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第四話


リッテンダムの港は三日月のような形をしており、この街の人々からは三日月湾と呼ばれ親しまれている。


 毎日50隻以上の船が出入りしており、市場まで行かず港のすぐそばで商売を始める人も良く見かける。

 この港を利用しているのは自国の民はもちろん他国の民も多い。


 特に南の国から来る商人が多く、シーヴと同じように褐色の肌を持つ人物も良く見かけるのだ。

 港全体を塀で囲っており、関所のようなものも設けられている。

 この関所を通るためには色々な手続きが必要で、その手続きが時には一週間かかることもある。


 そのため港の中には宿屋や酒場などが用意され、他国の人間はここで旅の疲れなどを癒すのだ。

 そんな酒場の一角にとある男達が集まっている。


 酒場自体は他のところにあるような立派な作りではなく、また港内であれば人通りが激しく何処に立ててもある程度は客を呼び寄せれると言うのにも拘らず、まるでその場所から隠れるように目立たない場所に作られている。


 そしてその酒場の中自体もやる気があるようにはとても見えない。

 ほこりのかぶった木のテーブルや、木が腐りかけている椅子。

 カウンター内にある酒の種類も品揃えがいいとは言えない。


 客を呼び寄せるどころか、むしろ遠ざけているようなイメージだ。

 一般の客がこの酒場に訪れれば、間違いなく回れ右をしたくなる雰囲気を持っている。


 そんな酒場に集まっている男達の人相も当然良くは無い。

 いや顔自体であれば、何処にでもいるような男達ではあるが、そこから滲み出される雰囲気は、一般の人とはかけ離れていると言っていいだろう。


「おい、明後日にエスタニアの連中が来るのは間違いねえんだろうな?」

 男に一人が別の人物に声をかける。


「ええ、間違いありませんよ。天気が変わらなければ二日後の昼くらいには到着なされると思います」

「へへへ、そうかそうか……そいつァ結構、んでその船に積まれているお宝は全部頂いていいんだな?」 欲望にぎらついた目をしながらもう一人の男が敬語を使っている人物に問いかける。

 敬語を使っている人物は軽く髪を掻き揚げながら、にこやかに答える。


「そうですね。それをもってあなた方への報酬とさせていただきます。もちろん私個人からもいくらかお渡ししておきますよ」

 敬語を使っている男が、懐から大きめの袋を取り出しテーブルの上に乗せた。


 別の男が、その袋の中身を早速確かめると、その男は驚きに目を見張った。

 袋の中には金貨がぎっしりと詰まっていたのだ。


「おい、兄さんよ……これだけの金貨を何処で手に入れたんだ? わりいが兄さんにこれだけの金貨を用意できるとは思えねえ……なんかうまい儲け話が他にもあんなら一枚かませろや」

「申し訳ありませんが、今はその事に関して言えることは無いです。さて、貴方方の返事はいかがですか?」


 男達はその金貨の出所が気になったものの、今はこの敬語を使っている物腰が柔らかな男の依頼を優先すべきと判断して、袋を受け取る。


「もし依頼が成功すれば、この金貨の出所も貴方方にお教えいたします」

 つまり、それが後金の一部と言うわけだ。

 これだけの金貨を見せ付けられ、またその出所も教えてくれると言う。

 男達にとっては、美味しい話であり、依頼を持ってきた男にとっては、裏切らないための保障と言うわけだ。


「わかった。いいだろう引き受けてやらァ、てめえらもそれでいいか?」

 一際風格のある男が周りの男達に最終確認を行う。

 もし、この場に別の人物がいれば、この男がリーダーだと推測できるであろう。


「では、依頼の最終確認を行います」

 そういって、物腰の柔らかそうな男が最後の確認をしようとしたとき、その酒場に新たな客がやってきた。


 当然男達は入り口に目を向けて警戒する。

 中には剣の柄に手をかけるものもいた。


「おいおい、物騒だなあ……そう殺気立つなよ。殺したくなっちまうじゃねえか」

 へらへらと笑いながら、その男は、物騒な相談をしている男達に近づいていく。


「彼は?」

 物腰の柔らかい男が問いかける。


「今回の助っ人ってやつだ。仮にも一国の船を相手取るんだ。護衛だってそれなりの数に登るだろ? まあ念には念を入れてってやつだよ。レンナルト、おせえじゃねえか。間に合わねえかとヒヤヒヤしたじゃねえか」


 レンナルトと呼ばれた男は茶髪と黒髪の入り混じった自分の髪を軽く掻き揚げて肩をすくめる。

「わりいわりい、ちょいと別件があったもんでな。そっちを先に片付けてきたもんだから時間食っちまったよ。間に合ったんならそう目くじら立てることもねえだろ?」


「は、相変わらずだなてめえは。まあいいちょうど今から依頼内容の説明に入るところだ。てめえも聞いていけ」


 そういって、彼らはなにやら話し始めた。

 

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