アルク18
起きた。あまり寝れた気はしないが、気分は晴れていた。
希望を見いだせたはいいのだが、現実としては一歩も前に進んでいない。
視ただけであって、手がかりが見つかったわけではない。
そもそも、この能力が今回こそ外れるかもしれない。
でも、気力は充実していた。
気づいたことが一つある。
今まで一切視えなかった彼女の姿がぼんやりとだが視えたことだ。
まずは、少しだけ頑張ってみようと思う。
よって、自分に対して、能力を使った。
戻ってきた。
吐いた。
洗面所で良かった。
しかし、解った。ぼんやりとだが、それでも視えた。
あれはアルクだ。間違いない。
自室にこもった。学校があるようだが、何が重要かなんて、解りきったことだ。
初めてではないが、自分の持っている力に最上級の感謝を抱き。
僕は僕のできることを始めた。
先ほどと内容が違った。
予想通りだ。
一日以上はやったことがなかったからな。
つまり、続ければいい。
洗面所に駆け込む。
吐いた。
多分、今までで一番最低で最悪なものを視た。
あれは醜い。
以外と平静とした気持ちで受け止めた。
自分の手を床に叩きつけようとして、止めた。
無駄な時間を過ごすぐらいなら、他にやることがある。
アルクが一瞬、はっきりと視えた。
彼女が僕の能力で視えなかったのは何故だろう。
今見えるようになっているのはなんでだろう。
疑問は湧くが、そんなことを考えている時間ももったいない。
ダメだ。僕が殺された。
目的も達成できない。難しい。
まだだ。
まだ、終わらない。
そろそろ頭が痛くなってきた。データの量が多すぎてパンクしかけているのだろう。
多少の痛みだ。気にしない。
くっ。あと、一歩、でもないか。
現実の時間がまずいか。
僕の考えと視てきたものが正しいとするならば、タイムリミットがある。
根本から見直した方がいいか?
でも、時間があまり残っていない。
万全で行って1分ぐらいだというのに。
ダメだ。詰む。
僕がこうなっては意味がない。
打開策は……
何回行っただろう。分からない。
ぼーっとしてきた。
でも、まだ。
ん? あれは?
「君は人間を辞める気かい? 今君がしていることは、無茶だ」
知らない。無茶? 最初から分かっていたことだ。
「いいかい、君がそうなってはオシマイなんだよ。君が彼女と会ったことが意味のないことになってしまう。こんなことに使うべきではない」
こんなこと? まあ、関係ない人間から見たらそうなんだろうよ。
でも、僕にできることはこれしかない。
これ以外のことを僕は知らない。
「素直に周りの人間に任せるんだ。そうすれば解決」
しないだろう。もう、解っている。
僕がやらないとそれこそ意味がないんだ。
「…………」
邪魔だ。退いてくれないか。
「分かった。もう止めない。君はもう止めれない。誰にも」
ああ。もう、僕には進むしか道がないから。
「それじゃあ、一つだけ。最後の時が終わった後、私の所にきなさい。あの子に教えるように言っておくから」
もっとも、君は自ら僕のところに来る気がするけど。
そう言って、不思議な声は消えた。
目が醒めた。
自分の未来を視る。
この瞬間、僕は本当の意味で未来を視るという意味を知った。
確かに、あの人の忠告通りになった。
僕は、人間であることを辞めなければならないようだ。
大したことじゃない。
こうならなければ、彼女を救えない。
ただ、それだけだ。
たった、それだけのことだ。