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二十四、宿酔と述懐

長兄どもはどんちゃん騒ぎのあと、床で寝落ちしたらしいです。

 目を開くと金色の光が視界いっぱいに広がっていた。と思ったら藺水玉の髪であった。覗きこまれているのに気づいて、縞玉は思考とともに頭をめぐらせ、起き上がろうとしたが、鋭くずきんという激痛に襲われて、頭を抱えた。見れば体には毛布が掛かっており、近くには料理と酒樽が転がっている。水玉はそれらを片付けていたようだ。ふと気付くと、少し離れたところに碧玉も毛布を被り大の字になっている。他にはそういう醜態を晒しているものはいないようだ。

「縞玉大哥、お目覚めになったのでしたら、とりあえずこれを……」

 思わずうっ。と身構えたのは仕方ないだろう。言葉とともに水玉が差し出したのは、濃い茶色をした液体である。口元に近づけると、なんとも言えない匂いがする。効用は勿論百も承知だ。一瞬躊躇ったが、飲まなければ多分この頭痛からの復活は時間が掛かるものとなることだろう。一口含んで、思わず口を押さえた。凄まじい苦味が襲ってきた。噴出しそうになるのを辛うじて堪える。口に入れた分だけ苦痛をこらえて飲み込むと、そのあとには不思議な甘味と爽涼感があった。

「……全部飲まないと駄目だよな?」

 涙目になるのを必死に耐え、そう訊く。いや、訊くまでもない。普段は自分でも調合しているのだ。もっとも、いつもは人に飲ませるだけだったのだが。水玉は再び少女のようににっこりと微笑んで肯いた。今の縞玉にはまるで悪鬼の微笑みである。ええい。とそれを呷り、思い切って飲み込むと、気力を失ったように再び床に倒れこんだ。



 黒玉がお茶の用意をしていると、漸く宿酔から復活した碧玉がやってきた。

「面倒かけてすまんが、茶を貰えるか?」

 肯いて、早速用意し差し出す。その茶を一口含んで長い息を吐く族兄を、黒玉は久しぶりにゆっくり見た気がした。

「大哥」

「ん?」

「幸福?」

 一瞬間があいた。

「ああ」

 躊躇ではなかったようである。

「白玉と結ばれていれば、と思わなくもなかったが、俺は紫玉には何の隠し事もなく自然体でいられる。女の側にとってみれば、それは時として辛いものかも知れないが、紫玉は許してくれる。白玉は違うだろう。それこそが、あいつが、俺の連れ合いとして紫玉を選んだ理由だと思う。最初は見えてなかったが、ようやくこの頃判ってきた。ここまで辿りつくのに九年もかかっちまったが」

 黒い髪を軽く振る。

「あいつに、俺と歩み寄る時間があったなら状況はまた違っただろうが、あいつにはそれがなかった」

 その面を軽く影がかすめたようだ。

「ま、要は俺にとって紫玉が必要だったってことだ」

 黒玉には、黄玉が。黄玉には黒玉が。そう呟く白い巫女の姿が頭を過ぎる。

「お前にも、必要な存在がいるだろう」

 そう言って、にやりと笑った。その笑顔に、もう黒玉はつんとなる感覚を憶えなかった。

碧玉は紫玉の気持ちは気付いてましたが、黒玉の気持ちには気付いてませんでした。

そして白玉が誰を好きだったのかはいまだに知りません。

まあだからこそ色々楽な部分もあります。


……こうしてみると、白玉って仲人婆……?

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