各国が言うように原油が通過しているなら、なぜ世界の備蓄量は減り続けているんだ?」

蛇口から水が流れているのに、浴槽の湯量が減っていく。そんなことはあり得ない。


船のリアルタイム位置情報(AISデータ)を見れば、民間船の多くは未だリスクを恐れて海峡の外で立ち往生している。

数字(備蓄の減少)だけは、政府やメディアのように嘘をつけなかった。

現場の供給は、完全に滞っている。




2. ロシアの心臓と「7月」のタイムリミット


本当の破滅の引き金は、中東ではなく遙か北の台地で引かれようとしていた。


ウクライナによる劇的な「戦略転換」である。

前線の膠着を打破するため、ウクライナはロシア本土の製油所、燃料貯蔵施設、輸送網へのドローン攻撃を極限まで強化していた。ロシアがいくら修理しても、直した先から再攻撃が仕掛けられる。


「破壊速度 > 修理速度」という絶望的な数式が成立したとき、ロシア国内の精製能力は崩壊し、ガソリンの輸入を余儀なくされるまでに追い詰められた。


そして、季節は「7月」を迎える。10月前後の冬の需要期から逆算すると、7月はロシアが現状維持か、より強い対応かを判断する「最後の分岐点」だった。


冬になればロシア国民自身が燃料不足で凍死するリスクがある。

余裕を持ってウクライナの攻撃能力を叩き潰せるタイムリミットは、この7月しか残されていない。

ロシア指導部は冷酷な判断を下した。自国の生存のために、世界への「エネルギー全面輸出禁止」のレバーを引いたのだ。




3. 閉ざされる門


トランプ大統領は世界大戦へのドミノを止めるため、必死に「中東・ウクライナ同時和平交渉」のディール(取引)に望んでいた。


しかし、その一縷の望みは、自国の安全保障のみを突き進むイスラエル(ネタニヤフ政権)の暴走によって、無残にも邪魔され、打ち砕かれた。


中東の火の手が収まらず、ロシアが7月の臨界点を迎えたとき、アメリカにも他国を構う「備蓄の余裕」は消え失せた。


国内のインフレと暴動を恐れたアメリカ政府は、トランプの交渉決裂とともに「アメリカ第一主義」の門を完全に閉ざし、原油・天然ガスの輸出を厳格に制限した。


中東ルートの麻痺、ロシアの全面禁輸、そしてアメリカの閉鎖。エネルギーを100%外部に頼る日本の調達ルートは、一瞬で全滅した。




4. 凍結するチェス盤


本当の地獄は、ここから世界へ逆流する。

日本国内がブラックアウト(大停電)し、工場が停止した瞬間、世界中のハイテク産業が悲鳴を上げた。スマホや電気自動車に不可欠な「積層セラミックコンデンサ(MLCC)」、半導体の土台となる「シリコンウェハー」。


日本が世界シェアを独占する超精密部品の供給が完全に「凍結」したのだ。

アメリカのインテルも、台湾のTSMCも、すべての製造ラインが強制停止した。


日本を干し上げた結果、世界経済の心臓が連鎖マヒしていく。窓の外の暗い街並みを見下ろしながら、レンは全身が凍りつくような戦慄を覚えた。


「ウクライナの戦争も、中東の泥沼も、最初からこれが目的だったんじゃないか……?」日本に直接ミサイルを撃ち込む必要などない。

中東とウクライナを燃え上がらせ、世界各国の「備蓄の余裕」を奪うだけで、日本は自動的に干上がる。


そして、日本が倒れれば世界全体のインフラが連鎖崩壊し、アメリカの覇権も終わる。


日本は「遠い国の戦争の巻き添え」を食ったのではない。最初から、この精巧に仕組まれた罠の「本丸」としてロックオンされていたのだ。


夜の底へ沈んでいく東京の街で、レンはただ一人、世界の終わりの始まりを静かに見つめていた。

あとがき


このシミュレーションが現実となった時、人類がすることはただ一つ、資源の強奪を目的とした「世界大戦への突入」である。


それが、余裕を失った国家が行き着く最悪の結果だ。

そしてその破滅のプロセスを冷徹に見つめ直したとき、私たちは不気味な違和感に行き当たる。


中東とウクライナという二大拠点の火災が、あまりにも完璧に、日本のエネルギーの生命線を切断し、世界をマヒさせる構造になっているからだ。


偶然の連鎖にしては、あまりにも出来過ぎている。

それはもしかしたら、最初から日本が標的に見える状態に思えてなりません。


私たちが平和の恩恵に浸っている裏側で、すでに巨大なチェス盤の罠は完成しつつあるのかもしれない。



(注)あくまでも馬鹿が書いた短編小説の一部でそれらはフィクションです

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