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第二十八話 魔王同盟

「(一体なんだったんだ? 吸血鬼の力と速度を凌駕する騎士……ダメだ思いつかない)」


 そんなモンスター聞いたこともない。そもそも吸血鬼というのが『吸血城』というダンジョンのボスのヴァンパイア・ロードとその眷属しか存在していなかったはずだ。


「…ル……マス、ギルマス!」

「えっ何だ?」

「大丈夫か? あれからぼうっとしっぱなしだぞ?」

「ああ、あれは……モンスターだったのか何だったのかと思ってな」

「確かに、アイコンも出てなかったもんな」


 普通ならアイコンが出るはずなのだ。視界に映ったモンスター全てという訳では無いが、一体しか存在しないのにも関わらずアイコンが表示されないのは異常だ。


「とりあえず、帰るわ」

「えっ? 二週目は?」

「疲れた、また明日来る」

「ちょ、ちょっと待てってギルマス!」


「何だよ、もう眠いんだ」

「後ろを見ろ! この国の城が燃えている!」

「はっ!? ひとまず行くぞ!」


 火が上がっているのは城の海岸側だ。イギリスの静寂な夜を作っているのが誰か、この時の俺達はまだ知らなかった。


「この国に魔王はいるのか!?」

「この国にはいるがあの城は関係ないはずだ!」

「チッ! ケーンは今すぐ帰れっ! 俺だけでいい!」

「馬鹿な事言ってんじゃねぇよ! ギルマスこそ帰ってろ!」


 相手が魔王ならシャレにならない! ケーンだろうが俺だろうが瞬殺できるのが魔王だ。

 やるしかないか。


「ごめんケーン……ちょっと眠ってろ」

「ギ、ルマス?」


 バタリと顔面から倒れていきそうなケーンを支える。仲間を魔王と関わらせる訳にはいかない。しばしの間眠って貰う。


「転移!」


 自宅のソファーにケーンを置き、もう一度転移する。


「魔王のこと何も知らねぇのに突っ込んでって大丈夫か? いや……行くしかないんだ!」


 心の底から燃える城へ向かうのを拒否しているのは嫌でも分かる。心なしか体も重くなっているような気がする程だ。

 それでも人の命が目の前で散っていくことだけは耐えられない。


 凰雅はひたすら静寂なイングランドの街を駆け抜ける。一つの使命感、人の救済を行うために。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「これはどういう事じゃ!? 貴様は誰なのじゃ!」


 城の豪華な広間には風穴が開き、そこから一人の化け物が姿を現した。


「俺の名を知らぬということはあるまい? 我はかの王にして魔王である、名をアーサー・ペンドラゴン。魔王としてならアーサー・ペンドラゴン・アスタリーだ」

「何を寝ぼけたことを言っておるのじゃ! アーサー王がこんなことをするわけがないのじゃ!」


 興味もほとんどないのか、それ以上の応答はしなかった。城主にしてはこの沈黙は限りなく苦痛であり、魔王にしては全く気にすることのないことである。


「いやぁ遅れてすまねぇ! 思ったより派手にやっちまったぜ!」

「構わん、俺も今来たところだ。海賊の魔王よ、此度の同盟に今更異議はあるまいな?」


 魔王に少し遅れてやってきた黒く長い髭を持つ男は下品にガハハと笑う。


「見くびってもらっちゃ困るぜ騎士王の魔王! 異論はねぇ!」

「ひっ!」


 恐怖で震え上がっていた城主の口から悲鳴が漏れる。ギロリと二人の魔王の眼光が城主の心臓を締め付ける。


「……こいつ俺にくれねぇか?」

「いいだろう。お前の船の中でやってくれ」

「あんがとさん」


 ズカズカと歩く。いかにも傲慢で、自信家であるのが伺える。その推測も間違いではないだろう。自身を入れ、同等の力を持つ四人の魔王。


 ……もう一人は別格だ、そのための同盟でもある。

 勿論本命はそっちではないのだが。


「極東の魔王とローマの魔王は呼びかけに応じずか。俺も舐められたものだ」


 いや、自身の最後も息子にしてやられたのだった。ああ憎い、モードレッドが憎い、円卓の騎士を名乗る騎士共が憎い、……全てが憎い。


「アスタリー化、ブリテンの黄金期を築き上げた王が憎しみに囚われ、魔王という枠に収まっているとは。何とも嘆かわしい」

「ッ! 貴様何者だ!」

「きっ、気づかなかったぜ…」


 その先頭に立つ青年は二人の魔王の眼光を受けても何も感じていない。そう、()()()()()()()()


「何者? 敵だ」

「勇者などと生温い連中とは根本的に違う貴様らは何者だと聞いている!」

「ふっ、その落ち着きようのなさ。王としての振る舞いは善性と共に捨ててきたか?」

「貴様!」


 ガキィィン!


「そうだ。戦いを仕掛けてきたのはそっちの方だからな」

「黙れ! 海賊の! 手伝え!」

「へいへい、初仕事としやしょうか!」


 相手は四人、全員が無機質な表情を崩さないまま武器を構える。


「何の宝剣だ!? 俺のエクスキャリバーとまともに打ち合える剣などそうそう存在しないはずだ!」

「宝剣? 知らないな」


 ガキィィ、ガキィィン! ザシュッ。


「まず一撃、いつまで耐えられるかな?」


 相手は四人、一体一なら分はこちらにあるが、二対一となると本気を出さざるをえない。


「海賊の! いけるか!?」

「いけなくてもいくのが海賊ってもんだ!」

「第二級特異点の魔王と第三級特異点の魔王と判断する。これより速やかに排除を始める」


 まだ俺は魔王として未熟だ。能力を完全には使いこなせない。だが、それでもいいだろう。


傲慢なる栄光の一閃(グロリィ・アロガン)!!」


 闇の光を纏った聖剣と剣が衝突する。それは共に攻撃するという概念をぶつけ合うということを意味する。

 しかし、闇の光はその概念を反転させる。攻撃するという概念は()()()()()という概念に置き変えられ、同じ方向性を持つ概念同士は融合し力を得る。


 闇の聖剣と衝突した少年の剣は、一秒も耐えることなく衝突と同時にその刀身がおられた。


「第一神器の損傷を確認、原因、知識(バンク)内に該当なし。有効手段不明、故に総員撤退する」

「させるか!」


 闇の光は殺すという概念を纏い少年を襲う。


「転移、始まりの神殿」

「させないってんだろ!」


【転移】スキルを発動する時、撤退するという概念が働いた。その概念を傲慢の異能は反転させる。

【転移】スキルは中断され少年に隙が生まれる。

 それでも少年は眉一つ動かさない。


「第二神器装備、撤退を最優先に戦う」

「切り殺す!」


 装備された大剣を前に構わず闇の聖剣を振り下ろす。

 そのまま触れていればまたもや武器破壊をし、今度こそ首を落とせていたであろう。


 しかし、ラッキーはそこまで続かなかった。シュワ!と闇が消える。ここまでこの力を使えたのは初めてだった。これが出来ていなければ今頃、三途川との瀬戸際に立たされていたのは俺であっただろう。


 ガキィィン!

 しかし、その大剣も並みの剣ではない。控えめに言っても聖剣級だろう。大剣の壁によって仕留め損なった。


「チッ! 運が尽きたか」

「原因を闇の光と推測。現在の警戒レベルを下げます。撤退を取り消し、再び排除を実行します」

「クッ!」


 海賊の魔王も上手くやっているが優勢ではないのは見て取れた。

 このままでは魔王の俺達がやられてしまう。


 バンッ!

 勢いよく扉が開け放たれる。第一級特異点であり、魔王たちの中のイレギュラーが遅れて登場した。

読んで下さってありがとうございます。感想等宜しかったらお願いします。

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