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隣に居てくれる人を、大切に

君が死ぬところが見たいんだ。 だからさ・・・早く死んでよ

作者:あいまいもこ
哀しい運命を背負う少年と少女が出逢って始まる Love Story






 僕はバスから降りると、まずバス停の時刻表を見た。

 帰りのバスは40分後だ。

 ふぅー、と深呼吸をして、目の前の白い建物を見上げる。

 「どんな人か知らないけど、まあ楽しみかな」

 そう言って嗤うと僕は、病院へと歩みを進めた。



 病室には君がいた。

 名前は佐那さなひとみと言うらしい。どうでも良いけど。

 同級生らしいが会ったことが無い。

 何せ彼女が学校に来たのは入学後の数週間の間だけ。

 すぐに入院生活になったかららしい。心臓が悪いのだとか。

 高校2年生になってもそれは変わらず、今年からクラスメイトになった僕が彼女について知っているのは彼女がもうすぐで死ぬという事。

「ねえ、君は誰なの?」

 彼女の病室に入った僕はとても警戒されているようだ。

「霜村って言うんだ。君のクラスメイト(笑)だよ」

 そう言う僕を上から下まで見たあとに君は「あっ」と声を上げて笑顔になった。

「霜村くんってアレでしょ?あの人でしょ?ずっとテストが学年トップの人。」

 誰かから聞いたのだろう。相手は僕を知っているようだ。

「ああ、そうだよ。それで今日はこのメッセージカードとプリントを届けに行かされた。ここに」

 そう言って僕が渡したメッセージカードを嬉しそうに君は読んでいた。

「そんな物貰って嬉しいか?誰もが可哀そー、程度にしか思ってないぞ」

「霜村くんって、結構ズバッと言うんだね・・・まあ、でも伝説の霜村くんに会えて嬉しいよ」

 何が伝え説かれていたのか知らないが、なぜだか相手は嬉しそうだった。

「それよりさ、君。死ぬんでしょ?そろそろ。僕に聞かせてよ今どんな気持ちなのか」

 相手は少し面食らっている。

「そういうの、あんまり言わないほうが良いよ。キミの将来の為にも」

 少し君は苛立っているようだった。

「実は僕、家族が全員死んだんだ。事故で
それからずっと興味があるんだよ。死ぬ前の人が何考えているのかに」

 楽しそうに話す僕を君は異常な人間を見るような目を向けてきた。

「そんなに気になるなら、自分で死ねばいいじゃない。よく分かるでしょ?そうしたら。死ぬ人の気持ちが」

「嫌だね。まだ僕は死ぬときじゃない。密度が濃い時間を生きた人の死が気になるんだよ。それに対してまだ僕は空っぽだからね。まだ、本当の死は理解できそうにないよ。

 まあ、そのためにも勉強して、少しでも密度を高めようとしてるんだよ」

「そんな事言わないでよ。私だって死にたいわけじゃないんだから」

 俯きながら君は言った。

「まあいいや。また教えて、死ぬ前の気持ち」

 そう言って病室を出た僕の背中に声が聞こえた。

「やだ」

 シンプルだけど心の底からの君の声が。



 次の日も僕は病室を訪れていた。

 今日も君はベットに横になったままだ。

「来ないでって言ったのに」

「いや、言われてないけど」

「死ぬ前の気持ちなんて怖いとか哀しいとか、みんなが思い付くようなのとそんなに変わらないよ」

「ふーん」

 終始不機嫌そうな顔を僕に向けながら君は口を開いた。

「ふーん、って何よ。ふーんって。せっかく話してあげたのに」

「いや、なんか違うなーって」

「ちがくないって。死ぬ前の私が言ってるんだからそういう事なの」

 はぁー、っと溜息をつきながら君に今日も言った。

「まあいいや。また来るよ。その時聞かせて、死ぬ前の気持ち」

「やだ」

 病室を出た僕の背後でドアが閉まるのと共に君のそんな声が聞こえた。



「ねえ、なんで毎日来るの?」

「いや、だって。死ぬ前の人間の本当の気持ちを聞くまでに死なれたら困るからね」

「なんで、そんなに拘るの?」

 君は不思議そうに聞いてくる。そんなの決まってるじゃないか。

「幸せに死にたいからだよ」

「幸せに・・・死ぬため?」

 よく分からないといった顔をしている。

「そうだよ、「死」は人生のクライマックスだからね。華やかに幸せにっていうのは当然だろ?より幸せな死を迎えるためにこうやって君に聞いてるんだ」

「そう、なんだ」

「そうだ。僕らは死ぬために生きているからね」

 依然として反応は曖昧だったが、少しは理解してもらえた様子だ。

「それでも、いつかは死ぬとしても、怖いよ。なんにも無くなっちゃうんだもん。死んじゃったら。
 私が死んだ後に、みんなが徐々に私のこと、忘れていってしまうのが怖いの。辛いの。」

「少し言葉に感情が出てきたね。前はあんまり真剣に話してくれなかったのにね。 死んでしまったあと誰かに忘れられるのが怖い、かー。君はそんなんじゃ無いだろ?忘れられるような奴じゃない。
 だからさ、安心して死んでくれ。僕の前で。それで『死』という境地を僕に教えてくれよ」

 僕の言葉に君はジトーとした目を向けてくる。

「最初は励ましてくれてるのかと思ってたけど、正常に狂ったことを言ってきたね。君らしいと言えばらしいけど。
 君が覚えておいてくれたらいいかなー」

 君はそう言って僕に笑いかけてきた。

「多分僕も死ぬよ、君が死んだ後に。だから君の事は覚えとけない。
 多分君は最高の『死』を僕に見せてくれるから。僕もそれを羨んで自ら死ぬだろうからね。」

 君はなんだか悲しそうな顔をしている。

 ま、いいや。

「じゃあ、また来るね。それまでには死なないでくれよ。僕の前じゃないと死ぬのは許さないよ」

 そう言って、座っていた窓の冊子から降りた僕は君の病室を後にした。

 君は俯いて黙っていた。



 それからも僕は佐那ひとみの病室に毎日通った。彼女は段々僕に色々話してくれるようになったし、笑うようになった。


 そして、これは死ぬ2日前からの話。


「ねえ、私哀しいの」

「ほう、それはどういう事かな?」

 目に見えて痩せてしまった君に僕は尋ねた。

「ただただ哀しいの。もう話せなくなるのが。君はずっと私の病室に来てくれたよね。それでさ、酷い事たくさん言って帰っていくの。また次の日も私のところに来て酷い事言って。

 でも、君だけなの。家族以外で私に会いに来てくれる人。たくさん話を聞いてくれて、たまに勉強教えてくれたり。理由は酷かったけど私に会いに来てくれて嬉しかったの。

 だから哀しいの。君と話せなくなるのが。私のことをよく知ってくれてるあなたが死にたいなんて言うのが。

 あなたが居なくなっちゃったら私が生きた『印』が無くなっちゃうから。だから生きて、生きてあなたの心の中で私をずっと生かしておいて欲しいの。

 だから、死にたいなんて言わないで」

 そう言った君の瞳は薄っすらと涙ぐんでいた。

「ふーん、そんな事考えてるんだ。・・・・・でも僕は死ぬよ。君が死ぬ前の人の気持ちを教えてくれたから」

 僕の言葉を聞いた君の瞳からついに涙が溢れた。

「なんでっ!なんで死のうとするの!

 私が、私がこう言ってるのに。死ぬのは哀しいって言ってるのに!心が痛いのに!
 『死』は人生のクライマックスだなんて言ってたけど、そんなの違う!人は死ぬために生きてるって言ってたけどそんなのも違う!」

 ギリギリの身体で命一杯の声で君は僕にそう言った。そして、


 「私たちは、・・・『生きる』ために生きてるの」

 静かに、心の底からそう呟いた。

「嫌だね。君が僕に教えてくれたから。『死』とはどういうものなのか」

 僕は、さっきと同じ様にそう答えた。

 君は泣きながらこう言った。

「もう、来ないで」

 病室を出て、背後でドアが閉まるのと同時に僕は言った。

「嫌だ」

 心の底からの声だった。



 次の日、死ぬ1日前だ。

 その日も僕は君の病室にいた。

「来ないでって、言ったのに」

 君は辛そうな、怒ったような、哀しいような、それでいて嬉しそうな顔をして僕にそう言った。

「嫌だって言っただろ?ここまで追っかけておいて、死にそうな君を前にして僕が来ないわけないじゃないか。」

「やっぱそういう事言うんだ。」

「口数が少ないね。もしかしていよいよ辛いのか?」

「うん」

 顔色が悪い君に僕は、語り続ける。

「まあいいや、聞いてくれ」

「僕の両親は事故で死んだんだ。僕と兄と両親の4人で街を歩いていた時に車が歩道に突っ込んできた。家族は全員意識不明の重体。でも僕だけは意識が回復したんだ。
 僕が目をさました時は、もうこの地球には僕の家族は居なかった。
 それからは何にも考えずに生きてきたけど最近になってふと考えたんだ死にたいなって。」

「それで」

「そう、それで、クラスで誰もやりたがらなかったメッセージカードのお届けに来たわけ」

「死なないで」

「ん?」

「死なないでって言っ・・・・・う、うぁ、くっ、ぅうっっっっ」


 君が急に胸を押さえて苦しみだした。

 そう言えば心臓が悪いんだっけ?

 僕はナースコールを押した。



 そして、今日。死ぬ日だ。

 僕は君の病室まで来ていた。

 だが、もうそこには君は居ない。

 特別治療室で延命の治療を受けているのだ。

 「死なないで」君が最後に言ったその言葉を思い出す。

「あれ?え、」

 僕は驚いたよ。自分の頬を流れる涙に。

 そして、納得した。

「やっぱり、そうなのかよ」

「大好きだな」

 僕は懐から一枚の封筒を出すと、君の居ないベッドの枕元に置いた。



 そして数分後、僕は白い病院の屋上に居た。

 僕の頬をとめど無く溢れる涙が澄んだ空のもと太陽に照らされて輝いている。

 靴を脱いで揃える。

 財布の中身を確認して僕は頷く。ちゃんと入ってるな。緑のカード。

 そして青い空のもと僕は君との幸せな日々を思い浮かべながら・・・・・・



 幸せに、『死んだ』。




ーーーーーーーーーーーーーーーー


 佐那ひとみは、目を醒ました。

「え、何で?」

 生きてる。

 佐那さん意識が回復しました、と無線連絡を送っているナースに尋ねる。

「何で、なんで生きてるんですか?私」

「それは・・・」

「ひとみ!」

 看護婦さんが説明のために口を開いたのと同じタイミングで両親が病室に駆け込んで来た。

「ひとみ!助かって良かった。ほんとに良かった!お母さん達、もう助からないと思ってたからっ、ほんとに・・・」

 そう言って涙を流しながら、ひとみの手を握る両親に必死に尋ねる。

「なんで・・・!なんで私は生きてるの?」

「それはだな、・・・ひとみ」

 ひとみの父が枕元から封筒を、手に取った。

 それをひとみに渡してくる。

 その封筒には、『親愛なる佐那ひとみへ』と書いてある。

「あ、ぁぁ」

 それを見て、ひとみは大切な人を失ったことを悟って言葉にならない声をもらした。

 封筒に書いてあるその字は、ひとみの病室に毎日来て、話して、勉強を教えてくれたあの人のものだから。

 父親の手から、恐る恐る受け取った封筒を開ける。

 中には手紙が入っていた。

 彼の字で書かれた手紙が。

 ひとみは手紙を読んでいく。


ーーーーーーーーーーーーーーー


 〜親愛なる佐那ひとみへ〜


 君がこの手紙を読んでいる頃、もう僕はこの世には居ないだろう。

 こんなベタな始まりだけど、最後まで読んでくれよ。

 君がこの手紙を読んでいるということは君が生きているということ。僕はそれだけで十分に幸せさ。

 君は僕に教えてくれた。『死』とは、どういう物かを。

 『死』は辛い哀しい怖い。君がそう言って教えてくれたから僕は死ぬ決意をした。

 君にそんな思いはさせたくないからね。

 実際に死んだ僕が教えてやろう。

 『死』とは苦しい、哀しいものだ。

 だから、君は死ぬな。生きろ。

 その胸の中にある、僕の心臓と共に。

 それで、死んだ僕に教えてくれ、見せてくれ。

 君の胸の中で、君の心の中で生きる僕に。

 この世界の美しいもの。まだ知らないもの。楽しいこと。君の生き様。君の喜び。

 君の人生という名の長旅に僕を連れて行ってくれ。

 忘れないでくれ。僕の事を。

 それでいて気にしないでくれ。

 僕のことは気にせずに、好きなように生きてくれ。

 好きなことをして、好きな人を好きになって、幸せな『君の人生』を見せてくれ。

 君の未来が見たい。君の未来を感じたい。

 君と一緒に、君の中で同じ気持ちを感じたい。

 同じ時を生きていたい。

 これが僕の願い。

 実は、僕には秘密があった。君には言っていない秘密が。

 実は僕は、病気になっていたんだ。

 余命は確かあと三ヶ月くらいかな。

 そんなときに君の存在を知ったんだ。

 僕は、余命宣告をされても何とも思わなかった。

 だから、君に教えて欲しかったんだ。

 死ぬ前の人の気持ちを。

 君と過ごした日々の中で死ぬ前の人の気持ちが僕にはよく分かったよ。

 君と一緒にもっと話していたかった。

 美しく、優しく、そして愛しい君と、ずっと一緒にいたかった。

 毎日君と会っていた僕の日々は、僕の人生の中で最高に幸せだったよ。

 だから、ありがとう。

 だから、ありがとう。

 僕に生きる歓びを与えてくれてありがとう。

 酷いこと言ってごめんな。ちょっと捻くれてたんだ。


 愛してるよ!

 大好きだよ!

 佐那ひとみ!

 君は生きろ!

 僕と共に!

 生きて未来を掴み取れ!


 君の顔をもう少しだけ見たかったな。好きだって、愛してるって言って欲しかったなー。

 おっと、もうこんな時間か。

 長話ゴメンな。

 じゃあ、ちょっと死にに行ってくるわ。

 それでいて、君の中で第二の人生を送るとするか。

 では最期に。

 佐那ひとみ!

 愛してる!

 ずっとずっと愛してる!

 僕と一緒に、僕の分も生きてくれ!



 君の生きるところが見たいんだ! 

 だからさ!


 最高に幸せな人生を頼んだぞ!!

 君は僕が生きた「印」なんだから。


 じゃあな、またどこかで巡り会えることを祈って・・・・・・


 愛してる。

 さようなら。

 またいつか。




 〜佐那ひとみを愛する者 霜村つかさ より〜



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「うぁぁぁ。うあぁぁん。つかさくん愛してるよー!」

「私も、ずっと大好きだよ!」

「ありがとうっ!」

「きっとまた逢おうね!」

「うぁぁぁん、っぐす、大好きだよーーーーーーう!!」


 佐那ひとみは大泣きしながら、自分の胸を抑えながら・・・・・・

 心の中の想い人に、心の底からの『愛』を叫んだ。











 

 どうでしたか?

 「生命」について、何か感じていただければ嬉しいです!

 勢いで書いてしまった作品なので、おかしな所とかあったら教えてください!

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