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第十四話  他の女など必要ありません


          

     

 エウリュアレのいきなりの発言に、ギムレットは可愛らしいオデコに青筋を浮かべて怒鳴り散らす。

     

「な! 何を言い出すんだよ! そんなコト、勝手に出来るワケないだろ!」

     

 が、そこに。

     

「いいわよ~~。エウリュアレさん~~あなたの入学を~~理事長の名の元~~ここに許可します~~」

     

 ユイコのユルい声が響いた。

     

「理事長!?」 

     

 慌てて詰め寄るギムレットに、ユイコがユルイ笑顔で答える。

     

「ルシファー学園は強い戦士をより強くする為の学園よ~~。彼女の入学に反対する理由はないわ~~」

     

 その言葉と同時に、エウリュアレは知也の腕に抱き付く。

     

「部屋はトモヤと一緒でイイ」     

「あらあら若いコは積極的ね~~」

     

 ユイコが呑気な声を上げるが。

     

「ダメです!」     

「ダメだい!」

     

 ミユとギムレットの声が重なった。

     

「トモヤ様にはミユがいます。他の女など必要ありません」

     

 かつてミユは鬼の王、松本英行の親衛隊長だった。

 密かな恋心を英行に抱いていたミウだったが、鬼の王と親衛隊とでは立場が違い過ぎ、英行に愛を告白する事は最後まで出来なかった。

     

 そして英行が知也に自分の体を譲った時。

 ミユは英行の身体は自分が守り抜くと誓った。

 愛するヒデユキの体を護る役目は誰にも譲れない。

 その思いを心の奥にしまい込んで。

     

 しかしミウは知也と過ごすうちに、いつの間にか知也に心を奪われてしまった自分に気が付いた。

     

 英行と結ばれることはなかったが、英行の身体を受け継いだ知也とは、今度こそ結ばれてみせる! 

 そう心に誓うミユだった。

     

「ミ、ミユ!?」

     

 いきなり爆弾発言に、知也が思わずミユに目をやると。

     

「ミユはトモヤ様を愛しております。何の取り柄もない私にそんな想いを持たれては、迷惑でしょうか?」

     

 真剣な目で聞き返されてしまった。

     

「そ、そんなワケないだろ。それに何の取り柄もない、なんて事ない! ミユは物凄く可愛いと俺は思うよ」     

「あ、ありがとうございます!」

     

 ミユが、パアっと顔を輝かせた。

 その顔は本当に可愛らしく、思わず見とれてしまう知也だったが、そこに。

     

「ワタシは? トモヤはさっき、綺麗と言った」

     

 スレンダーなスタイルの、宝石の様に美しい少女が、そう尋ねてきただ。

     

 年の頃は知也と同じくらいだろうか。

 ミユが太陽の女神とするなら、この少女は月の女神といったトコか。

 しかし困ったコトに、その芸術品のような身体には何も着ていない。

     

「ええっと、どなたですか?」

     

 目のやり場に困りながら質問する知也に、月の女神は一瞬グレートゴーゴンに姿を変えてから、すぐに少女の姿へと変わって腕をまわしてきた。

     

「エ、エウリュアレ!?」     

「そう。ワタシ綺麗?」     

「あ、ああ」

     

 神が創り上げた美の見本のようなエウリュアレに全裸で抱きつかれて、知也はカクカクと頷いた。

     

 と、そこにギムレットの怒鳴り声が響く。

     

「トモヤに何してんだよ! ボクの方が、ボクの方が先だったのに……エウリュアレの裏切り者~~!」

     

 泣きべそをかいているギムレットにエウリュアレが冷静に言い返す。

     

「ワタシは全力で戦った。ギムレットとの約束は果たした」     

「ううぅぅ、エウリュアレのバカ~~!!」     

「あ、お嬢、待ってくだせえ!」

     

 泣きながら走り去るギムレットと、その後を追うタイラントを眺めながらに、知也が小さく呟く。

     

「何が起こったんだ?」     

「気にするほどのモノではありません」

     

 ミユはそう言い切ると。

     

「それよりもトモヤ様から離れてください」

     

 知也に抱き付いているエウリュアレを押しのけた。

     

「何をする」

     

 ムッとするエウリュアレの前にミユが立ち塞がる。

     

「さっき言いました。トモヤ様にはミユがいます。アナタは必要ありません」     

「必要ないのはお前」

     

 いきなり険悪を空気に包まれるミユとエウリュアレ。

     

「やりますか」     

「望むトコ」

     

 同時に身構える2人の美少女に、知也が慌てて仲裁に入る。

     

「待った! 俺は争いが嫌いだ」     

「分かりました。トモヤ様の望まれるのなら」     

「トモヤが言うなら」

     

 知也の言葉に、コロッと戦闘態勢を解除するミユとエウリュアレ。

 と、そこにユイのユルい声が響く。

     

「ハイハイ~~。もう時間も遅いし、今日はここまでよ~~。エウリュアレ、入学の手続きをするから一緒に来て~~」     

「分かった」

     

 シンプルな一言を残してエウリュアレはユイコと共に姿を消した。

 おそらく転移の魔法か何かだろう。

     

「皆も学長の言葉を聞いたでござろう? さっさと部屋に戻るでござるよ」

     

 ムサシが大声を出し、見物に集まっていた生徒達も自分の部屋へと帰っていく。

     

 そして後には知也とミユが残された。

     

 結局、何でこんなコトになったんだろう、と知也が首をひねっていると。

     

「ではトモヤ様、部屋に戻りましょう」

     

 ミユが知也の腕に抱き付いてきた。

     

「ミユ?」

     

 そんなミユに、知也は少し戸惑うが。

     

「ライバルが現れたので、これからミユは積極的にいきます」

     

 最高の笑顔でそう言われて、何も言えなくなってしまう知也だった。






     

「あの程度の戦いでは汗をかくコトなどなかったと思いますが、もう1度、お風呂に入られますか?」

     

 部屋に戻るなりミユにそう聞かれ、知也は風呂に入る事にしたが。

     

「お背中、お流しします」

     

 突然のミユの来襲。

     

 大浴場で一緒に入浴したコトはあったものの、あの時と違ってミユは何も身に着けていない。

 もちろんそれは知也も同様だ。

     

「わ、わ、わ、わ!」

     

 慌ててタオルで股間を隠す知也だったが、ミユは平気な顔でタオルを泡立てると知也の背中を洗い始めた。

     

「いかがですか?」     

「は、はぁ、とっても気持ちいいです、はい」

     

 知也は小さくなりながら、やっとの思いで返事を返すと、出来るだけ後ろを見ないようにして問いかける。

     

「ミユ、裸にならなくてもイイんじゃないかな?」     

「ミユの身体など、見る価値ありませんか?」     

「そんなコトない! 間違いを起こしてしまわないように我慢しているだけだ」

      

 沈んだ声で聞いてくるミウに、つい本音を知也は口にしてしまった。

     

「よかった。でも何度も言いました。ミユをいつでも好きにしてくださいって」

     

 そんな声が背後から聞こえると同時に、知也はコロンと後ろに倒されてしまう。

     

 ムニン。

     

「わ」

     

 知也の後頭部を柔らかなミユの太ももが受け止める。

 今ミユは、仰向けになった知也を膝枕している状態だ。

     

「髪の毛も洗いますね」

     

 ワシャワシャと知也の髪を洗い出すミユ。

     

 今ミユは知也の方を向いて両手で優しく髪を洗ってくれている。

 当然ながら胸の2つの膨らみを隠すモノなどない。

 ドキドキと跳ね回る心臓が口から飛び出しそうになる知也に、ミユが聞いてくる。

     

「いかがですか、トモヤ様」     

「はい!?」

     

 思わず声が裏返ってしまう知也。

     

 いかがです? いかがって、何が?

     

 パニくる知也にミユがニッコリと笑いかける。

      

「洗い加減が良ければ、髪を洗い流しますが」     

「あ、ああ、洗い加減ね。と、とても結構です」     

「はい」

     

 ヘンなコトを口走らなくて、ホントに良かった、と胸をなで下ろす知也の髪を湯で流し終えると、ミユは大きなタオルで水気をふき取ってくれる。

     

 そして他知也を立たせると、ミユは輝くような笑みを浮かべた。

     

「さあ、トモヤ様、後はミユを好きにしてください」

     

 凄く可愛い。

 物凄く綺麗だ。

 そして、このまま押し倒せたら、どれほど幸せだろうか。

 ミユのコトは本当に好きだと思う。

 でも、だからこそ言っておかなければ。

     

「ミユ、俺はお前のコト、すごく綺麗で可愛いと思っている。今までミユほど綺麗な女の子を俺は見た事がない」     

「はい!」

     

 今までにないほど真剣な顔で語りかける知也に、ミユが幸せそうに微笑む。

     

「でも俺、この先、どうやって生きていくか全く見当がつかないんだ。そんな状態で無責任なコト出来ないんだよ。ミユのコト、大切だと思うから」

     

 知也の言葉に、ミユは一層幸せそうな顔になり。

     

「わかりました、トモヤ様。でも生き方を決めたなら、1番にミユをトモヤ様のモノにしてくださいね」「あ、ああ」

     

 ミユの大胆な発言に、知也は真っ赤になりながら頷いたのだった。



2020 オオネ サクヤ Ⓒ

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