誰も知らない秘密を
◯ソウマ
「ひとりで・・・カチコミを」
僕はセンゴク君からサカキ氏の話を聞いて思わず呟いていた。
センゴク君は片眉を上げてにやついた。
「へえ、ソウマ。お前でもそんな言葉知ってるのか」
僕は黙ってセンゴク君を見つめた。
センゴク君は顔から笑みを消すとじっと僕を見つめ返した。
「どうして」
僕はぎゅっと手に拳を作って握り締めた。
「どうして、僕にそんな話をしようと思ったの?」
「お前に知ってほしいと思ったんだ」
「何を?」
「俺の本性を」
僕は言葉が出なくなった。
なぜだかセンゴク君もわかっているはずだ。
だって僕は、サカキ氏の漫画を読んだ人間なんだから。
「お前はサカキの漫画を読んでわかっただろ?あいつが命をかけて敵の組にひとりで乗り込んだ時、俺は止めもしなかった。なのに、あいつは俺のことを」
僕はそれこそ息が止まるかと思った。
目の前の光景が信じられなかった僕は目を見開いた。
センゴク君の瞳から涙が溢れ出していたからだ。
「俺は安心したんだ。あいつがひとりで事務所を出て行って。いくらダチでも俺の足を引っ張られなくて済んだって。俺は本当にそう思ったんだ。あいつの自業自得だって。あいつが自分で巻いた種だって。なんで、なんでそんなこと・・・俺は、俺はあいつの親友だったのに」
“君がどんな道を選ぼうと僕は君を見捨てない。逆に君に見捨てられたとしても僕は君を恨まない”
僕の頭の中でレイの言葉が聞こえた。
涙をぽろぽろと零すセンゴク君の頭の中ではきっとこのレイの言葉が残っているんだ。
そんなセンゴク君に僕は問いかけた。
「僕が君の本性を知ってそれで君はどうなるの?」
センゴク君の瞳が僕を捉える。
「知ってくれているだけでいい。誰かひとりでもこの世に俺の本性を秘密を知ってくれている人間がいるだけで俺はそれで存在できる」
僕はその言葉に思わず目を見張った。
あの時の僕も同じことを感じたからだ。
サカキ氏に僕の秘密を話して受け入れてもらった時。
自分の存在を生まれて初めて認めてもらえたような、そんな感覚を僕は感じたんだ。
だからわかるんだ。
センゴク君の気持ちが、痛いほどに。
でも
「それが」
僕は呆れた顔でセンゴク君を見つめた。
「いじめていた相手でも?」
「ああ」
即答だった。
でも僕はどこかで納得はしていた。
だからこそ、か。
自分しか知らない自分、秘密。
それを打ち明けた時、自分の存在は確かにそこに存在したと証明できるのかもしれない。
僕もそうだし、サカキ氏もセンゴク君も。




