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熊帝国の崩壊

とりあえずは最後(かな?)までは書けました。だけどGの駆除は慎重にしましょう。奴らはしぶといものですよ。振りじゃないよ。

 「お主たち、妾の背に乗りゃれ。」

歌音さんとの話を終えて神社の鳥居前まで行こうとした矢先、玉ちゃんこと大妖怪玉藻様が大きな姿で頭上から話しかけてきた。

「どうせ、あの異世界魔王の所に行くんじゃろ?特別サービスで連れてってやるぞえ。」

「そんなのいいわよ。それより私の舟を返して。あれに乗っていく方が安全かつ安心だわ。返すのが惜しいなんて思ってるんじゃないわよね?」

ソラちゃん、その威勢はどこから来るんだろう。ここしばらくの退屈そうな、疲れたような表情は見えない。でもさ、学校はどうするのさ。そりゃあソラちゃんには必要ないだろし、さっきの話から察するにソラちゃん、怒ってるんでしょう。でも、こういう時こそ冷静にね、深呼吸して、歌音さんが色々用意してくれるの待とう。でも玉藻様は続けざまにこうのたまった。

「ふむ、確かにあれは惜しいが仕方あるまい、返してやろうぞ。だが二人とも、この時期空はまだ寒いぞえ。ハチ公よ、それに大陸は冷えるぞ。ソリスの、いやこの際だ、プリンセスソーラーとてその科学力に比して体力面では大陸の雪の平原を行くには身が心配じゃ。お主はその毛皮で大丈夫だろうがの。だがの、そやつを背に乗せて全力疾走などしてみよ、プリンセスクーラーの出来上がりじゃ。悪いことは言わん。妾の背に乗る事じゃ。背中の毛皮にくるまっておれば結構平気じゃぞ。」

 その提案に姫と二人顔を見合わせていると、のんびりと表れた歌音さんが、

「あら、丁度いいじゃない。食糧と水くらいならすぐにでも用意できるわ。お泊りセットは・・・いいわよね、玉藻様ならそんなにかからないし。でも、いいのですか?しばらく・・・千年単位で帰ってないのでしょ?迷ったりしない?」

「たわけが。いつも内蔵のGPSをつかっておるわ。ラジオとか、最近はテレビやスマホなんかで情報の取得も容易だしの。向こうの黄熊の親分にも話はついておるわい。妾はレジェンドなるぞ。心配無用じゃ。」

得意そうに顎を上げる玉藻様。そうこうしているうちに、巫女さんが荷物を詰めたリュックを持ってきてくれた・・・って、お婆ちゃん?

「気を付けて行っておいで。ああ、こんなに早くひ孫の顔が見れるなんて。およよ。」

何か変な事を言って変な仕草をするお婆ちゃん。あの、やっぱり帰っていい?もう夕方だし。

「これハチ公よ、妾の背中で不埒な行為に及ぶのは・・・バッチコイじゃ。でも後始末はつけるのじゃぞ。」

ああ、ダメだこのエロ妖怪。考えてみたらこの方、昔々この国のやんごとなき方を誑し込もうとしてたんだった。それどころか大陸でも、あれ、四不象とか太公望と戦ってたんだっけか?

「はっちゃん、エッチな事はだめよ。」

ソラちゃんにくぎを刺されてしまった。良かった、味方はここにいた・・・

「私、初めてだし、優しくしてくれないと・・・」

だめだ、天は我を見放した。

「ほらほら冗談はここまで。英斗君は盛りがつく時期じゃないわ。お夕飯はおベントも入ってるからそれでね。いいわね、伊予さん。」

「ええ、わかっておりますよ。英斗や。そしてソラ姫、後悔のないように殺ってらっしゃい。」

「はい、おばあ様。頑張ってきますわ。さあ、はっちゃんも、行きましょう。」

ソラちゃんはいい顔でおばあちゃんに丁寧にお辞儀をしてるけど、お婆ちゃん、やるの字が違ってるよね?長い付き合いだから判るヨ。ソラちゃんも判って言ってるんだろうな。

「ふあぁぁぁぁぁ。お笑いの時間は終わったかえ、では行こうぞ。」

そんな玉藻様の声と共に、僕とソラちゃんの身体が宙に浮き、大きな毛皮に背中に着地した。むむむ、僕の毛皮よりふわふわだ。くそう、負けた。

「ほっほっっほっ。ハチ公よ、悔しいか、悔しいだろうともよ。これが主と高貴な狐の毛皮の違いよ。諦めるのじゃな。それでは行ってくるぞえ。勝利の宴の準備を忘れる出ないぞ、歌音。でわの。」

玉藻様の高らかな笑いと共に僕らは大陸に向けて、熊帝国へ向けて飛び立った。あれ、今何か神社に入ってくる人たちがいたような。あ、おベント、忘れた!!

「大丈夫よ。ちゃんと確保しておいたから。」

ソラちゃんが得意そうに、でも真剣な瞳で遥か西の方を睨んでいる。僕もほっと安心して、同様に西の空を眺めやるのだった。


 その頃、熊王国秘密の山脈の穴倉(と言っても宮殿級)の中。

「プチン様、監視衛星の画像がうまく繋がりません。直撃した模様ですが、ノイズが酷く状況は不明です。」

異世界大統領は鷹揚に部下に熊将軍に手を振って見せ、冷静さをアピール。した。我が祖国、熊帝国の技術力は異星の技術を支配し、あの舞沢勢力をすらたった今駆逐して見せたのだ。これでアポロ以来の勢力争いに終止符が打たれたのだよ。あの下品な三下に花輪でも送っておくか。それでどうだ、我が太陽砲の機嫌は?」勝利を確信した漢の言葉に少しばかりの哀愁が混ざっている。ああ、ソリス姫。やはりあの時抜いておくんだったか。姫よ、さらば。

そう言いながら飲んでいたウオッカを献杯していたところに通信兵から慌てたような報告が入った。

「至急、我らが同志大統領猊下、緊急事態です。」

「有無、何事だね。私は今、非常に気分がいい。長年のしこりが消え去ったのだからね。非常に残念な事もありはしたがまあそれはそれだ。何でも言ってごらん。」

「それが、同志大統領、たいへん申し上げにくいのですが。」

「何だね、はっきり言い給え。」

ぶちんは怒っていた。気の利かない男だ。この良き日に何を言おうというのか。

通信兵の報告は、彼の頭を文字通り、真っ白にした。

「同志大統領、衛星が、ソーラーレイの反応が、消えました。詳細は不明です。」


僕たち(僕とソラちゃんと、運んでくれている玉ちゃん)の旅は、まあまあ快適に進んでいた。さすがは千年モノの大妖怪。背中の乗り心地はばっちりだ。ソラちゃんもうっとりしながら背中に頬寄せている。べ、別に悔しくなんて、無いんだからな。

「どうじや、妾の背中の乗り心地は?これで大抵の男は堕ちたものよ。男というものはな、おなごの乗り心地に逆らえぬものなのさ。」

得意そうに(可能なら胸をそらしていただろう。可能なら。)僕らに語りかける玉藻様。もちろん念話だ。これほどの高速度で海の上を飛行しているのだから当然だけれど、僕も、結構酔いやすいソラちゃんも、ついつい眠っちゃうほどに揺れすら無い。見事に気流すら操っている。これも技なのじゃよ、と彼女は言った。

「昔はあやつもこうして乗せてやったものじゃがの。」

何やら懐かしげに、遠い昔を思いやるように、語る玉藻様。その思念に幾ばくかの後悔と憐憫が混じっている気がするのは何故だろう。


 そう、あれははるかな過去の事。妾がこの太陽系第三惑星に生を受け、ご主人様の残滓を見出し、共にある事を決め、今より古き星空に願いを掛けようと思ったあの日の事。天空を覆う巨大な影が遥かな彼方より降りくるのがわかった。ご主人様によく似た、よく似た気配。その降りくる巨大な物体から発せられる、それは妾の当時いた大陸の北方に、その巨大な影を沈めて行った。そして妾は、あいつと出会うたのじゃ。なな、火星の姫を守るあの忠実な従者と。

・・・なな、よ。お前が残した息子は、とうとう運命と出会うたぞ。これもご主人様のお導きかの。それとも主殿の冷たい計算の帰結なのか?いずれにしても妾に出来ることは決まって・・・おるがの。さあ、お前と姫の城に着いたぞ。そして、どうなるんじゃ?


 僕らを乗せて飛んでいた玉藻様が、氷原の中央でその飛行を止めた。そしてその下方にあった基地?前線基地?らしきものに、巨大な炎弾を上空から浴びせかけた。爆発し、炎上する構築物。そしてその後から現れた、炎弾を浴びてなおその姿を変えない氷のお城?僕が呆気に取られて傍観していると、いつの間にか目を覚ましていたソラちゃんが、横に来て、じっと僕を見つめていた。

「あそこがね、私の生まれたところ。私のお城。そしてね。」

私が滅ぼした国の残骸、と彼女は吐き出すように語った。そして私がずっと、眠っていたところ。彼女はそう噛みしめるように言ったのだった。そして何かを振り払うように首を振ると、玉藻様に向かって指示を出したのだ。

「玉藻さ…玉ちゃん、あの城に向かって。今なら、入れるから。」

玉藻様も答えるように思念を飛ばす。

「いいのじゃな。そうか、では捉まっておれよ。少々揺れるでな。」

そう言うと降下を始める玉藻様。風圧を感じる。そして近づいてくる異星の城。横にいるソラちゃんの手が、僕の手をぎゅっと握る。なのかを潜り抜けた感覚を感じると、次の瞬間、何か柔らかな風を感じた。


 熊帝国首都を数十キロ離れた、とある山脈の地下に造られた宮殿のような建物。その中で強い大統領である私は、不本意な報告を受け、怒りに我を忘れつつあった。

「状況がわからない、だと。それでも誇りある我が帝国の臣民であるか。恥を知れ。」

いかん、このような時に狼狽えた姿を見せるようでは、あの戦時核のボタンが離せないエセヤンキーと変わらぬではないか。私は東の裏切者の国以外に攻め込むつもりは今のところ無いぞ。いまの軍事行動とて、彼奴等が素直に土下座して私のアスを舐めるのであれば、許してやらんでもないのだ。この寛大なる、異世界大統領と言われるこの国の王に臣下としての礼を尽くすのであればな。

「うむ、わかった。現状わかっている事だけでも簡潔に、論理的に伝えるのだ。あり得ぬ報告はいらんぞ。私の心を安らかにさせる報告をこそ望むが、ね。」

だが、主人の寛大なる心の一端も理解できぬ愚か者の通信使が、なお理解できぬことを述べ始めた。

「ど、同志大統領閣下。西の、シベリアの地から、巨大な物体が迫っております!その大きさ、およそ、およそ・・・。」

「およそ、何だというのだ、貴様、山でも飛んできてるというのか。」

「は、はいぃぃぃぃぃ。推定質量1兆トン以上の山、いえ、島のような物体が、我々の頭上に迫ってきて、おりga,gagaga・・・・・・・・」

そして、壮麗なる地下宮殿の機能は、停止した。


 「いいのかのう。これ?」

玉ちゃんが呆れたように呟く。僕等は広大な広さを持つ島(ソラちゃんは、そう説明してくれた。)の上の、氷の宮殿だったところの最上階で一部始終を観察していた。

「ええ、これなら、たいていの攻撃は効かないし、移動も楽だし、この質量で熊帝国の基地くらいなら山ごと粉砕できるわ。まあ、あの異世界大統領が臆病者だったおかげで、辺りに被害を及ぼすような人命も無かったようだし、せいぜい軍事基地ぐらいよ。一緒に潰したの。無問題だわ。」

それでもなお、玉ちゃんは慨嘆する。

「しかしのう。よくこんな巨大な物体が宙に浮くものよの。どういう原理じゃ?」

「じゃあ、あなた、自分がどういう原理で空を飛んでるか、説明できる?何で口から火を吐けるかも。・・・まあ、そういう事よ。勿論科学的根拠はあるんだけどね。ただ、説明してもわかってもらえないだけよ。それとも、聞いてみる?教えてあげるわよ。お望みなら。」

ソラちゃんが挑戦気味に玉ちゃんに語るのを、僕はその美しい横顔を見ながら、やっぱり茫然として見ていた。シベリアの永久凍土の下に眠っていた火星の小大陸。その一部を目覚めさせて動かした結果がこれらしい。ソラちゃんが戦火を逃れて一部の火星の民と地球に逃亡してきた際に乗ってきたのが、火星の、自分の領地を改造した小大陸。その一部を切り離して浮上させて、質量兵器として利用した、という事らしいけど、詳しいいことは、多分聞いても僕ではワカラナイ。ただ、凄い、と思うだけだ。ソラちゃん、いいや、ソラ姫は遠い目をして遥かな上空を見つめている。僕と、元のお手軽なサイズに戻った?玉ちゃんが、並んで彼女を、彼女の後姿を見ていたのだった。

そして彼女は、静かに微笑んで、言ったのだった。

「ねえ、帰りましょう。舞沢に。」

僕は、舞沢に、と言われて実は少し嬉しかった。嬉しかったんだ。後の事は、帰ってからでも何とでもなるさ。そう思いながら、また玉ちゃんにのせてもらってもいいのかな、なんて思っていたんだ。





何か中途半端な気もしないでもないし釈然ともしないけれど、このお話は終わりです。あれ、メイ君とアリアちゃんは?・・・まあ、どこかにはいます。まずは帰りましょう。

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