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まぼろし使いの少年は今日もまた誰かを騙す  作者: ネム
第一章 ひびの入った仮面
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第八話 ちょっとの嫉妬

「お、やっときたか」

「やっときたか、じゃないよー。先に行きすぎだってー」


 僕たちがようやく二人に追いついたのはメナベの入り口でだった。

 この街は、というか基本どの街もどの都市も外壁に守られている。

 外壁は魔物の襲撃を迎え撃つためだから基本素通りだけど、そうして限られた範囲の中で発展してきた街はとても複雑だ。

 さらに街だから当然多くの人がいる。


 だから先に中に入ってしまうと合流は格段と面倒くさくなる。

 それを避けるために二人はわざわざ入り口の門の側で待っていたんだろう……通る人に奇異の視線を向けられながら。

 門の前まで来ておきながらそこでずっと立ち止まっている探索者なんてなかなか怪しい。


「ここでこうして待つのは少し恥ずかしかったわ」


 パウロナさんは羞恥で頬をほんのり赤く染めていた。


「それならもう少し離れて待てばよかったのに。何で門の真横で待ったりなんかしたの?」

「それは、アレクがこんなの全然平気だっていうからよ」

「は? 先に言ったのはお前の方だろうがよ」


 何を言うと二人はとにらみ合う。

 そしてそのまま二人だけの世界に入ってワイワイヤーヤー言い始めてしまった。

 なるほど、つまりは先に行ってしまった時と同じように二人の意地の張り合いによって門の側で待つことになったのだろう。


 はぁ、と僕とミュリエルさんのため息がかぶった。

 それを聞いて袋からするりと出てきたソラが僕の腕にすっぽり収まり、じーっとこちらを見つめてくる。


「きゅ?」

「心配してくれてありがとうね、ソラ。でも大丈夫だよ」

「きゅ!」


 ならよしと頷いたソラは僕の腕を蹴ってミュリエルさんの方へ飛んだ。

 そして同じようにその腕に収まって再びじーっと見つめる。


「おっとー。どうしたのー、ソラクリア君」

「きゅ?」

「な、な……」

「えーっと、何を言おうとしてるのか、ロウル君にはわかるー?」

「うん、ソラは僕たちのこと心配してくれたんだよね?」

「きゅー!」

「そっかー、ありがとねソラクリア君。あたしも平気だよー」

「なんで……!?」


 ミュリエルさんの答えに満足したのかソラクリアはこちらに戻ってきた。

 そのまま袋の中に収まって顔を出し、むふーと満足げな鼻息を漏らした。

 一仕事おえて満足そうだ。

 その手には一つ前の街で掲げていた輝く石がある。

 どうやらお気に入りの宝物になったらしい。


「なるほどー、ロウル君がソラクリア君を溺愛してる理由が分かった気がするよー」

「うん、ソラはとても可愛いからね」


 ソラがいるだけで僕は満足なんだ。

 ソラがいればそれだけで僕は何でもできるような気になれる。


「なんで……!?」

「んー? どしたの、ロナ」


 “なぜか”パウロナさんがこちらを見てわなわなと震えている。

 いやまあ理由はわかってるんだけど、ここは“なぜか”ってことにしてこのままスルーしたい。


「なんで、ミューが触らせてもらってるのよ!?」

「何でって仲良くなったからだよー。ねー?」

「きゅー!」


 アレックスさんとパウロナさんが先に行った後僕たちはゆっくりと進んでいたんだけど、その間もずっとミュリエルさんは話し続けてくれていたんだ。

 その話をソラはとっても楽しんで、話が一段落したときにミュリエルさんに飛びついたんだよね。


 そうやってソラが誰かと仲良くなってくれたのはもちろんとっても嬉しいことなんだけど、やっぱり寂しい気持ちもある。

 でもやっぱり仲が良い人が増えればソラはもっと楽しい気持ちになるだろうし、僕に何かあったとしてもソラが頼る人ができる。

 間違いなく良いこと……のはずなんだけどな。


「お、どうしたロウル」

「ん? どうしたって何のこと?」

「いや……やっぱいいわ。気のせいかもしれんしな」

「何のことか分からないし、そうじゃないかな」


 うん、やっぱりソラがちゃんとした人と仲良くなるのはとっても嬉しい。

 さっきの嫌な気持ちはパウロナさんをソラに近づけていいか心配になったからなのかな。


「そういうわけで、パウロナさん。ソラに近づかないでね」

「ちょっと、どういうことよ! まだ何もしてないじゃない!」

「おいロナ、自分でまだって言ってんじゃねぇか」

「……さあ行くわよ! 手分けして必要なものを買いそろえましょう!」


 さっと顔を背けると、パウロナさんは一人先に歩いて行ってしまった。

 ミュリエルさんがゆっくりそれを追いかけていく。


「それならロナにはあたしがついて行くよー。だから次はアレクがロウル君と仲良くねー」

「おう。そっちは任せたぞ」


 二人は去っていき、アレックスさんと僕たちはその場に残された。

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