表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
まぼろし使いの少年は今日もまた誰かを騙す  作者: ネム
第一章 ひびの入った仮面
4/51

第四話 簡単な自己紹介 

「で、仲良くなったところでだ」


 男は申し訳なさそうにしながら僕の手を離す。

 そんなすぐに警戒を解いてもいいのだろうか。


「どうしたの?」

「いやなぁ、お前とそこの子の名前を聞いてなかったと思ってな」

「そ、そういえばそうね。この子は、その、なんていう名前なのかしら」

「ロナ、落ち着いて落ち着いてー」


 ロナと呼ばれている女性はよろよろとソラへ向けてその手を伸ばしていた。

 どうやらそこまでソラに惹かれているようだ。

 そうして惹かれるのは理解できる。

 僕からしたらソラは1番大事な存在である。


「確かに自己紹介してなかったね。僕はロウル。それと、おいで」

「きゅー」


 だからといって触れてもいいなんて言わないけど。

 それを決めるのは僕じゃないし。

 少し呼びかければそれだけでソラは元気よく寄ってきてくれる。

 この子の全てが嬉しさにつながる。

 抱き上げればさらにはしゃいで、それだけでさらに嬉しくなる。


「この子はソラクリアだよ」

「俺はアレックス、見てわかる通り剣士だ」

「私はミュリエル、斥候だよー」

「私はパウロナ、魔術師ね。それで、その……」


 パウロナさんが何かを言いたそうにしていた。

 とはいえ何が言いたいのかは想像できる。


「ロナはねー、その子を撫でさせて欲しいんだって」

「ちょっとミュー!?」


 まあそういうことだ。

 けどそれは僕に聞くことではない。


「どうしたい、ソラ」

「きゅー? きゅ!」


 ソラはプイッと顔を背けて彼の腕の間に顔をうずめた。

 どうやら嫌なようだ。


「なら駄目。ソラを撫でていいのは僕だけってことで」


 腕の中に見えるその頭を優しく撫でてあげればきゅ〜っととろけたような声が聞こえて来る。


「そ、そんな」


 パウロナさんは膝をついた。

 けどソラが気をゆるしてるのは僕だけって考えるとどうしたって笑みはこぼれてしまう。

 それがパウロナさんに火をつけたらしい。


「わかった、わかったわよ。それならロウル、ソラクリア、絶対に私たちの仲間になりなさい。そして……」

「そしてどうする気だ、ロナ」

「もちろんソラクリアと仲良くなって撫でさせてもらうのよ!」


 大声で宣言するのはいいんだけど、うるさかったのかソラは腕の中に深く顔をうずめた。

 少なくともたった今さらにソラとパウロナさんは遠ざかったみたいだ。


「ははは、まあがんばってね。それでアレックスさん、この後どうするのかは決まってるの?」


 僕としてはソラが幸せになるならばパウロナさんと仲良くなったって構わない。

 僕だけに気を許しているというのは嬉しいけれどソラの幸せの前にはそんなこと些事だ。


「おう、とりあえずこっか帝国の東の端までまっすぐ行って、んでそっから北だ。最終的には帝国から出るのが目的だな。行きたい場所があるなら考えるがどうだ?」

「えっと……」


 今僕たちがいるセパリオン帝国はこの大陸の居住可能領域のうち南部の三分の一ほどの国土を有する大帝国で、今いる街はその帝国の南西に位置している。

 だから国から出るには北か北東に真っ直ぐ進むのが速いはずだ。

 なのに彼らはそれをしない。


「それってどこの国に行くつもりなの?」

「とりあえずはグロウス王国だな。それ以降はまたそん時に考える」


 グロウス王国は帝国の北東の端と接しており、国土は小さいものの色々と特殊なところがある、そんな国だ。

 けれどその国に向かうには帝国中央にある帝都を通って行った方が圧倒的に短い。

 何か帝都に近寄りたくない事情でもあるのか。


 そんなふうに色々考えているけれど、それを表には決して出さない。

 きっとアレックスさんからすると今の僕はただどうしようか悩んでいるだけの少年に見えるはずだ。


「それじゃあ帝都の貴族街って寄れるかな?」

「あー帝都の貴族街か。寄れなくはないが……」

「ああいいよいいよ、とりあえず言ってみただけでそこまで重要じゃないから」


 僕はあわてて首を横に振った。

 行くこと自体は構わないけど実はそこへの用事なんて全くないんだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ