真の狙い
割と真面目回です。
でもちゃんとエーティです。
よろしくお願いします。
ジェイクはサイトの中心を男の頭から1ミリも動かさず問いを投げかけた。
「これ、どこで手に入れたの?そうやすやすと手に入る物でもないような気がしてね、そもそもここ数年一度たりとて見かけた事がない」
男は中央政府守備軍のフチに白のワンポイントの入った黒いロングコートとこれまた黒いのっぺりとしたチェストプレートを装備していた。
男をチラリと横目にAT05G3はシティの中でも一際高い中央政府をじっと見つめる。
「それは簡易的な筋力アシスト機能の付いた中央政府守備軍専用の物ですね、貴方は…あれの関係者なのですか?」
ロングコートは中央政府付近の死体から剥ぎ取れば便利なロングコートとして使えるもののチェストプレートの方はそうはいかない。
なぜならそれぞれ個人登録をされていてよっぽどの事がない限り他人が使うことは出来ないのだ。
AT05G3の凍てつくような冷たい視線に男はたじろいだ。
「そ、それが…それがなんだってんだ、だとしたらどうするつもりだ!」
「別によっぽどの事が無ければ殺しませんよ、私達は中央政府の情報が欲しいんです」
「なんでんなもんを…あぁまて撃つな撃つな!」
「正直に全てを吐きなさい」
「つか殺さないって本当だろうな!?信じるからな!つかこれって信じるしか助かんねぇじゃねぇか!?くそっ!」
表情をコロコロと変えながら呆けたり騒いだり喜んだり絶望したりとした男にジェイクは笑いが漏れた。
「大丈夫だとおもうよ、クティはそんな事じゃあ殺さないよ」
「えぇそうですよ、クティは殺しません」
「そ、そうなのか?」
「えぇ、安心してください」
心の中でAT05G3はクティは殺さないかもしれないですけれども、私はわからないですね、と呟いたのだった。
AT05G3とジェイクが男から詳しく聞いたところ端的に言えば暴走したオートマトンから逃げてきたらしくそもそも逃げるのに必死で詳細は殆ど覚えてないらしい。
そしてこの隣に寝ている少年少女達は逃げてきた途中でハイウェイのパーキングエリアにて籠城していてそのままそこで活動をしてきたとか。
そこまで話した男はAT05G3が気絶させるだけにとどめていた子供達が無事だと知り呑気に出されたレーションを食べていた。
「つーわけで俺は食料が欲しい、ついでに言えばバッテリーが欲しい」
「何がつーわけなんだよ、アンタは遠慮という物をどこかに忘れてきたらしいね?もう一回銃を突きつけられたいのかな?」
「ほうおほるなおっさん」
「おっさん!?僕まだ25なんだけど!?」
男は戦車に座りレーションを書き込みながらバッテリーが有ればコレも使えるのにとチェストプレートをノックした。
「ジェイクの老け顔はさておき食料と言ってもこちらも渡すわけにはいかないんですよね…あと半月分しかありませんから」
「バッテリーはないのか?」
「一応予備ならありますが…これも渡すわけにはいきません」
オートマトンのクティとリリアとAT05G3からしたら予備のバッテリーは命その物な為そうやすやすと手放す事は出来なかったのだ。
「頼むよ姉御ぉ…」
「姉御呼びを許した覚えはありませんし貴方の方が年上なのでは?」
「姉御って感じがするんだよな、なんか」
まぁ貴方よりは長生きはしていますけれども、と心の中でAT05G3はひとりごちた。
それからため息をついたAT05G3は男がコソコソと自分のバックへとレーションを入れようとしている所を制した。
「それはさておきくだらない事言ってないで食料問題の事ですよ、今日くらいは奢れますが貴方このままでは彼ら共々飢え死にする事になるでしょう?」
「いや、まぁ一応切り詰めれば一週間はなんとかな、それ以降はかなりキツイ」
「では、探索は?」
「無理だ、実の所武器はあっても弾薬はそれぞれ二、三発ずつしかないから囲まれたら終わりだ、そもそもこの辺には何も残っちゃいない」
「移動は?」
「ダメだ、1人重態の動けねぇ奴がいる」
「完全な詰み、と言うわけですね…」
「だから野党まがいの事してたんだろうが!」
「感情的にならないでください」
「あぁん!?」
「ちょ!エ…クティも言い過ぎ!」
一触即発の雰囲気に慌ててジェイクが仲裁に入ると男は悪態をついて手に持っていた残りのレーションを口に流し込んだ。
「クソっ…いや、あークソっ…悪かった…どうも最近ギリギリな生活してたもんで気が立っててな…」
「食料には一応心当たりがありますが多少距離があるんです」
「それはどこだ!」
「23地区のプランテーション施設です、小麦がほぼ永遠に手に入ります」
「遠いな…」
「っ!ソレ言ってよかったのかい?」
この世の中食料は割ともう残っておらずほぼ永遠に食料を手に入れられるあの施設はそれでも量は限られておりワイズエッジホテルのメンバーで独占したい物だった。
それに広く認知されればそこを奪い合う争いが起きる可能性もあったのだ。
「ジェイク、かつての仲間の1割程…それしかもう生きている可能性のある仲間はいないんです、私達には必要ありませんよ、それに彼らにしか教えません」
「それは、そうかもしれないけれどさ…まぁエー…クティが言うならいいや、それにしてもずいぶんとお人好しな行動だ、以前じゃ考えられなかった」
「まぁ、そう言う気分だっただけですよ、さて、今日は寝ましょうか、明日はその重傷者をどうにかしに行くとしましょう」
「あ、ありがてぇ!ほんとありがてぇ!一生ついてくぜ!」
2人の会話を見守っていた男は最高な方向へと話が進み嬉し涙を思いっきり流したのだった。
AT05G3はずっと考えていた。
子供に混じって遊ぶクティの愛らしい姿を絶対にデータとして残さなければと。
その為にこの目の前の男を助けるのはクティに話を通していなくともやり遂げなければならなかったのだ。
AT05G3は眠る少年少女達を横目に訪れるアルカディアをひたすらに想像して顔をにやけさせるのであった。




