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第60話

「さて、ここから一番近い国境はどこかしら…ジゼルちゃん、【アイテム購入】に地図なんてあったかしら?」

「ちょっと待ってください、探してみます。」


結果から言って地図はあったので購入した。なんか『地図タブレット』っていう私の持っている手の大きさくらいのタブレット4個分くらいの面積の板で、指先でのタッチ操作で拡大縮小、スクロールが出来る、なんかちょーすげー魔道具だ。新しいお店、閉店したお店等々の情報のタイムラグなく更新される。ちょっとしたメモ機能までついてる。しかもそこまでの機能がついて、200万と意外とお安め。皆で地図を覗き込んでいる時ミーニャさんが言った。


「にゃーはこのグレイリーの街に行きたいにゃ。」

「グレイリーの街…?聞き覚えのないところね。何かあるの?」

「グレイリーの街のエレファト孤児院にはにゃーのいたカルティ村の孤児院のシスターセレーナの姉妹がいるにゃ。カルティ村じゃ教材の類が全然なくて、当時はシスターエレーナには色々融通してもらったにゃ。エルフで長命種だけど、今も元気でやってるか見届けたいにゃ。」


なるほど、別に計画はしていなかったが、近くまで来たから知人のその後を尋ねたいということか。


「いいわよ。ジゼルちゃんの故郷には行くつもりだけど、急ぎではないし。」

「私も大丈夫です。」

「ボクも異論ない。」

「自分も構わないっす。」


特に反対意見は出なかったので、皆でグレイリーの街へ寄り道することになった。関所からはやや遠回りだが、シルディア国とはさほど離れていないところにあるし、ちょっと足を伸ばすくらい構わない。

まずはみんなで手近な街に向かい、一泊してから、乗合馬車でゴトゴト。



***

泊まったり馬車に乗ったりスイーツボックスの中身をみんなで味わったり、優雅に過ごしていたが、1週間くらい馬車で揺られて、街が近づいてくると不穏な噂が聞こえてきた。今あの街は飢えに満ちた地獄のようなありさまだ…という。


「なんか不穏な感じにゃ…行きたくなくなってきたにゃ。」


ミーニャさんが微妙な顔をしている。正直噂の深刻度的に近づきたくない気配が満々である。


「そんなこと言ったって…ミーニャちゃん。シスターセレーナにシスターエレーナは飢えに満ちた地獄にいるらしいって聞いたって報告して、確かめもせずに帰るの?」

「うう~~!!そんなこと出来ないにゃ…義理人情的にアウトだにゃ。」

「観念して確かめに行きたいけど、事前調査は必要ね。疫病の類だとアタシたちがうつされてもまずいから。」


まずはグレイリーの街に比較的近い街で聞き取り調査。

おぼろげに噂の輪郭が掴めてきた。

①理由は不明だが食料の殆どが駄目になった。

②水も殆ど駄目になった。

③疫病ではないらしい。

④グレイリーの街だけではなく隣接している、シャモエの街と、ロンガの街でも水と食料が駄目になっているらしい。

かなり危機的状況っぽい。街に行く馬車は既に出ておらず、行くなら徒歩で行くしかない。


「はい。結論として、行くなら速やかに行くしかない…ということになりました。ポヤポヤしてたらシスターエレーナの死亡報告を孤児院に送る羽目になるわ。皆、ここが踏ん張り時よ。」


ベルさんが結論を出した。馬車が使えないので、足で行くしかないが、のんびり日数をかけてたら、死んでる可能性が高い。【スピードUP】のバフをかけてダッシュで行く。ちょっとしたマラソンである。すごいキツイ。基礎体力のない私とミーニャさんは特につらい。ベルさんが適度に休息を入れ、ペース配分を調整してくれる。

やがて見えてきたグレイリーの街。門番は既に倒れて門に寄りかかってぐったりしている。


「入るわよ。」


見えているのか意識があるのか定かではないが門番の前にギルドカードを翳して街に入った。

地図を頼りにエレファト孤児院へ行った。中では孤児やシスターが倒れている。まずはクリエイトウォーターで、盥に水を出し、グラスを用意して、シスターや孤児に水を飲ませた。孤児の4分の1は既に亡くなっていた。


「シスターエレーナ!しっかりするにゃ…!」


ミーニャさんがエルフの女性に水を飲ませながら声をかけている。


「あな…たは…?」


水を飲んでエレーナさんの目に生気が戻ってきた。


「カルティ村の、セレーナの所にいた、ミーニャだにゃ。エレーナは覚えてないかもしれないけど…」


エレーナさんが淡く微笑んだ。


「覚えてるわ…私の長靴にたっぷり泥を詰め込んでくれたミーニャちゃんね。」

「変なとこは忘れるにゃ。とりあえず食べるにゃ。」


ミーニャさんが迷い人の糧から食料を出して与えた。エレーナさんはそれを受け取ると視線をさまよわせた。


「まずは子供たちに…」

「子供たちの分はちゃんと用意するから安心するにゃ。あと悪いけど、これあんまり美味しくないにゃ。でも栄養はあるにゃ。」


私とベルさんとシータさんとイシュさんも子供たちに食料を配った。子供たちは貪るように不味い食事を食べている。エレーナさんもそれで安心したように自分の食事をとった。

全員がお腹いっぱい食べて人心地着くと、別のシスターらが、子供たちを介抱して立ち回り始めた。『銀の匙』はエレーナさんに事情を聞く態勢に入る。


ジゼルちゃんのタブレットはスマホをイメージしてください。アイフォン6Sくらい。やや小さめ。

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