第6話「偵察開始」
~12:00~
「おおすみ」の甲板では、SH-60Jが離陸準備をしていた。
沖田歳三
「沖田歳三二尉以下3名!12:00。ライジング王国臨時首都ミネサダに向かいます!」
沖田歳三二尉が敬礼して菊松に言う。
菊松康平
「気をつけろよ。どういう世界かよくわからんからな」
沖田歳三
「アイツ(マフジー)が言うにはまだレシプロ機しか無いんですよね?しかも敵国の、なら多分いけます」
菊松康平
「しかしそのSH-60Jは約300まで出ない。」
沖田歳三
「大丈夫です。74式搭載機関銃を積んでますから。いざとなれば」
菊松康平
「先制攻撃はダメだぞ。我々は自衛隊だ」
沖田歳三
「了解!」
沖田二尉はヘリコプターに乗り込んだ。
「テイクオフ!」
SH-60Jはローター音を響かせて飛び立った。
マフジー
「今の音は?」
マフジーはヘリコプターが発艦した音を聞いていた。
熊谷雅之
「入るぞ」
そして熊谷がまた来た。
熊谷雅之
「マフジー少佐。来てもらう」
マフジー
「………………」
SH-60Jは順調に飛行した。
沖田二尉の他には佐山三曹と増田三曹がいる。
佐山秀光
「どんな世界何でしょうか?」
沖田歳三
「わからんが、奴の乗ってきたドラゴンとか見ると、ファンタジックに溢れた世界じゃないのか?」
増田幸太
「となるとドラクエやFFみたいな世界ですかね?」
沖田歳三
「やったこと無いから知らねえけどよ。そうなんじゃない?」
佐山秀光
「陸地が見えました」
沖田歳三
「『シーホーク』より『おおすみ』CICへ、目視で陸地を確認。ミネサダだと思われる。上空まで2分」
CICに送られてくるシーホークからのライブ映像は、CICを通して科員食堂と「ちよだ」にも送られた。
「なんだあの街」
「日本には無いぞ…」
「見ろ、船が帆船だ」
艦内に緊張が走る。
マフジーも熊谷に連れられ食堂に着ていた。
マフジー
「凄い、これ遠くからのものだろ」
熊谷雅之
「あぁそうだ」
マフジー
「こういうのが我が軍にもあったら、今みたいな状況にはならなかったのに」
佐山秀光
「レンガの街並み…、街行く人…、一台も無い車…、もはや前世紀の兵士…、ここは一体」
佐山三曹は下を見ながらそう呟く。
沖田二尉は頭が混乱した。
沖田歳三
(ここは何だ、どういう世界なんだ…)
「おおすみ」では
「嘘だろ、世界史でやった中世の街並みそのまんまじゃないか!」
「車が無い!みんな馬車だ!」
「ここはどこだ。ここはどこなんだ!?」
「頼む!夢であってくれ!俺たちは日本海にいたんたぞ!帰してくれよ!」
「これからどうするんだよ?この世界の燃料は何だ?軽油…いや石油はあるのか?」
「俺たちはどこにいけばいいんだ?俺たちを受け入れてくれる場所はここにはあるのか?」
船員たちは不安の声を隠さない。
熊谷も動揺を隠しきれなかった。
熊谷雅之
(中世ヨーロッパに飛ばされたのか、または異世界か、いずれにせよ俺たちは帰れるのか…)
菊松康平
「静まれ!騒いでも帰れないぞ!」
科員食堂に菊松が入ってきた。
菊松康平
「確かにみんなの気持ちは分かる。これを見たら我々は異世界に飛ばされたと見ていいだろう。ただ帰れないと決まったわけじゃない」
「帰れないって、じゃ帰れなかったらどうするんですか!?」
「違うんですよ!何もかも!」
「この世界が俺たちを受け止めてくれるか…」
彼らは菊松に不安の声をぶつける。
菊松康平
「いいか!弱音を吐くな!まだ帰れないと決まったわけじゃない!まずはこの世界の様子を探るんだ!」
菊松が科員にそう叫んだ時だった。
SH-60Kの無線から沖田の怒鳴り声が聞こえた。
沖田歳三
『緊急事態発生!迎撃機急速接近中!何者かの接敵を受けました!』