魔王とその弟とメイドと勇者+宰相
随分久し振りな感じです
前触れもなく扉が開いた。
「アストっ!!………やべっ、休憩時間だったか??」
宰相のキーエンスが慌てて入ってきた、のだが。
キーエンスが室内を見渡すと、なんかタイミングが悪いときに来てしまった雰囲気だ。
シュウはぽかんとしていて半ばアストの方へと身を寄せている。
アストはアストでほっとしたような残念のような、微妙な顔だ。
それに対し、シーテレリアとリリアはもの凄く惜しい顔、と言うか何というか。
キーエンスは、シュウとアストの体制を見て、自分の空気の読めなささに、あちゃーとなりかけるがそれどころではない。
「……………何があった。」
沈黙を破ったのはアストだった。
普段冷静沈着のキーエンスが慌てた事だ。
何か一大事があったのだろう。
「それが今城門の前に勇者たちが――――」
「――それは、兄上に、害を、成そうと??」
一言ずつくぎられたそれらは明確に殺意を抱く。
「シーリア、抑えろ。」
シーテレリアは魔法騎士団団長でもある。
魔法がつかえない人が多い中、この大陸の特にマリッティア王国では魔法に恵まれる。
シーテレリアの殺意に、大気の中にたゆたう精霊達が共鳴し始める。
「俺一人で十分だ。」
キーエンスは慌てた。
シーテレリアを中心に風が吹き荒れ始める。
精霊達はシーテレリアのだだ漏れ殺気と、怒りに同調する。
このままでは、最悪制御出来ずに暴走する。
そう、――このままでは、また城の修理代が………。
キーエンスの頭の中では"赤字"のランプが点滅している。
アストは隣に座るシュウの腰を左手で引き寄せ、シーテレリアと距離をとろうとした。
最初にこの部屋が吹っ飛ぶだろう。
アストは速やかにシールドを張った。
すでにこの部屋は惨状と化しつつあるのだ。
キーエンスとアスト、リリアの中で最悪のシナリオ(修理代)が描かれつつ、経費が脳裏に駆け巡る。
「シーちゃんの、ばかあぁぁぁぁーー!!!!」
シュウの叫びによって精霊達は霧散し、シーテレリアも正気にかえる……と言うより、至近距離で上げられた叫びに、ぽかんとしていた。
「シーちゃんの、ばか!!ケーキ。けーきがっ!!」
うるうるしだしたシュウは机に指をむけていた。
カオスが広がってます!!