表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
まぼろし使いの少年は今日もまた誰かを騙す  作者: ネム
第一章 ひびの入った仮面
3/51

第三話 お人よしな彼ら

 北側へと向かってからは非常に順調に行った。

 追手は足の引っ張り合いでこちらを見失ったのかいなくなっている。

 それに()()()()()()()()()()()()()()()()はずだ。

 暫くして到着した三人の宿もとりあえずは信頼できそうに見えた。

 少なくとも一朝一夕に売り渡されるなんてことはなさそう。


「いやー、助かった。道案内ありがとな」

「これくらいはなんてことないよ。そっちこそここの紹介ありがとう」


 先ほど壁を軽く調べた感じだとこの部屋は防音にも気を遣っているようだった。

 しかも部屋に金庫が備え付けられていて、貴重な物の保管もできるようになっている。

 これらの設備からしてなかなか高い宿なんだろうけど、この街を出るのでなければ宿を移すことを考えるくらいには良さそうな場所だった。


「どうー? なかなかいいとこでしょー、気に入ってるんだー。誰かさんのヘマのせいでこの街にはしばらくは来れないけどねー」


 ちらっと後ろを振り返る斥候の女性。

 視線の先には落ち込んでいる魔術師の女性がいる。


「……それは、悪かったわね」

「いやいや、冗談なんだからさー。本気にしなくてもいいよー」

「そうね、だから私も冗談よ」

「……からかったねー」


 じゃれ合う二人。

 その片方はふざけているように見えて後悔を心のうちに隠しているようだけど、僕にそれを解決する義理はない。

 今はそれより優先することがある。


「それで、さっきから何を言おうとしてるの?」

「ああ、それはだな……」


 少し前から剣士の男性が何かを言おうとして、けどやめていることには気づいていた。

 こうして催促しても少し言い淀んで、けどようやくゆっくりと口を開いた。


「その、しばらく俺らと一緒に動かないか?」

「……は?」


 思わず唖然とした。

 なんで追われている立場の人間が、会ったばかりの人間を仲間に引き込むんだろう。

 冗談だと思いたいけどそんな様子はない。


「ほら、一人だと何かあった時に大変だろうし、一人旅ってのはなにかと疑われやすいだろ? その分俺らと一緒にいればそんなこともないし、しかも俺らはB級探索者だから色々と融通も効く」

「うん、それはまあそうだろうけど。というかB級探索者なんだ」


 一人旅は危険だし疑いの目を向けられるしB級探索者という身分もかなりの力になる。

 確かに言っていることはその通りではあるけどと困惑していると、じゃれあっていた女性たちまで口を開いた。


「それに私たちも君も追われているからどうせ逃げることには変わりないでしょー? しかも私と君って戦い方が似てるっぽいから教えてあげられることもあるかもしれないしねー」

「さらに言えば、私のような魔術師が一人いるだけでも旅は随分と便利になるわよ。水も灯りも気にしなくて良くなるんだもの」


 うん、それはそうだろう。

 僕の使える風と闇の魔術も便利だけど、水や火の魔術はそれより段違いに旅で役立つ。

 けどそうじゃない。


「それでそっちにメリットはあるの?」

「「「え?」」」


 まるで意味の分からないことを言われたとでも言いそうな雰囲気だ。

 それだけでわかった。

 僕を加えるメリットなんて誰一人として考えていなかったのだろう。

 そしてもう一つわかった。


「……ほらあれだ、戦力になる。追われている俺たちの仲間になってくれるのなんてそうそういないからな。貴重な戦力だ」


 彼らはかなりのお人好しだってことが。

 増える戦力がそれよりも多く増える問題に釣り合うとは思えない。

 追われているのを見てたんだから問題も抱えてないはずがないし、戦力が加わるといっても僕は彼らの前で戦っていない。


 何としてでも僕を連れて行きたいという可能性もないわけではないけど、そんな気配は彼らにない。


「それにロナはそこの子に興味津々だしねー?」

「そ、そんなこと! ……ない、わ」


 二人は袋から飛び出して部屋を歩き回っているソラを見ていた。

 ちょっと前までは顔だけ出して見ているだけだったけど、今は外に出て部屋を確認している。

 あのキリッとした顔は率先して部屋の安全確認をしているつもりなんだろう。


 そんな姿もとても可愛い。ロナと呼ばれた女性が目を引かれてしまうのも当然だ。


「そんで、どうだ?」

「えっと……」


 どこかへ行きかけていた思考力を呼び戻して少し考えてみる。

 彼らが提示したメリットは僕にとって良いことばかりで、どれも代案を出せはするけど真っ向から否定する必要はない。


 ――それに僕は彼らと違ってお人好しじゃない。

 彼らが裏切るつもりならもちろん、そうでなくても何かあれば見捨てて逃げればいい。


「そうだね、こちらこそよろしく」


 にこやかな顔で僕は手を差し出した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ