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第四話


  避暑地に戻るとすでに他に哨戒に出ていた人達も戻ってきており、ベルトルドは報告を受け取っていた。


 マルギットも兄に内容を報告する。


「……18体の魔霊だと? 他の哨戒に出ていた精霊騎士もいくつかの魔霊の気配を感じ取り、仕留めたそうだが、お前の所は少し異常だな……いや全体的に少しおかしい……まるで俺達を包囲している感じだ」

「しかし兄上、やつらにそのような知恵などあるのでしょうか?」

 マルギットが疑問を提示する。


「さてな……いまだに精霊たちのことすら良く分かっていないんだ。魔霊のこととなるとなおさらだろ?」

 先ほど弟に向けた言葉と同じように返され、思わず罰の悪そうな表情をするマルギット。


「ともかく、何かが変だ。俺はアスプルンド公爵に相談してくる。場合によっては早々に引き上げる可能性も出てくると思うから、その心構えだけはしておくように」

「分かりました。それでは私はアウグスト様の警護に戻ります」


 そういってマルギットは立ち去っていった。

「僕も自分の仕事に戻るよ。フレードリク行こう」



 エルネも立ち去ろうとしたが、そこでベルトルドはフレードリクを引き止めた。

「ああ、エルネは先に行っててくれ。フレードリクお前には少し聞きたいことがあるから時間をくれ」


 エルネは怪訝な表情をするも、了承し去っていく。


「二人の様子はどうだった?」

「やはりそれが狙いでしたか」

 ベルトルドが聞きたかったのは二人の仲の様子のことだった。

 そして、フレードリクもその事を薄々、勘付いてはいたのだ。


「いくらなんでも無茶ですよ。あの二人を一緒にするなんて……おかげで胃が痛くなりましたよ」

「そんなにひどかったのか? 多少の時間は置いてきたからある程度は打ち解けれると思ったんだがなあ……」

 肩を落としながらぼやくベルトルド。


「エルネスティ様がマルギット様に大してあのような態度を取るのはわかりますが、マルギット様は何が気に食わないんです? 昔から歩み寄りをなさろうとはしていませんでしたよね?」

「それがなあ……俺にもさっぱりなんだよ。父上や母上は多少の譲歩を見せようとはしているんだが、マルギットだけはなぜか8年前からああいう態度を一貫しているんだ。一度聞いてみたんだが、返って来た答えは、気に食わない! の一言だけ。とりつくしまもなかった」

「厄介ですね……」

「まったくだ……」





               ────────────



 あらかた割り当てられていた仕事を終わらせたエルネは、ようやく一息つこうと、休憩所に向かおうとしたが、ここでイェリンからの使者に呼び止められた。


 イェリンがまた呼んでいるということだ。

 断るわけには行かず、エルネは呼び出した相手の元へと向かう。



「イェリン王女殿下お呼びになられたとお聞きしましたが、どのようなご用件でしょうか?」

 膝を折る必要は無いといわれていたので、簡略式の敬礼をして、イェリンに向かうエルネ。


「わたくしは馬に乗りたいので、エルネスティ様に手ほどきを受けたいのです。そのためにお呼びしたのですわ。さ、乗馬の出来る場所へ向かいますよ」

 この避暑地は、かなり広く作られているため、乗馬の出来る柵で囲ったような場所もあり、初心者は大抵ここで乗馬を習う。


 慣れてくれば先ほどエルネ達が哨戒に当たったような散歩道をゆっくりと馬の歩を進め楽しむことも出来るが、さすがに初心者は何が起こるかわからないので、まずは柵に囲まれたところで馬に慣れなければならない。


 エルネとしては是非お断りしたいのだが、宮仕えの悲しさか断るわけにも行かず、乗馬できる場所まで一緒についていくこととなった。


 エルネ達が乗馬場に着くと、そこにはシーヴ、シェシュテイン、アウグスト、マルギットの四人がいて、そこにエルネ達も加わった。



「これはイェリン様 どうもお久しぶりですね」

 乗馬服に身を包み、男装の麗人を思わせるような雰囲気をもつアウグストがイェリンに挨拶をする。


「あら、アウグスト、貴方は公爵領で散々馬に乗っているのではなくて? このような場所に来てまで馬に乗ることは無いと思いますけど? ましてやここは初心者用の乗馬場ですよ? 貴方ほどでしたら散歩道で乗っていても問題は無いと思われるのですが?」

 このやり取りを見るだけでも、イェリンとアウグストの仲は悪くは無いようだ。


「いやーそれがですね、大公女殿下に一つ手ほどきをしようと思いまして、ここに来たわけですよ」

 そして彼女のそばにいた小麦色の肌をした少女にイェリンは目を向けた。

 まるで獲物を見つけた鷹のごとくニンマリと笑顔を見せるイェリン。


「あらあら、そうねえ、大公女殿下ともあろうお方が馬の一つや二つくらいは乗りこなせないといけませんわね。まあ、アウグストがわざわざ手ほどきをしてくれるのであれば、どのような不器用な方でもすぐに乗りこなせるでしょうね」

 そしてその言葉に応戦するのはやはりシーヴだ。


「貴様、私を不器用だというのか? ならばそこで見物しているが良い。どうせ貴様のことだ馬を見に来ただけであり、乗る気はないのであろう? 私の華麗な馬捌きを見せてやろう」


「ふふふ、いつもならそうかも知れませんが、今日はとても頼もしい御仁がいますからね。わたくしはエルネスティ様に手ほどきを受けるのですよ」

 そしてシーヴはイェリンの後ろに立っているエルネにようやく気付き、一気に感情が膨れ上がる。


「な……き、貴様! エルネは私に手ほどきをすると約束しておるのだぞ! か、勝手にエルネから乗馬を教えてもらうなど、私は認めん! エルネ、さあ私に乗馬を教えるのだ。そのような女に教える必要など無いぞ」

 後半はエルネに向かって言葉をかけるシーヴだが、やはりエルネが口を開く前にイェリンが先手を取る。



「エルネスティ様は、現在わたくしの御付きだと何度言えば分かるのですか? それにせっかくアウグストが貴方に教えようとしているのに失礼にあたるのではありませんこと? 大公女殿下は他人の好意を無にするお方なのですか?」


「シーヴ、今回は諦めなさい。時間はまだあります。エルネスティ様から乗馬の手ほどきならいくらでも受けれますから」

「し、しかしシェシュテインお姉様……馬に乗れないと私の計画が……そ、それにあやつがエルネとお近づきになってしまうではないか……」

 目に涙を一杯に浮かべながらシェシュテインに抗議するシーヴ。


「あー、あたしは別に気にしませんから、アステグ卿に教えてもらいたかったら、そうすればいいんじゃないでしょうか?」


「アウグスト。わたくしはこの方に乗馬の手ほどきを受けたいのです。、せっかく陛下から前例の無い称号を受けたものが、一時期とはいえ私の御付きになったのですよ? 女心を分かって下さい」

 顔を赤らめながら、ほうと最後はため息のようなものを出して言葉を口にするイェリン。

 これが演技なら大したものだ。


「な・る・ほ・ど。そーいうわけですか。これは無粋な真似をしました。大公女殿下、他人の色恋を邪魔してはいけません。さ、あたしが教えてあげますから行きましょう」

 そういってシーヴの手を引っ張って馬がおいてある場所に向かうアウグスト。


「ち、ちが、アウグスト殿! 違うのだ。エルネは私の親友で……」

 手を引っ張られながれ声が小さくなっていくシーヴ。


「さ、わたくし達も行きましょうエルネスティ様」

 エルネは内心、こりゃほんとに厄介だなと肩をすくめながらもイェリンについて行く。



 この場に残されたのはシェシュテインとマルギットの二人だけだ。


「我が妹ながらほんと何考えているのかしら……」

 シェシュテインが独り言のようにぼやく。


「我が弟ながら王族相手とはいえ、流されるままとは情けないです……」

 マルギットが同じようにぼやく。


「あら、見習いの身で王族に意見するのはかなり難しいんじゃないかしら?」

「まあ、確かに仰る通りなんですがね……」

「ふふ、多少の噂は耳に入ってきてます。やはり本当のようなのですね」

「お恥ずかしい話ですよ」

 そこでシェシュテインは話題を変える。


「エルネスティ様はどうも女性の目を引く方みたいですが、ベルトルド様はどうなのでしょうか?」

「兄上ですか? そうですね家にいた頃は恋文など受け取っていたみたいですが、今は特定の相手はいないみたいですよ」

「……そうですか」

 なにやら少し考え込むシェシュテイン。


「王女殿下?」

 そんなシェシュテインを怪訝に思い声をかけるマルギット。


「あ、いえ何でもありませんよ。さ、私達も行きましょう」

 そういって二人はシーヴたちの元へと向かう。


               ──────────── 



 ベルトルドとのやり取りが終わり、主の元へ向かうが主であるエルネの姿が見えなく仕方なしにベンチに座り、一息つくフレードリク。

 そこへシーヴの侍女であるクリスティーナがやってきた。


「あら、フレードリク様、休憩ですか?」

「ええ、どうも主の姿が見えなくて一息ついていました。警護を言い渡されているイェリン王女殿下の姿も見えないし困ったものですよ。そちらは?」

「シーヴ様が、エルネスティ様に手ほどきを受ける前に馬に慣れておきたいというので、乗馬場に向かいました」

「ああ、なるほどそうでしたか。そちらも一時の休憩というところですか?」

「ええ、そうなりますね」

 フレードリクはさりげなく席を空け、クリスティーナに座るようにと誘導した。



「よろしければ隣へどうぞ」

「ありがとうございます。お言葉に甘えますね」

 涼しげな夕方前の日の光が、二人を包む。


「しかし、イェリン王女殿下の嫌がらせとはいえシーヴ様は気が気でないでしょうね」

 フレードリクがぼそりとつぶやく。


「やはりそう思われますか?」

「ええ、見ていれば分かりますよ。ただ一体誰が焚きつけたのかは気になりますけど」

 さすがに第二王子であるエリオットが仕向けたこととは考えもしない。


「エルネスティ様の様子はいかがですか? まさかいくらなんでもお心を奪われているなんて事は……」

 少し心配なのかクリスティーナは後半つぶやくような感じだ。


「はは、それこそまさかですよ。エルネスティ様は鈍感なほうじゃありませんから、イェリン王女殿下の狙いがシーヴ様に対する牽制だって事くらい把握しています」 

「確かにうまいやりかかたではありますね。お互い未成年の色恋沙汰のトラブルでは大公家として意見を言うわけには行きませんし……せめて婚約者であればいくらでもやりようはあるのですが……エルネスティ様のお気持ちはどうなんでしょう?」

 そこでフレードリクは少し考え込む。


「ふむ……まあ俺の口から言うわけにはいきませんね。ただそれほど心配することは無いと思いますよ」

「そのお答えで充分です」

「クリス殿は誰か気になる御仁でもいるのですか?」

 さりげなく唐突に話題をかえるフレードリク。

 そして話題を変えられたことに気づかないクリスティーナ。


「そうですね……ずっとシーヴ様のお付きをやっていたものですから男性の方とはあまり縁が無くて」

「なれば、私がお相手しましょうか? いつぞやの催し物程度のパートナーであればいくらでもお付き合いしますよ」

 言葉の前半部分を聞いて、思わずドキリとしたが、後半を聞いてああそういうことかと少し残念に思いながらも納得するクリスティーナ。


「ええ、これから様々な催し物に出ることになりますから、パートナーくらいいないとシーヴ様にも恥をかかせてしまいますね。その時はよろしくお願いします」

「まあ、別に催し物に限ったことではありませんけどね」

 ニコリと隣に座っているクリスティーナに笑みを向け立ち上がり、言葉を続ける。


「さて、私はもう一度見回ってエルネスティ様を探してきます。それでは失礼を」

 そういって背を向けてそのままフレードリクは立ち去った。


 残されたクリスティーナは最後の言葉に思考を混乱させたままフレードリクの後姿を見送った。


               ──────────────



「き、貴様! エルネにくっつきすぎではないのか!」

 乗馬場にてシーヴの声が響き渡る。

 理由は簡単だ。


 広い乗馬場とはいえ、大きく円を描いて、柵で囲っただけの乗馬場でもあるので、当然イェリンとシーヴが鉢合わせするのだって珍しくは無い。


 そして状況は、イェリンのほうは、馬の前に乗り、エルネがそのイェリンを抱えるように後ろ側に乗っている。


 シーヴの側も似たような状況だ。

 シーヴが、前に乗り、アウグストがシーブを抱えるように後ろに乗っている。

 そして今はイェリンとシーヴがちょうど向かい合っている状態だ。


「何をそんなに怒っていらっしゃるのかしら? わたくし、慣れない馬の高さで、バランスが崩れそうなのです。ですのでこうやってエルネスティ様に抱えてもらわないと気が気でないのですよ」

 そういってエルネに体重を預けるかのようにしなだれかかるイェリン。


「あの、イェリン王女殿下、それでは馬の指導が出来ません。もう少し体を離していただけないと……」

 なんとか抵抗を試みるエルネだが、その程度でイェリンが素直に言うことを聞くはずが無い。


「あん、もうエルネスティ様ったら、もう変なところを触らないで下さる? ここには人目がございますのよ」

 変なところってどんなところだよ! 思い切り心の中で罵倒するエルネだが、それを真に受けるものもここにはいる。


「へ、へ、へんなと、と、と……こら! エルネ! そのような女の何処がいいんだ! わ、私だってな、成長の余地があるんだぞ!」

 もはや何の話をしているのやら、シーヴは顔を真っ赤にしながら抗議をする。


「貴方はいったい何のお話をしているのかしら? ああ、もしかしてお体のことを言っておられるのかしら? そうねえ確かにまだ成長の余地はあるかもしれませんが、エルネスティ様のお好みはわたくしのような大人の女性が好みなのですよ。お子様の貴方には少々厳しいかもしれませんわね」

 実際にはシーヴと大して歳も変わらず、またスタイルも大して変わらないのだが、イェリンは相当ご満悦の顔でシーヴをさらに挑発する。



「エ、エルネ! やはりそうなのか? お、お前は年上が好きなのか?」

 馬上でシーヴが前かがみになり、体を乗り出すような体勢でエルネに問いかける。

 さすがにエルネもいい加減黙っているわけには行かず、口を開く。


「あのですね、年上も何もイェリン王女殿下は私より年下ですよ? それに私には気になる人」

「さあ、エルネスティ様、ここは少し騒がしいのであちらのほうで指導をお願いしますわ」

 エルネの言葉をさえぎり、イェリンはエルネに指示を出す。

 逆らうわけには行かないので、シーヴに失礼しますと一言、言って馬を走らせるエルネ。


「待て! 何処へ行く! まだ質問の答えを貰っていないぞ! アウグスト殿、あの者たちを追うんだ!」

 シーヴもアウグストに指示を出す。


「あはははは、まあまあ、あのイェリン王女殿下にもようやく春が来たんだしさ。ここは一つ暖かく見守ってあげようじゃありませんか大公女殿下。無粋な真似は精霊に蹴られて飛ばされますよ」

 快活に笑い、なにやらとんでもない誤解をしながらアウグストはエルネ達とは別の場所に馬を走らせる。


「ちが、違うのだ! アウグスト殿は誤解しているのだ。エ、エルネは」

「分かっていますよ。大公女殿下の親友なのでしょう? まあ親友を取られて悔しい気持ちは分かりますけど、親友ならば余計その恋を応援してあげなくては行けませんよ」

「違うのだーーー!」

 再度、乗馬場にシーヴの叫び声が響き渡る。



                ─────────────



 ベルトルドはこの警備兵に当たっている総責任者であるアスプルンド公爵のいる場所へと訪れていた。

 理由は精霊たちの様子がおかしいので、引き上げる事を提案するためだ。


「アスプルンド公爵、ベルトルド・ヴィクセル様がお見えになられました」

 兵の一人がアスプルンドにそう告げ、アスプルンドはここへ通すように兵に指示を出した。


「ベルトルド殿、どうなされたのだ?」

 アスプルンドはこの高原における兵の配置図から目線をあげ、ベルトルドを視界に入れた。

 そしてベルトルドは簡易な敬礼の仕草を見せ、事の次第を報告する。


「は、現在、どうやら精霊達の様子がおかしいので、何人かの分隊に分け周辺を哨戒に当たらせたところ、魔霊たちが出没していました。多いもので18体の群れをなしていたようです」

 さすがにその報告を受けて、目を見張るアスプルンド。

 アスプルンドの知識では……いや精霊にある程度慣れたものの認識であれば、魔霊は多くて5~7体しか群れを作らないはずなのだ。


 にもかかわらず多くて18体の群れをつくり、その他にも魔霊が見受けられるとなると見逃して置ける状態ではない。


 またアスプルンド自身は術師でも精霊騎士でもないので、精霊の様子を知ることは出来ない。

 ゆえに、精霊の一族であり、しかも現役最強のベルトルドからそのような報告を受けてしまえば驚きもかなりあるのだ。


「……ベルトルド殿はどう考える? 私は残念ながら精霊と交信できる力は無いのでな……君の意見を尊重する」

「は、なぜ魔霊がそのような行動を取っているか図りかねます。ゆえに最善策としてはここを一度放棄して、改めて調査に乗り出すのが最もだと思われます」

 もちろんこの避暑地に貴族達が来る前に調査はしているのだが、その時には問題なしと報告が上がっていた。


 なので日取りを決め、この日にバカンスをするという計画だったのだが、どうも例年とは様子が違っていたのだ。



「ふむ……しかしな今回の、この避暑地でのバカンスを楽しみにしていた他の貴族達から色々と文句が来る恐れもある。また私の妹もかなり楽しみにしていたのでな……私としては貴君の意見を採用したいがのだが……はたして受け入れられてもらえるかどうか」

「しかし、被害が出てからでは遅いですよ? ましてや今回はシェシュテイン王女殿下、イェリン王女殿下、そして大公女殿下シーヴ様もいらっしゃいます。万一のことがあれば……」


「そうだな……貴君の言うことは正しい。しかし皆、今日の朝についたばかりで疲れている。それに日も暮れてきており、闇の精霊が支配する時間帯になりつつある。そのような状況の山での行軍は危険と私は判断する。ゆえに明日の朝まで待てはしないか?」


 

 ベルトルドとしても、ただ精霊達の様子がおかしいのと、魔霊が異常発生以外している以外の根拠があるわけではなく、またアスプルンド公爵の言っている事も理解できるので、それ以上言葉を紡ぐ事が出来なかった。

 確かに夜の山での行軍は危険を伴い、下手に魔霊などに襲われてしまうと混乱が増し、より被害が出る可能性だってある。

 万が一危険に襲われるのであれば、山道よりも、開けたこの高原地帯のほうが遥にマシなのだ。


 それにすでに魔霊はあらかた片付けたと報告は受けており、軽く見回ったときに調べたのだが、報告どおり魔霊の気配は感じなかったのだ。


「了解しました」

「では貴君は万が一の事態に備えて、警護をより強化するように皆に指示を出しておいてくれ」

「はっ」


 そういってベルトルドはその場を後にする。


「まったくせっかく少しは羽を伸ばせると思ったのだがな……厄介なものだよ」

 アスプルンドはその一言をつぶやいて、貴族達がいる屋敷へと向かった。



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