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まぼろし使いの少年は今日もまた誰かを騙す  作者: ネム
第一章 ひびの入った仮面
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第一話 ほんの少しだけ未来の話

 森の中、一人の女性が軽い身のこなしで駆けていく。それを追いかけてドシンドシンと音が鳴る。だがしかし、一際大きな音を最後にその音が途切れた。落とし穴に落ちて半身が土に埋まったのだ。


「それじゃあよろしくねー」

「おう、まかせろ!」

「brrr!」


 罠におびき寄せられ移動できなくなった二足歩行の巨大な豚、オークに一人の剣士が斬りかかっていく。

 だがオークもただ斬られてはくれない。

 一つ咆哮をあげ、それに呼応するようにして土の壁ができ上がっていく。


「【地の圧力(グラウンドプレス)】」


 けれどその土の壁は一気に崩れ去って粉塵がオークに降りかかる。後ろにいる魔術師の的確なアシストだ。

 目をつぶされて見えなくなったオークは太くいかつい手をがむしゃらに振り回した。

 適当でありながらも破壊力がすさまじく、うかつに近づくことはできない。


 だから剣士も足を止める。

 無理をすれば斬れるがそうする理由はない。

 なぜなら彼らにはもう一人戦える仲間がいるのだから。


「僕に任せて」


 ひときわ若い少年がぬるっと気配もなく現れた。

 その背に背負う荷物からはぴょこりと水色の頭が飛び出している。

 可愛い二つの耳がついた水色の小さな狐である。

 さっきの言葉を少し訂正しよう。彼らにはもう一人と一匹戦える仲間がいる。


 彼は糸を手にしてオークに忍び寄る。目をつぶされているオークはそれに気づかない。


 きゅー! と子狐が荷物から飛び出して横の木に乗り大声で鳴いた。

 自然とオークはそちらへ腕を振るうが、そこにあったのは太い木だけだ。


 木に叩きつけられてしびれた腕に少年は木ごと糸を巻き付けていく。

 するとあっという間にその腕は動かせなくなってしまった。


「bmo!?」

「はいどうぞ」

「助かる、とどめは貰うぜ」


 下半身と目に加えて片腕まで使えなくなったら後は簡単だ。

 剣士が隙だらけの側から首を斬りとばす。

 ごろりと首は転がり落ち、オークの巨体は木にもたれかかるようにして動かなくなった。


「よし終わり。みんな、おつかれさまー」

「ええ、おつかれさま」

「さすがに疲れたぜ」

「おつかれ」

「きゅー」

 

 オークの脂肪の装甲は分厚い。

 ある程度の威力がなければなかなか傷を入れられないのだ。


「あぁぁー、ほんっとに今回は疲れたわ。ちょっと休ませてくれ」

「あなたしかできないのだししょうがないじゃない。でも本当にお疲れ様」

「まぁみんな手数をかけなきゃ仕留められないもんねー」


 剣士以外だと、魔術で広範囲を傷つけてしまうか細かい傷で仕留めるしかない。

 だから剣士が相手をするのが一番手っ取り早い。

 けれど剣士も正確な攻撃は得意とすることではなく、その結果こうして剣士が疲労しきっているのである。


「その、ごめんなさい。私には何もできなくて」

「問題ないけど、でもそう思うなら練習頑張ろうか。僕も手伝うから」

「えっと、ありがとう、ございます」


 実は彼らにはもう一人、今はまだ戦えない仲間がいる。

 少々訳ありの、少年と同じ年頃の少女である。

 手伝うと言われたその少女は嬉しそうに、しかし同時に悲しそうに笑った。

 手伝わせるのが申し訳ないと感じているのだろう。


「ほら、そんなに悲しそうにしないの。あなたには私を超える才能が眠っているのよ。頑張ればいつか足手まといにならなくなる日が来るわ」

「やっぱり、足手まとい、なんですね……」

「そ、そうじゃないわ!」


 さらに悲しみに沈む少女と慌てる女性を見て、皆に苦笑いが浮かぶ。


「もう、またやっちゃったのー? ちゃんと考えてから言いなよー」

「うう、分かってる、つもりなのよ……」


 再び皆が苦笑いする。と、少年がオークに向かって歩き出した。


「それじゃあ後始末は僕がやるよ」

「あ、えっと、私も、手伝います!」

「おう、頼むわ。さすがに手伝えそうにねぇ」

「あ、じゃあねー私がこのオークをどうにかするから、君は他の場所の罠の回収をお願いしてもいいー?」

「うん、わかったよ。それじゃあオークは任せるね」

「え、あの、私は……」

「それなら私が落とし穴を埋めるのを手伝ってくれないかしら」

「は、はい! わかり、ました!」



 彼らは軽く話し合って手早く片づけを始めた。

 少年は森の中をぴょんぴょんと飛び回り、森のあちこちに仕掛けられた罠を回収していく。


「なにしてるのだ?」

「これは仕掛けていた罠を回収してるんだよ。罠にもお金はかかってるから」


 森の中、少年の周りに人の姿はない。

 だというのに少年は当たり前のように誰かと話をしている。


「へー、なるほどなのだ」

「でも回収されていない罠が残っていることも普通にあるから注意は忘れないように」

「わかったのだ!」


 声が聞こえるのは彼の真後ろ、背中からである。

 彼の背負ってる荷物の中にいる水色の子狐が喋っているのだ。


「よし、罠の回収終わり。それじゃあどうする?」

「しゃべらないのだ!」

「その通り、よくできました」


 子狐はどうしてか他のメンバーには話せることを隠しているようだ。

 はてさてどんな理由なのか、重要なことかもしれないし、しょうもないことかもしれない。


 ともかく何か理由があって秘密を抱えていた。

 

 しかし秘密があるのは二人だけではない。

 三人組の方にも明かせぬ秘密があって、さらには少女も世間に明かせぬ秘密を抱えている。


 そんな彼らは、少し前からパーティを組んで行動していた。

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