表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
37/47

第24話 ゾゾゾ……八鬼祭②

クラシックカーのエンジンが、低く唸るような音を立てて山道を登っていく。

黒塗りのボディに朝の木洩れ日がちらちらと反射し、どこか現実離れして見えた。


ふと、運転席のタイガと目が合う。


「あの、もしかして…」


「はい」


「……タイガも、許嫁とかいるの?」


「……はい」


少しの沈黙のあと、静かに返ってきた肯定の声。


「なんだよー。みんな、そうなんだな」


「なんだ? お前も許嫁ほしいのか? ガハハハ!」


じいちゃんが笑いながら、俺の膝をトンと軽く叩いてくる。


「いらないよっ!」


そう返しながらも、つい視線を窓の外に逸らした。


──彼女すらできたことねぇのに、許嫁なんて……ありえねぇだろ。


自嘲気味に、ひとつ息を吐く。


やがて車はカーブを抜け、視界がぱっと開けた。


石畳の広場に滑り込むように停車すると、目の前には朱塗りの鳥居。

色鮮やかに飾られた境内。その奥に、御社が静かに佇んでいた。


──いよいよ、八鬼祭が始まる。


「ショウーー!!」


正装に着替えたアキラとコハルが、駆け足でこちらへ向かってくる。


「おう」


軽く片手を上げて挨拶すると──


「なあ、お前もう東京に帰るんだろ?」


「まあな」


「ふん、せいせいするけどね!」


コハルがツンと腕を組んで、ぷいっと横を向く。


「こいつ、寂しさでいじけてんだよ。でも俺も同じ気持ち。」


ほんの数日だったのに、アキラやコハルとは自然と打ち解けていた。


ここじゃスマホも使えないから、連絡も取れなくなる。


──本当に、これでお別れなんだな。


胸が少し詰まる。


「なあ、ショウ! 文通しようぜ!」


「えっ? この村、郵便届くの?」


「当たり前でしょ!? バカにしてんの!?」


……まあ、確かに届かないほうがおかしいか。


住所を教え合うと、コハルはパッと笑顔になった。


「ショウ兄! 写真! 絶対現像して送ってね!」


──あっ、そうだ。データ、消えたんだった……


「なあ、もう一枚、三人で撮ろうぜ」


スマホを取り出し、インカメラを構えて──パシャリ。


アキラとコハルが、無邪気に喜びながら画面を覗き込む。


そのとき──


ゴーン……ゴーン……


境内に響いた鐘の音が、空気を震わせた。


場の喧騒が一瞬で静まり返る。


──ついに、儀式が始まる。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ