#4 ゆるりと
東緒海公園。ここは俺と優紀さんが二人で四つ葉のクローバーを探した思い出の場所。そういえば二人が訪れた時はまだ暖かく強い日差しの元でこども達が元気に遊び回っていたっけ。しかし季節は変わり今は寒い冬。公園内は人気があまりなく閑散としていた。
「橘さんトイレ横のベンチにいるっていってたけど、この公園トイレ3ヵ所あるんだよなぁ」
そんなことをぼやきながら橘さんを探す。この地域で一番大きい公園ということもあり、探すだけでも一苦労だ。
「あっ!早見君こっちこっち!」
遠くでそんな声が聞こえた。もちろん声の主は俺が探している橘さんだ。
「橘さんここに居たんですね。拾った写真返しに来ました」
これでようやくこの写真は持ち主の元へ帰れる。そう思ったら少し安心した。そんなことを考えながら俺は橘さんに写真を渡そうとしたまさにその時だった。
「見てないわよね?」
橘さんが一言そう言った。
「えっ!な、何をです?」
不意に橘さんから飛んできた質問に俺はうまく対応できなかった。見てないってもしかして写真のこと?いや、俺はバッチリ見てるぞ。もしかして、見られたらヤバイ写真だったのだろうか。
「あっ!見てませんよ。灯台をバックに二人が写った写真なんて見てませんよ」
「いや、あなた絶対に見てるでしょ」
鋭く勢いのおるツッコミが俺の元へ飛んだ。しまった、俺は昔から正直者で有名だったのをすっかり忘れてた。
それにしてもこの鋭いツッコミ誰かに似てるような……。
「すいません!写真見ました。でも、見てなかったらこの写真を落とした人分かりませんよ」
「いや、それ言い訳だから。私のプライバシーを何だと思ってるの。もう最低」
「えぇ~!そんなぁ」
ダメだ。彼女に難癖をつけられた。
そして、その時俺は気が付いた。
可憐な橘さんが実はプライバシーを心から大切にする女性だということに。
***
「いいわね!早見君!絶対に写真のこと言っちゃダメだからね!」
強い口調で橘さんは俺にそう言う。でも良かった。彼女は秘密の写真を俺が見たこと一応、許してくれたみたいであった。
「わかりました。誰にも言いません」
これでも俺は口が固い方なのだ。同級生の秘密はしっかりと守る。それが俺のポリシーだ。一緒に写ってる男性のことも知りたいところではあるが、それはまたの機会にしよう。
「あぁ、そうだ!もし言ったら私もあなたの秘密をみんなに言いふらすからね」
その時、ニヤリと不気味な笑みを浮かべて彼女はそう言った。俺の秘密?何の秘密なのだ?彼女の一言が頭に引っかかる。
「あら、俺には秘密なんてないって言いたげな顔してるわね。なら、教えてあげる。あなた過去にある女性を泣かしているわね?佐藤佳菜子。この名前を知らないとは言わせないわ。ねぇ、鈍男君?」
「なぁ!?ど、どうしてそれを??」
「佐藤佳菜子」この名前に俺は大きく反応した。
なぜ、彼女のことを知っているのだ?
橘梓。あなたはいったい何者なのだ?
その時、一筋の風がベンチに座る二人にゆるりと吹いた。
まるでこの後の展開を予期させるかのように。




