上司が甘い!?
上官が変わってからの魔法少女部も、変わらず忙しい。
…だが上官たちのせいで、甘い雰囲気にもなっていた。
「おい、ユーミリア。次の防衛戦、お前は俺の斜め後ろをキープしろ。一番安全で、一番投げ銭を稼げるアングルだ」
アーサーが作戦書を指差して、ユーミリアを覗き込む。
推しの!
顔が!
近い!
「アーサー司令官、顔近いです!あと、安全な位置はたしかに魅力的ですけど…私これでもエース級なんです!前に出ます!」
「駄目だ、エース級だからこそお前を傷つけるわけにいかない」
「そうですよ、ユーミリアさん。作戦には従うこと。あなたの安全が第一です」
「ほら、参謀もそう言ってる。俺たちはお前らを死なせねえ、そのための作戦だ。特にお前は傷つけさせねぇ」
「…っ」
推しの!
ファンサが!
すごい!
推しにそこまで言われたら仕方がない。
といっても、この上官たちは下心ではなく「エース級に死なれちゃ困る」という意味で言っているのだろうけれど。
「さあ、たくさん世界中のファンから投げ銭巻き上げつつ、安全に外敵を排除すんぞ。稼ぎは、お前ら魔法少女たちにボーナスとしてくれてやるからな」
「僕たちの指示に従っていれば、何も怖くないですよ。終わったら美味しいものでも食べに行きましょうか。ユーミリアさんになら奢りますよ」
アルフレッドが、ユーミリアさんにならの部分だけ耳元で囁く。
命懸けの戦場に常に身を置く魔法少女は、しかし新しい上官たちからの溺愛にきゅんきゅんするのだった。
「…はい!きっちり安全に、国益とお給料のため外敵を排除致します!」
そう誓いながら、魔法少女として頑張るぞと杖を握る。
ユーミリアはまだ、上官たちのユーミリアを見る目が他の魔法少女たちへの目線より少し柔らかいことには気付かない。
「外界の敵出現!魔法少女ユーミリア、出撃せよ!」
防衛省・国営生放送の緊急配信。
ユーミリアは戦場へ飛び出した。
上空のドローンに搭載されたカメラたちが、可愛らしい衣装を着飾る(公費での支給品)ユーミリアの姿を世界中に届ける。
今日も同接はあっという間に7桁に到達した。
『ユーミリアちゃん今日も可愛い!』
『頑張れー!』
『軍資金です、美味しいもの食べてねー!』
今日も投げ銭が飛ぶ。
それを確認しつつ、ラピスラズリ兄弟は的確に指示を出す。
「ユーミリア、そのまま直進。雑魚が右斜めから湧く。大規模魔法で蹴散らせ」
「可愛いアングル、維持できてますよ。必殺技もバッチリ決まる位置取りです」
カメラ映りまで気にしてくれてありがとう、推したち!
「いけー!魔法少女ビーム!!!」
ユーミリアは髪を揺らして、なんとも言えない技名を叫びドカンと派手に敵を吹き飛ばす。
完璧な一撃に生放送のコメント欄が大盛り上がりとなる。
『うおおおおお!ナイス大規模魔法!』
『一撃で雑魚一掃!』
『今日も日本は平和です!』
「よし、一発で仕留めたな。よくやった、ユーミリア…と、ここでボスのお出ましか?」
「気をつけて、兄さん。…ユーミリアさん、避けて!!!」
「えっ…」
ユーミリアの背後の空間が裂ける。
巨大な外界の敵のボスが現れた。
禍々しい触手がユーミリア目掛けて振り下ろされた。
ドローンのカメラがブレ、コメント欄で悲鳴が上がる。
『ユーミリアちゃん!?』
『どうなった!?』
「…は?誰の部下に手ぇ出そうとした?タコ野郎」
凄まじい衝撃波。
外界の敵のボスの触手を、魔法で強化した素手で受け止めたアーサー。
そしてそのまま触手を引きちぎる。
『え!?』
『さすが司令官!脳筋!』
「兄さんばかりに良いところを取られるのはちょっと…というわけで僕は本体を縫い止めましょうか」
参謀のはずのアルフレッドまで、現場に出て無数の刃を魔法で召喚して外界の敵のボスに降らせる。
「司令官、参謀、ありがとうございます!」
「おう、俺たちはお前ら魔法少女を死なせないためにいるからな」
「無事で何よりだよ」
アーサーはアルフレッドの「縫い止める」どころか「オーバーキル」した巨大なボスの「死骸」に登って言った。
「おい、視聴者ども!これでわかっただろ。このちんちくりんは俺たちの部下だ!俺たちが死なせねえ!」
「でも、ユーミリアさんは怖がってます。可哀想に…だから、安心させるためにも投げ銭してあげてくださいね」
いつのまにか兄の横にいたアルフレッドも続く。
そうすると投げ銭が舞った。
『よかったぁ!!!』
『過保護な司令官と参謀てえてえ!!!』
『ユーミリアちゃんをこれからもよろしく!』
『この投げ銭で美味しいもの食べて!』
二人の煽りで投げ銭が今日も美味しい。
そして二人に守られるというシチュエーションが完璧すぎる。
今日もユーミリアの魔法少女ライフは美味しい日々となるのだった。




