第0話:ターニングポイント
「今回の魔素噴火、最終的な生存者はゼロということにした。コイツは法律上存在しない人間だ」
亜空間庁長官、今出川タカシは傲然と言い放った。
その言葉の意味を、シュウジはすぐに理解できなかった。
ダンジョン内で110名が生き埋めになった未曾有の大災害、通称:魔素噴火の唯一の生き残りとして病院に運び込まれたのがつい昨日のこと。
シュウジとしても、いろいろ質問されることは覚悟していた。
なぜ、自分だけが生き残ったのか。
なにより――なぜ別人と見紛うほど外見が変貌したのか。
その問いに対して説明すべくアレコレと考えていた内容は、タカシの唐突な宣言で吹き飛ばされてしまった。
「総理の了解も得ている。よって、現状おまえには人権どころか名前もないことになる。が、名無しの権兵衛じゃ不便だろう。名前くらいは付けてやる……『シュウジ』なんてどうだ?悪くない名前だと思うが」
わざわざ名前を奪い、再度同じ名前を与える。
その傲慢な振る舞いにシュウジは絶句し、ふたりのやり取りを見守っていたタカシの部下、一ノ瀬キョウコも不安そうな表情を見せていた。
先程までシュウジを尋問し、監視の名目でトイレの中まで付いてきたキョウコ。
表情には乏しくも、スタイル抜群で凛とした雰囲気を纏っていた彼女が、今では俯いたまま何も言えなくなっている。
――最終的な生存者はゼロということにしたって、どういう意味?法律上、ぼくはどうなる?
内心で湧き上った問いに混乱するシュウジをよそに、タカシは笑いながら言葉を掛けた。
「早速だがシュウジ、おまえが知ってることを話してくれ。
――ダンジョンの最奥で、おまえは何を見た?」




