八、<回想>もう一人の求愛者
一人で居るのが辛かった時期に共感者を見つけました。
葬儀が終ったあと、神殿で白玉のことを考えながらぼーっと過ごしていた時期があった。くるくると良く動く紅玉を見つめながら、幼い頃の白玉の面影を重ねて見る。ふとその紅玉と目が合うと、茶色の瞳が微笑んで、ああ白玉はもう居ないのだと思い知らされた。そんな紅玉を同じように見つめている人影に気付いたのは、暫く経ってからだった。
虞縞玉は白玉より一つ下だった。その縞玉が巫女を見つめていたことに黒玉が気付いたのは、自分と同じように紅玉を見つめる姿を見かけてからである。
「縞玉大哥」
「ああ、黒玉」
「……白玉に言わなかったのは何故?」
縞玉は驚いたように目を見開いて黒玉を見、視線を外した。
「皆には黙っていたけど、もう何年も前から申込をしていた。『私はお傍に居続けることが出来ませんから』と」
「……」
言葉が出なかった。白玉は一人で消えて行くことを選んだのかと。
「せめてほんのひとときでもいいから一緒にと願ったけれど、『大哥はそのあと苦しむでしょう。私は大哥が苦しむようなことを喜んでする女だと思いますか』と重ねて問われた。残されるものの苦しみはずっと続くが、残していかねばならぬものも苦しまねばならぬ。残して行かねばならぬことを知り尽くしているゆえに。それは承知してはいたが……」
「白玉らしい、選択です」
「何よりも」
ふっと遠くを見つめる眼差しをした縞玉は、どことなく狂おしい何かを秘めていた。
「白玉大姐の心は、私の上にはなかった。私はそれでも良かったけれど」
白玉はかなり一族に大きな影響力を持っていましたが、個人としても望まれることは多かったので、それなりに免疫はありました。
黒玉もそれなりには周囲から望まれているんですが、無自覚乙女系なのと、徹底的に周囲を排除しまくるのが近くにいたせいで、彼らは近寄ることさえ碌に出来ませんでした。




