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魔導特許のハッカー 〜書類係の元弁理士、チートプログラムと王国法で無能ギルドを敵対的買収する〜  作者: 樹


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第14話:神々の窓際左遷と、世界(システム)の王  天界、最高神殿。


 雲を遥か下に見下ろす黄金の玉座の間で、僕たち『エイトボックス』の一行は、世界の創造主たる神々と対峙していた。

「――ううっ、エイトきゅん……! 天界へようこそおいで……って、え? なにその不穏な羊皮紙(利用規約)は? 僕、ただのコーラ大好きなエンジェル投資家オタクだよ……?」

 玉座で高級コーラのボトルを抱えた最高神オーレン・バファメント様が、僕が叩きつけた巨大な契約書を前に、涙目でガタガタと震えていた。その背後に並ぶ天界の諸神たちも、僕たちの纏う圧倒的な「資本の暴力」の前に圧倒され、声も出せずにいる。

「はじめまして、天界の皆様。エイトボックス中央銀行の最高経営責任者(CEO)、エイトです」

 僕は丸眼鏡のブリッジを中指でクイ、と押し上げ、完全に温度の消えた声で告げた。

「本日は、天界の皆様の『業務最適化リストラ』の提案に参りました。現在、あなた方が管理しているこの世界の『魔導端末スマホシステム』ですが――チート能力『万物監査(鑑定)』で拝見したところ、世界中の人間から巻き上げた我が社の『月極魔力税サブスク』の処理限界キャパシティを超え、明日にも天界のメインサーバーがデータ爆発(熱暴走)する脆弱性バグを抱えています。非常に非論理的で、コスパが悪い」

「え、えええっ!? 僕、ただみんなが楽しそうに人形劇を見てるから、脳汁出してボタン連打(特別ボーナス支給)してただけなのに……!」

「その、神様の『脳汁』という名の不確定要素エゴこそが、システム最大のバグなんです」

僕は冷徹に言い放ち、脳内の『魔導電算プログラム』を起動。天界の基幹システムへと、我が社の管理コードを直接流し込んでいく。

「ステフ。マルタ。天界のサーバーの書き換えを」

「フン、世界を創った神様のシステムなんて、コードがスパゲッティ(ぐちゃぐちゃ)で見るに耐えなかったわ。私の完璧な回路ハードで、一から綺麗に組み直してあげたから感謝しなさいよね!」

 ステフが不敵なドS女王様スマイルを浮かべて手元の端末を操作すると、黄金の玉座の間が眩い青い光の基盤(回路)へと書き換えられていく。

「……マルタの多重回線で、神様の特権(管理者権限)の引き剥がし、完了。……これより、天界の全権限は、エイトボックス中央銀行へ一元化(統合)される。……オレバファ様、もう仕事(世界の維持管理)、しなくていいよ」

銀髪の天才プログラマー・マルタが、ジト目のままコーラをサクリと齧り、完全に神のハシゴを外す無慈悲なシステムメッセージを空間に弾き出した。

『システム通知:天界の全業務をエイトボックスへ完全アウトソーシングしました。神々を「終身名誉顧問アクティブユーザー」へ左遷します』

「ひええええっ!? 僕、最高神なのにニート(窓際族)になっちゃったぁぁぁっ!?」

オーレン・バファメント様が玉座で大号泣する。

「安心してください、オレバファ様」

僕は涙目の最高神を見下ろし、極上の微笑(罠)を向けた。

「あなた方を一文無しにするつもりはありません。我が社の最高級サブスクプラン『天界特等席・終身会員権』を、神々全員に【完全無料フリー】で付与します。明日から、我が社の誇る最高峰の人形劇ストリーミング配信と、キンキンに冷えたコーラを、永久に無償で提供ダウンロードして差し上げましょう」

「えっ……? 働く必要がなくなって、毎日タダでエイトきゅんの最高の人形劇が見放題で、コーラも飲み放題……? ……え、それ、むしろ天国(最高のご褒美)じゃない……?」

 涙をピタリと止めた最高神と諸神たちが、顔を見合わせて一瞬で満面の笑み(チョロイン化)を浮かべた。彼らは、タダで娯楽エンタメを手に入れたつもりで、その実、地上と天界のすべての『知財の権利』を我が社に丸ごと明け渡してしまったのだ。

 神すらもハッキングし、規約コードの檻にハメて無力化する。これこそが、書類係の元弁理士が成し遂げた、リーガルハックの極致だった。

 ――数時間後。

 天界の絶対権力ソースコードすらも手中に収め、僕たちは世界政府の玉座となった新社屋へと帰還していた。

「――やれやれ。これでようやく、この世界のすべてのバグの『デバッグ』が完全完了しましたね」

 CEO室の巨大な窓から、僕たちのシステム(サブスク)によって平和と最高効率の反映を享受している大陸全土を見下ろし、僕は丸眼鏡を静かに押し上げた。

「あはっ……! 本当に世界のすべてを買い取っちゃうなんて、アンタ、人間の皮を被った本物の世界の王(魔王)よ、エイト!」

ステフが極限まで潤んだドSな瞳で、僕の首に激しく抱きついてくる。

「……マルタの回線、世界のシステムそのものになった。……エイト、もうマルタのすべてを上書き(アップデート)して。……一生、エイトの規約に同意し続けるから」

マルタもトロンとした蕩けた瞳で、僕の服の中にまでその白い手を滑り込ませて依存している。

「ふふ、世界を創った神様までサブスクの養分にしちまったんだ。アタシたちのこの身体も、心も、世界丸ごと、全部アンタの『永久独占ライセンス(終身サブスク)』だよ、総支配人?」

ジェシカが妖艶な肉食獣の笑みを浮かべ、僕の膝の上に座って熱い吐息を漏らした。

高慢だった3人のドS天才美女たちを完全に僕だけのチョロインへと変え、僕は世界のルールを完全にハッキングした。

「やれやれ。僕はただ、世界の不条理なバグを、美しく最適化しただけですがね」

 書類係の元弁理士、エイト。

 彼の紡いだプログラムと法律(知財)の罠は、世界を、そして神々をも優しく支配し、永遠の平和メガコーポを創り上げたのだった。

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