生き残りは大体クズか変態
変態です。
クティは眠りから覚めたのか、もぞもぞと毛布を退けぼんやりとした視界の中にリリアを見つけて頭をそっと撫でた。
そしてゆったりとした空気が流れるキャンピングカーの中で二度寝をしようとした。
「ふぁ…ねむぃ…」
「おはようございます姉御!朝食の準備はできてますぜ!」
「え…え?え!?」
しかしその時クティは誰ともわからない見知らぬ人物に声をかけられ驚き意識は一気に覚醒した。
「えぇっと?あれ?俺っすよ?」
そして気まずい雰囲気が流れる中愛銃を素早く引き抜きその男へと突き付けるクティへとエーティから通信が来た。
『その人は新たに加わった仲間ですよ、今日はその人の拠点へと訪れる予定になっています』
『えぇ、いつ仲間になったのさ!?いやどうせ私が眠ってた時なんだろうけどね…なんでこの人私の舎弟みたいになってるの?ギャングとかで偶に見る奴だよこれ』
『昨晩奇襲を仕掛けてきた為その身体を使って撃退しました、その時に懐かれてしまったんですよ』
治安維持部隊にいた頃違法行為を行なっていた組織でよく見た光景にクティは頭を抱えた。
割と情に熱い奴らも多く信頼関係を築けている者から打算ありきな奴もいた。
何度も見てきたクティには目の前の男が本気で自分の事を慕っている事が見ずとも気配で伝わってきたのだった。
キャンピングカーの外へ男に釣られて出てきたクティは用意された折り畳み椅子と机の上に乗せられた調理された元はペースト状の栄養食から漂ういい匂いに喉を鳴らした。
一体どんな撃退をすればこんなに信頼されている舎弟ができるのかと頭を悩ませたクティはため息をつき愛銃をホルスターにしまい男を頭の先からつま先まで流し見をした。
『昨晩聞いた話だと名前はローグス、見た目からもわかるように元中央政府守備隊所属の兵士です、食糧難に陥りアソコを紹介しました』
『あぁ小麦のね、いいんじゃない?』
『えぇそれと…』
AT05G3が言い終わる前にクティは後方から複数人に飛びかかってきたのを察知し前方へと進みローグスを盾にしようとした。
しかし気がつくのが遅れてしまったせいか1人に身体に抱きつかれて動けなくなってしまったクティはせめて襲撃者の顔を見ようと振り返り唖然とした。
「ねぇちゃんすげぇ!」
「ねーねー!そのお洋服どこで手に入れたの!?可愛い!」
「そのかっこねーちゃんお医者さんなのか!治してほしー奴がいるんだよ!」
「あ!ミゲルずるいわよ!私だってお姉様に抱きつきたいのに!」
「うぇえ!?」
幼女から青年まで多種多様な年齢と性別の子供達の波が押し寄せてきていた。
それはここ数年見たことの無い規模の子供達の集団だった為クティは目を丸くしてアホみたいな悲鳴をあげ驚いた。
「ままーーー!おはよーー!」
「「「「ママ!?」」」」
更に騒ぎによりリリアも起きたのかクティをママと呼びながら突撃し抱きついてきた為周囲は更に騒がしくなった。
もちろん音につられ大量にゾンビが集まってきていたものの年長の子供達やジェイクにローグスによりあっさりと殲滅させられていた。
「じゃあ実の娘では無いんすね、いや驚きましたよ?あそこのジェイクとやらとヤったのかと、いやはや、安心したっす」
AT05G3との情報交換をしながらリリアが娘になった経緯を所々はぐらかしながらローグスへと説明したクティは呆れ顔をした。
「こんな若い私が産めるわけがないでしょう?そもそも産んでたとしても年齢が合わないでしょうに…」
そもそもオートマトンで男だったのでいろんな意味で妊娠なんて無理だとクティは呆れた。
「いやぁ、最年少出産記録は四歳らしいですからあり得なくはなさそうっす、それと最新のメディカルポットで若返りなら出来るんでそっちかなと、あ、これ機密情報だったかもしれねぇっす」
「多分機密情報なんて意味ないと思うよ、こんな世の中だしさ」
ヤベェヤベェと呟くローグスへとクティは助け舟を返すと荒れ果てたハイウェイの先を眺めた。
「あぁ、確かにそんな小さな事より明日の生の方が遥かに重要っすからね、姉御の言う通りだ」
「うん、そろそろ出発の準備をしよ、歩いて数時間ならここに留まる理由もないしね、それにありがと」
「何がっすか?」
「ううん、なんでもないよ、ちょっとあの光景が嬉しかっただけ」
楽しそうに荷造りをするリリアとローグスの連れてきた子供達を眺めるクティは自然と笑みがもれていた。
「リリアちゃん友達できた感じすかね、以前なら学校の側に普通にあった光景っすからなんか懐かしいっす」
「家の近くに学校があったの?」
「いえ、いつも遠くから見守っていたっす、望遠鏡で」
「へ、へぇ、もう一度お願いしてもいいかな、ちょっと聞こえなくって」
さらっと耳に入ってきた犯罪者じみた行動に冷や汗をかきながら気の所為であってくれとクティは聞き直した。
さりげなくそっと距離を取りつつクティはローグスの言葉に構えた。
「えぇっと?いつも見守っていたって所っすか?」
「うん、何で見てたの?」
クティはごくりと唾を飲み込んだ。
「望遠鏡っすよ、距離があるんで肉眼だとキツかったんですよ、コレクションもありますよ?今度みるっすか?」
「へ、へぇそうなんだ…私は見なくていいかな…?」
クティは即座にコイツはダメだと理解した。
やっている事は他人に迷惑をかけていないもののローグスは倫理的に法律的に完全アウトな部類の変態だった。
クティは逃げるように荷造りをしにその場を離れるのだった。
『別に私だってクティが遠くにいたら同じ事しますけれども…何がダメなのでしょうか…』
クティが荷造りを開始してすぐAT05G3が呟いたものの、大切な相棒の事は信用して多分聞き間違えだと思い込む事にしたのだった。




