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新しい身体


 「これはどう言う事なんですか」


 『まぁ、見ての通りとしか』


 クティは物陰からそっと騒ぎが起きている光景を覗き込みながら頭を抱えた。


 非常階段を登り切ったクティは息を整え汗だくになった服を渋々と白の無地のワンピースへと着替えずいぶんと昔に作られたであろう施設を探索していたのだ、そしたら見つけてしまったのだ。


 仲間の中で一番の変態を、ドMのジェイクが銃を乱射している場面を。


 ピンチに興奮しているのか顔には満面の気持ちの悪い笑みを浮かべていたジェイクがいた。


 「あれジェイクだよね、なんでここにいるのさ」


 『そうですね、是非師匠には色々とご教授お願…コホン、色々と事情を聞いておきたい所ですね、どうしますか?』


 AT05G3がジェイクの事を師匠と呼んだのを聞き逃さなかったクティはげんなりとした顔をした。

 私の大切な相棒のエーティは一体どこへと頭を悩ませるも耳に強制的に入り込んでくる戦闘音に現実へと引き戻された。


 「そうね、とりあえずあそこに飛び込むのは嫌よ?」


 クティは戦闘による損傷より気持ちの悪い笑みを浮かべながら戦闘をしているジェイクの仲間と思われたくなかった。


 物陰へと再度隠れたクティは頭を抱え込み座り込んだ。

 どうして癖のある仲間しかいないのかと、ワイズエッジホテルで生活していた時は常に考えていた事だった。

 ちなみに今のクティは割と感情に身を任せ行動したりふと興味が移ると先程までしていた事なんて記憶にも残らないアホの子になってしまっているので人の事をとやかく言う事は出来ないと思われる。



 『形勢は不利ですね、変態的な生命力を持つとは言えジェイク一人では鎮圧されそうですね』


 「と言うより多分殺されるよね」


 『そうですね、その可能性は極めて高いです』


 もう一度物陰から覗き見すると笑顔に焦りが浮かび始めているジェイクがそこにはいた。



 「ジェイク…ドMの変態で常に罵られようとしていて仲間の為と嫌な事でも興奮しながらやってくれて、とにかく変態で関わりたく無いけど一応大切な仲間だから…」


 『クティ?飛び込む際には手前の兵士の腰の拳銃を奪う事をおすすめしますよ』


 「ありがとうエーティ、行くよ!」



 ナイフを音もなく抜き取ったクティは身体の前方へと構えて物陰を伝い移動を始めた。


 クティは少しずつ慎重に、時に大胆に歩みを進た。


 「かはっ...!?」


 そしてナイフの殺傷圏内に入った所で後ろからしゃがんで物陰に隠れていた兵士の首筋と太ももの内側を切り付けた。

 

 首元の切られた箇所を抑えパクパクと音にならない声を上げている兵士からすれ違いざまに拳銃を抜き取った。


 「別のて…」


 パンッ


 運良くクティに気がつき驚き目を見開いている隣にいた兵士を奪った拳銃で頭を撃ち抜くと部屋の隅に転がっていたソファの裏へとクティは素早く移動した。


 「敵だ!紛れ込んでいたのか!?」


 「敵だと!?どこに…」


 パンッ


 クティはまだ自分の姿を見ていない間抜けな兵士を一人ソファの陰から飛び出して撃ち殺しながらジェイクの隠れる物陰へと転がり込んだ。


 「お久しぶりジェイク、貴方の顔は一番見たくなかったわ」


 「お久しぶり…?さてはあれだな、ドS天使がお迎えに来たらしいね、これはこれは嬉しい事だ」


 感極まったのかジェイクは目をトロンとさせその視点はまるでここが現実だと理解していないのかクティの目をじっと見つめて離さなかった。


 そんなジェイクをクティは過去一番の嫌悪感を浮かべた表情で睨みつけた。



 「貴方に天使が来てくれるとでも?ドMの変態野郎に?笑えるわね、ほら現実に戻ってきて」


 銃を握ったままグリップで目を覚まさせようと頬を殴りつけると目は覚めずに、更に突如恍惚とした笑顔をジェイクは浮かべもうダメだと判断した。


 『クティ、使えないし…ジェイクは置いておきましょう、敵は残り八名です、早々にご退場お願いいたしましょう、それと様々な表情ご馳走様です』


 「いちいち言わなくていいから、それとそうね、変態の相手は時間の無駄ね、さっさと制圧しましょう」


 拳銃の予備弾薬をジェイクのマガジンポーチから取り出す。

 牽制として撃っていた残弾のほぼ無くなった手元の拳銃を片手にしては素早くリロードをすると一度バックの左の外ポケットへと差し込んだ。


 そして空いた手で右の外ポケットから地下で手に入れた罠に使われていた古いグレネードを取り出して口でピンを抜き放り投げた。


 慌てて物陰から飛び出して来た敵兵士二人を撃ち抜くと同時に弱々しい小さな爆発が彼らのいた物陰で起きた。


 「こけおどしくらいにしか使え無さそうな威力ね、一体どれだけ昔の物なのかしら」


 バックの中に入っている同じグレネードはまだ沢山あり、どう使えばいいか頭を抱えそうだとクティは思った。


 とりあえずこれはダメだと判断したクティは設置型の罠を取り出して彼らの隠れている物陰の上まで投げた。


 『エーティ行ける?』


 『任せてください』


 AT05G3と短く会話を済ませたクティは素早く愛銃を構えると物陰へと吸い込まれて行く罠へとサイトを合わせて一発撃ち抜いた。



 「なっ!?そんなのあ…グハァッ!?」


 AT05G3の補助とクティの腕前により、空中で爆発した罠が四人程へと重症を負わせると残りの兵士達は慌てて撤退していった。


 息絶えている兵士から銃や弾薬をかっぱらおうかとクティは一息つく。


 腰に手を当て先程拾った戦利品のアサルトライフルを背中に吊すと部屋を見回した。


 「とりあえずは、終わりかな?」


 「そうですね、ジェイクを…これは!?クティ!あと一体残ってます!左前方の通路からオートマトンが接近中です!」


 「嘘でしょ?世代は?」


 『不明です!』


 オートマトンの相手をする危険性をクティはAT05G3という身近なオートマトンから十分すぎる程学んでいた。


 一世代前のAT05G3でさえ怯まず多少の銃弾ははじき返し、圧倒的命中精度の銃弾をいくつも放ってくるのだ。


 AT05G3は軽量モデルだが普通のモデルや重量モデルの物だとそもそも歩兵の放つ銃弾はほとんど効かないのだ。

 

 つまり撃ち勝てない可能性は断然あり得た。





 しかし




 しばらくして姿を表したオートマトンにクティとAT05G3は首を傾げた。


 これそもそもオートマトン?と。


 「グルルルル…」


 そもそもオートマトンとは人間に擬態する事も可能な会話能力や自身で判断し、行動する事の出来る戦闘人形というコンセプトのはずなのだ。


 顔や身体の至る所に追加で装甲を大量に貼り付け、顔のヘルムのスリッドから覗く目は焦点があってなかった。

 さらにそこに獣のように唸るオートマトンという異常な物なんて聞いたことも見た事もなかった。


 クティの背中に冷たい汗が流れた。

 


 「強そうだね…関節箇所の装甲の隙間に撃ち込めればなんとか、理性がなさそうなのは救いかな…」


 『そうですね、あれだけ不安定ですと持っている軽機関銃も乱射するのみでしょう、慎重に…しん…あークティ』


 「ど、どしたの?まずい事でも起きた!?」


 言葉の最後が尻すぼみになっていきクティの名前を改めて読んだことで何か異常事態が起きたと予想したクティは愛銃を握りしめて最も頑丈そうな物陰へと待避しようとした。


 『クティ、もう危険はありません、あのオートマトン乗っ取れました、何故か』


 「へ?」


 予想外の内容に愛銃を取り落としそうになりクティは慌ててホルスターへと愛銃を仕舞い込んだ。


 『ハッキングしてみたんです、私より二世代前のオートマトンだったのもありますが、保護システムが完全にシャットダウンされていたので簡単に乗っ取れました、今身体をスキャン中です』


 「え…え?」


 衝撃的な結末に混乱する頭をどうにか落ち着かせてやってきたオートマトンを見やると完全に機能を停止していた。


 『状態は極めて良好、異物等は無し、今からこのオートマトンを遠隔操作し、私の身体として使わせてもらいす』


 AT05G3がそう発言した途端にオートマトンは再度動き出した。

 慌ててクティが愛銃を向けるとオートマトンはクティの方を向き跪いた。



 「銃を向けないでください、エーティです、これでクティの身体を好きなだけ弄れるんですね、感無量です、あんなことやこんな事や…ああ今のうちにやる事リストを作っておかなければ!」


 澄んだ美しい少女の声が装甲だらけのオートマトンから聞こえてきて、さらにそれがAT05G3の物だとすぐに言動から理解したくなかったもののクティにすぐ理解できた。




 「色々言いたい事はあるけどね、変態が私の中から現実世界に解き放たれて私はどうしようかすごく悩んでるよ…」

 


 クティは深い深いため息が漏れてしまった。

エーティの状態はいわゆる装甲だらけのオートマトンへ、人間がオートマトンを操作するのと同じ原理で動かしている状況です。


AT05G3の身体に精神というか自我というかデータというかそんな感じの物は本体に存在しています。

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