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まぼろし使いの少年は今日もまた誰かを騙す  作者: ネム
第二章 仮面の内側
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第三話 順調な攻略

 都市の南東に位置する洞窟型ダンジョン、そこについた僕らはダンジョンを目の前にして最終確認をしていた。


「忘れもんはないか?」

「ないよー」

「問題ないわ」

「僕とソラも問題なし」

「きゅー!」

「わ、私も、大丈夫、です」


 持ち物については問題なし。


「並びは一番前からロウル、俺、アイリス、ロナ、で最後がミューだ。なんか意見はあるか?」


 僕が一番前なのは罠を解除できるのが僕しかいないから。

 ちなみにソラも僕と一緒だ。

 いつものように背中の袋に入っている。


 アレックスさんが二番目なのは大剣を振るって戦うため敵に近い方が都合がよく、また後衛の盾になるため。


 三番目がアイリスなのは真ん中が一番フォローをされやすく安全だから。

 アイリスは僕たちの中で一番体が弱い。


 四番目がパウロナさんなのはアイリスの後ろでアイリスの魔術の様子を見ていてもらうため。

 大分安定するようになったとはいえ、何かあって暴走してしまったらすぐに伝えられるように。


 五番目がミュリエルさんなのは後ろを警戒してもらうため。

 いつも斥候として動いていて、敵に気づかれず敵に気づくのが得意だから。


 状況によっては立ち位置を入れ替えるだろうけど、通常時はこれでいいと僕も思う。


 問題ないと返事して、ミュリエルさんとパウロナさんもそれに続いた。

 それから少し遅れてよく分かっていない様子のアイリスとソラも賛成した。


「んじゃあ、いくか。なんかあったらその都度言ってくれ」


 そうして僕たちは洞窟型ダンジョンに入っていった。






「洞窟型って聞いていたから狭いものだと思っていたのだけれど、入ってからずっと広いままね」

「だね。入り口は狭かったから中も狭いものだと思ってたよ」


 そのダンジョンは入口こそ五人ぎりぎり横に並べるかぐらいの広さしかなかったものの、少し奥へ進むとすぐに大きな空洞となっていた。

 メインの道が何本か通っていて、そこから細い道がいくつも伸びている坑道のような作りになっているようだ。

 今いるところはそこからさらに奥に進んで広場のようになっている。


 ちなみにダンジョンの中は曇りの日の昼くらいの明るさがあった。

 ダンジョンによっては何も見えないほど真っ暗だったり逆に目が眩んでしまうほど明るかったりするので、ここが戦いやすい明るさでよかった。

 なぜ明るいのか理由は知らないけど、そういうのを調べるのは学者の仕事だ。


「でも、魔物暴走(スタンピード)が起こっているようには見えないよね」


 罠を解除しながら周りを見回し聞き耳も立ててみるけど、魔物の姿は見えないし静かなものだ。

 というかこのあたりの罠が発動してないのなら魔物はこの辺りを通っていない。

 ダンジョンだからといって魔物だけを識別するような機能が全部の罠についているわけじゃなく、実際今まで解除した罠にはついていなかった。


「入ってから倒したのはゴブリンだけだよね?」

「おう、ゴブリン数匹の群れが三回だ。普通のダンジョンならそういうこともあるで済ませられるんだがな」

「うーん、横穴も探ってるんだけどねー。今のところ通った痕跡も気配もなしだよー」


 もしかしたら魔物暴走(スタンピード)は誤報だったんじゃないかって僕たちは思い始めていた。

 大量発生の痕跡も外に出ていった痕跡も一切ないし、罠もほぼすべてが発動待機状態のままだ。

 そうあることではないけど、大きな魔物の集団を見て勘違いしたという事例もなくはない。


「よし、解除完了。でも一応気をつけておいて。落とし穴の罠だったから床が落ちる可能性があるし。それもここの床ほぼ全面」

「うぇ、マジかよ」


 残念ながらマジだ。

 僕ができるのは起動しないようにすることだけ。

 小さな罠なら解体したりするけどここまで大きな罠ならどうしようもない。


「パウロナさんが頑張れば埋められるかもしれないけど……」

「無理よ。これだけ広い場所を壊れないように埋めようとすれば数週間はかかるわ」

「ならしゃーねーか、ここで一旦休憩だ」

「まあ他よりはましだよねー」


 アレックスさんたちは荷物をその広い場所の手前の通路に下した。

 僕とアイリスもそれにならって荷物を下ろしていく。


 アレックスさんはその落とし穴のある広場で休息をとるつもりだったんだろう。

 見晴らしがいいから不意打ちに対応しやすいし、その広場には横穴がいくつもあるからどこから敵が来ても引くことができる。

 迎え撃つとしても広いから戦いやすい。

 もちろん横穴は僕が罠を解除している間にミュリエルさんが偵察してきてくれているから、全方向から一気に攻められるなんて可能性が薄いのは確認済みだ。


「んじゃ、最初は俺と……ロナでいいか。見張りをするぞ。んで次がロウルとミューとアイリスとソラだ。いいか?」

「そうね。魔物暴走(スタンピード)だと思っていたから私たちは楽をさせてもらっていたけれど、結局ほとんど戦ってないものね」


 なるほど、アレックスさんとパウロナさんは見張りの時間を増やすつもりらしい。

 それで気を張りっぱなしだった僕とミュリエルさん、慣れていないアイリスとソラを長く休ませるつもりのようだ。

 ミュリエルさんの方を向いたら目が合って、頷きが返ってきた。


 僕らの中で一番殲滅力があるのはパウロナさんだし、一番敵を正面から受け止められるのはアレックスさんだ。

 スタンピードが誤報じゃなかった場合、一番役に立つのはこの二人。

 だから二人にはまだ体力と魔力を温存してもらう必要がある。


「じゃあ先に休憩するよ」

「お願いねー」

「あ、えと、お願い、します」

「きゅ!」


 でもそれを今言ったところで二人が見張りを変わることはないだろう。

 だから早めに交代を申し出て、それで二人が渋っても無理矢理変わろうとそんな風に再びアイコンタクトを交わした。


 ……少しして、ミュリエルさんから今度は楽しそうな笑みを向けられて僕は頷いた。

 あの二人は純粋に気を利かせただけだからまだ気づいていないけど、彼らはこのあと二人きりになる。

 見張りは真面目にやるだろうし僕らもそう遠くにいるわけじゃないけど、二人なのは変わらない。

 休憩の後どうなっているのか、僕もちょっと楽しみだ。

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