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第二話 刻まれた記憶の欠片

暗闇の淵底から這い出したばかりの彼は、まだ「名もなき存在」だった。

だが、その体内には誰かの記憶の欠片が眠っている。

断片的で曖昧な映像と感情が、無秩序に浮かび上がる。


煌く都市、燃え盛る炎、叫び声……

それは彼がかつて持っていた「何か」だった。

だが、それが何なのか、なぜここにあるのかは分からない。


彼はただ、生きるために動く。

生き残るために「食らう」しかないのだ。


新たな影が、彼の周囲を包囲する。

異形の魔物、牙を剥き、触手を伸ばし、獲物を狙う。


恐怖が芽生える暇はなかった。

彼は身を翻し、腐食液を噴射する。

敵の肉体がたちまち溶け出し、彼の身体はそれを吸収した。


しかし、今回は違った。

吸収した記憶の欠片が鮮明に蘇る。

「名前……? ――俺は、誰だ?」


疑問が増えるほどに、彼の存在は複雑になっていく。


暗黒の世界は厳しく、残酷だ。

だが彼の心には、まだ小さな「光」が宿っていた。


──それは記憶の欠片か、はたまた希望か。


彼はゆっくりと、そして確かに変わり始めていた。


神秘と獰猛が交差する世界で、彼の伝説はまだ始まったばかりだった。

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