門限破り
時計の針が夜の10時を回った。真名と約束していた門限が過ぎてしまったのだ。彼はじっと時計をみつめていた。清子が玄関まで歩いて行って、鍵をかける音がした。
「鍵をかけてっしまったら真名が帰って来れないじゃないか。もう少し待ってみたらどうだ」
「あなたが甘やかすから、あの子は図に乗って門限まで破るようになったのよ。厳しい態度をみせないと、このままじゃエスカレートしていくわ」
「鍵は開けといてやれよ」
「インターホンでも鳴らすでしょ。もう子供じゃないんだから」
リビングで清子と彼は向かい合って座り、黙って真名の帰りを待った。二人の間に会話はなかった。真名は一体どうしてしまったのだろう。成績も優秀で、生活態度も決して悪くはなかった。最近になって急に変わってしまった。何か家族に不満でもあったのだろうか。自分に落ち度があるなら、それを正して真名に元に戻ってもらいたい。
20分が過ぎた頃、玄関から音がした。鍵がドアを開けなくなっているのが分かったのか、しばらくしてインターホンが鳴った。清子は席を立って玄関に向かった。彼はリビングに残った。清子の怒鳴り声が、彼の耳に入ってきた。真名の声は聞こえない。彼はリビングで二人の様子を伺いながら、深いため息をついた。長い夜になりそうだ。




