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まぼろし使いの少年は今日もまた誰かを騙す  作者: ネム
第一章 ひびの入った仮面
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第三十八話 幸せを望む現在の話

 しばらくして森の奥から地響きが聞こえてきた。

 すぐにミュリエルさんとその後ろを追いかける巨体の姿が見えてくる。

 彼女は上手く落とし穴を飛び越えるようにしてこちらにオークを引っ張ってきた。


 何もないところを飛び越えるという若干おかしな動きをしたから頭が良ければ罠に気づかれると思うんだけど……ボスとはいえど所詮はオークみたいだ。

 ボスオークはそのまままっすぐやってきてすっぽりと落とし穴にはまった。


「それじゃあよろしくねー」

「おう、まかせろ!」

「brrr!」


 動けなくなったボスオークにアレックスさんが斬りかかる。

 けれどボスまで上り詰めただけあって普通のオークではない。

 特殊個体な能力を有していた。


 下半身が埋まった情けない姿のままの咆哮であったけど、それに呼応するようにして上半身の方にまで土が隆起する。

 避けれないなら壁を作って守ってしまえと言うことだろう。


 でも土魔術を使えるオークがいるのはミュリエルさんの偵察でわかっていた。

 明らかに魔術の痕跡が残っていたらしい。

 しかし倒した雑魚はどれも魔術を使えなかったのだから、使えるとしたらボスオークしかないだろう。

 予測していたからすぐに対応できる。


「【地の圧力(グラウンドプレス)】」


 盛り上がった土がすぐさま押しつぶされるよう盛り下がる。

 上から下からと押し潰されたことで勢いよく土煙が舞い上がってボスオークの目を襲う。


 目をつぶされたボスオークはがむしゃらに腕を振り回す。

 狙いも何もないけれどだからこそ予測もしにくく、威力も高いままだから迂闊には近づけない。

 チッと舌打ちしてアレックスさんは足を止めた。そして機を待つ。


「僕に任せて」


 ぬるっとオークの後ろの木の陰から気配もさせずに飛び出した。

 手に持つのは普通よりも圧倒的に丈夫な糸だ。

 とある魔物の糸を集めて太くしたちょっと特別なやつ。


 荷物から飛び出したソラが静かに横の大木を駆け上り大きく鳴き声を上げた。

 ボスオークの腕はそれに反応するように軌道をまげて、けれど()()()()()声よりも明らかに下の丈夫な木の幹へ腕を叩きつけた。

 大きく揺れてきしんだけれど木は折れずそこに残っている。


 僕は糸でその腕を木に括り付けていく。

 力があってもそれを使う技術はなかったようで、木に固定されて勢いの助力を得られない状態じゃ抜け出せないようだ。


「bmo!?」

「はいどうぞ」

「助かる、とどめは貰うぜ」


 腕が固定され外そうともがくボスオークから視線は外さずに、けれど距離はとってアレックスさんに場所を譲る。


 下半身が動かせず、目も使えず、片腕は拘束されている。

 そもそもB級探索者であればオークを一人で倒せるのだから、ここまで制限されていればボスであっても倒せない方がおかしい。


 腕が使えない側から近づいて、何もさせぬまま首を斬り飛ばす。

 オークの体が傾いて木に身を預けるようにしながら力を失い動かなくなった。


「よし終わり。みんな、おつかれー」

「ええ、お疲れさま」

「さすがに疲れたぜ」

「おつかれ」

「きゅー」


 それぞれが口々にそう言って、アレックスさんだけが地面に座り込む。

 大剣と鎧の重さがあるからか結構大きな音がした。


「あぁぁー、ほんっとに今回は疲れたわ。ちょっと休ませてくれ」

「あなたしかできないのだし、しょうがないじゃない」

「まぁみんな手数をかけなきゃ仕留められないもんねー」


 ボスオークにとどめを刺すときに最も手っ取り早かったのはアレックスさんであることは間違いない。

 けれどその前に普通のオークを一番狩っていたのもアレックスさんだ。

 なぜならただのオークであってもやっぱり脂肪は分厚いから。

 しかもボスオークのような魔物は腹が割かれたりした程度じゃ死ぬことはないから弱点を狙う必要があるのだけど、アレックスさんの使う大剣のような重量武器は細かい調節が大変だ。

 一人だけ疲労が段違いであってもしょうがない。


「その、ごめんなさい。私には何もできなくて」


 安全になったと分かってアイリスが物陰からやってきた。

 やはり申し訳なさそうにしてる。


「問題ないけど、でもそう思うなら練習頑張ろうか。僕も手伝うから」

「えっと、ありがとう、ございます」


 ようやく少し明るくなる。

 明るくなるけど、この後またアイリスを連れて行けないのが申し訳ないところだ。

 連れて行ったら多分怪我をする。


「ほら、そんなに悲しそうにしないの。あなたには私を超える才能が眠っているのよ。頑張ればいつか足手まといにならなくなる日が来るわ」

「やっぱり、足手まとい、なんですね……」

「そ、そうじゃないわ!」


 こんなことが昨日もあった。

 パウロナさんは落ち込むアイリスを慰めようとしてるのだけどいつも一言多い。


「もう、またやっちゃったのー? ちゃんと考えてから言いなよー」

「うう、分かってる、つもりなのよ……」


 皆が苦笑する。

 というかそろそろ後処理をしないと。


「それじゃあ後始末は僕がやるよ」

「あ、えっと、私も、手伝います!」

「おう、頼むわ。さすがに手伝えそうにねぇ」


 アイリスは近づいてきて、座り込んだまま動かないアレックスさんは手だけあげる。

 オークの処理ならアイリスにさせてもいいのかな。ていうかそれならその間に僕は別のことをした方がいいかも。


「あ、じゃあねー私がこのオークをどうにかするから、君は他の場所の罠の回収をお願いしてもいいー?」


 ミュリエルさんもそれに気付いてくれて代わりを申し出てくれる。


「うん、それじゃあオークは任せるね」


 なら僕は罠の回収だ。

 そういえば普通のオークの方はどうするのだろう。

 僕としてはこのまま置いて行って村の狩人にでも森の獣にでも持って行ってもらえばいいかなって思ってる。

 もちろん回収して売る選択肢もあるけど、解体が大変だしそもそもボスオークまで含めると全部買い取れるだけの資金があの村にあるとも思えなかった。

 なんせ主要な街道から外れているというのはお金を落としてくれる旅人があまり来ないということなのだから。


 せいぜいが高価でかさばらないところを回収するくらいかな。


「え、あの、私は……」

「アイリスは私が落とし穴を埋めるのを手伝ってくれないかしら」

「は、はい! わかり、ました!」


 どうすればとおどおどしていたアイリスはパウロナさんが引き取ってくれる。


 まあオークをどうするのかは後で聞けばいいか。そう思って僕はソラを連れて罠の回収に向かった。

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