あの時と同じ
◯センゴク
「サカキの兄貴と同じみたいですよ」
その言葉に俺は思わずソテツを睨みつけていたのだろう。
ソテツは固まっていた。
「あ、あの・・・センゴクの兄貴」
だが俺は睨みつけていたわけではない、むしろ俺の方が固まっていたのだ。
親父のことだから指を詰めるぐらいでケジメをつけさせねえとは思っていたが、まさかサカキと同じことをさせるなんて。
「なんで」
「へ?」
俺はタバコを灰皿に押し付けた。
「どこの組だ?」
「秋月組だそうです」
俺がいきなり立ち上がったものだから、ソテツは更に固まって俺を見上げた。
「ど、どうしたんですか、センゴクの兄貴」
俺はソテツの言葉に何も答えず足早に事務所の出口へと向かった。
足が自然に動いていた。
このまま外に出てどうしようというのだろうか。
俺は自分が一体何をしようとしているのか自分でもわからなかった。
だが、ここにいてはいけない。
それだけはわかったのだ。
あの時、サカキを追いかけた時のように。
出口のドアノブに触れようとした時、ソテツは俺に向かって叫んだ。
「あ、兄貴、変なこと考えるのはやめてください!俺は兄貴にはもっと上に上がってほしいんだ!こんなところでつまずかないでください!!」
事務所の中は騒然としていたが俺はその言葉に何も答えず、ドアノブを回した。
ツバキに電話を何度も掛けたが、ツバキが電話に出ることはなかった。
こうなった以上俺となんて話すことはもうないのだ。
そんなことわかっている。
俺はツバキに電話を掛けたところで、本気で止めはしないだろう。
サカキの時と同じように。
俺たちは結局、仲間だといってもお互い腹の底では敵だと思っているんだ。
この組で生きていく以上それはしょうがない。
しょうがないんだよ。
俺は立ち止まった。
事務所を飛び出してからあてもなく歩いていたが、もうそれも止めた。
しょうがない?
本当に?
本当にこれでいいのか?
“俺が犬死にしても無駄にはならねえんだなって思ってよ”
お前、本当はどう思ってるんだ?ツバキ。
“それが俺の役割だから”
サカキだって本当はどう思ってたんだ?
“僕にはサカキ氏から君への思いをこの作品から感じたんだから”
あっと小さな声を俺はあげていた。
それから再び歩き・・・いや走り出した。




