第40話
お魚牧場で1ヶ月ほど遊んだ。どうもベルさん的にはダンジョン攻略…というよりミーニャさんの人柄を見ていたようだ。そしてミーニャさんは無事ベルさんから合格点を貰えたようだ。銀の匙であらかじめ会議を開いたうえで、ミーニャさんをパーティーに招いた。
「ミーニャちゃんさえ良ければ、『銀の匙』に正式加入しない?」
「するにゃー!!!う、嬉しいにゃっ。」
こうしてミーニャさんの正式加入が決まった。
ギルドで手続きをした。
「というわけで次のステップに進みましょう?」
ニコッとベルさんが微笑んだ。
「?」
私とイシュさんとミーニャさんが首を傾げた。
「青のダンジョン10階層への転移石を出して。」
全員が青のダンジョン10階層への転移石を出した。そして10階層へ転移した。魚人を魚肉に変えながら、10階層の奥へ行く。
「ジゼルちゃん、これ片耳にしてちょうだい。」
渡されたのは共鳴のイヤリング。私が片耳にイヤリングをつけるとベルさんももう片方のイヤリングを自分の耳につけた。
⦅聞こえる?ジゼルちゃん。⦆
ベルさんは口を動かしていないが、ベルさんの声が聞こえた。思い浮かべて呼びかければいいのかな?
⦅聞こえます。ベルさんも聞こえますか?⦆
⦅ええ。⦆
「壁に石がはまってるでしょう。赤い石と青い石。アタシとイシュ君は青の方に入るからジゼルちゃんとシータとミーニャちゃんは赤の方に入ってちょうだい。」
「入るってどうやってですか?」
「石に触れて魔力を流すと扉が現れるからその中に入るのよ。」
赤い石に触れて魔力を流すと扉が現れた。
「殆どシータが知ってるから、聞くといいわ。」
「はい。」
私とシータさんとミーニャさんが赤い石の扉に入る。中にはまず社のようなものがあった。
「まずはここで、冒険の安全を祈願するんだ。お賽銭箱に一人100ギルくらい入れて手を合わせてお祈りだ。」
シータさんに言われた通り、100ギルお賽銭箱に入れて3人で手を合わせてお祈りする。すると社の隣に扉が現れて開く。
「あの中に入るんだ。」
扉の中にはずらりと鍵が吊るされている。扉と鍵穴もある。その横にダストボックスのような何かも。穴から何か出てきそうな受け皿のような何かも。
「この鍵は殆どフェイクなんだ。魔力感知してみろ。魔力を帯びてる鍵があるはずだ。」
索敵の要領で魔力を帯びた鍵を探す。沢山鍵があったので少し手間取ったが無事探せた。持ち手の青い鍵だ。
「これで扉の鍵を開けるんですか?」
「いや違う。そこのダストボックスに入れてみろ。」
言われた通りダストボックスみたいなところに鍵を入れた。
すると穴からポロリと受け皿に持ち手の赤い鍵が出てきた。
⦅ジゼルちゃん、鍵は出た?⦆
⦅はい。⦆
「ここと青い方の部屋は繋がっていて、こちらの部屋に青い部屋の鍵が、青い部屋の方に赤い部屋の鍵があるようなんだ。ダストボックスに入れると鍵が交換できるから、その持ち手の赤い鍵でここの扉を開けるんだ。」
「わかりました。」
鍵を開けて扉に入った。随分綺麗な部屋だと思う。右上にランプ。その下に2つのスロット。その下にボタン。左側には一番上に掲示板。その下に赤、橙、黄、緑、青、藍、紫の虹の7色の丸いボタンがあった。
「ここがボクたちが今まで躓いていた部屋だ。」
⦅ジゼルちゃん、ボタンの部屋に入った?⦆
⦅はい。⦆
⦅まずはジゼルちゃんからスロットのボタンを押してみてくれる?タイミングは適当でいいわ。⦆
⦅はい。⦆
私がボタンを押すと上のスロットが止まり、『う』という文字が表示される。
⦅じゃあこっちもスロット止めるからね。⦆
下のスロットに『826』という番号が表示された。
⦅次に7色のボタンの上に文字が表示されるから順に読んでいって。⦆
⦅はい。藍、黄、赤…⦆
表示された文字を読んでいく。特に音も光もしないがベルさんたちは向こうの部屋で何か操作をしているのかもしれない。
⦅いいわ。次にこっちから色を指定していくから一番右上のランプが灯ったらアタシが言う順番で7色のボタンを押していって。⦆
⦅はい。⦆
かちっ。
右上のランプが灯った。
⦅ランプが灯りました。⦆
⦅じゃあ、行くわよ。黄、黄、紫…⦆
ボタンを押すとポーンと音が出る。押すボタンによって音が違うようだ。
言われた通りにボタンを押していくが、うっかり別のボタンを押してしまった。
⦅すいません。ミスりました。⦆
ブォォォォオオーと不気味な音がする。
⦅大丈夫よ。3回までチャレンジできるし、全部失敗しても1週間クールタイムを置けば再チャレンジできるから。さ、まずはまた最初からそっちの掲示板の文字を読んでちょうだい。⦆
今度はミスなくやれた。交互にボタンを読み上げてボタンを押すのを繰り返す。どうやら何かの音楽を演奏しているようだ。全部ボタンを押し終えて掲示板に何も表示されなくなると、右端のランプがパッパッパっと点滅する。それから完成された音楽が流れてきた。何となく情緒的な民謡のような音楽だ。音楽が終わると中央の扉が開いた。中に入ると大きな部屋になっていて隣の部屋からベルさんとイシュさんが出てきた。
「謎は全て解けたわね。」
「曲を演奏していたのはわかったが何か法則性があるのか?」
「そっちで止めるスロットは『あ』か『う』か『ゆ』。恐らくそれぞれ『朝歌』『海歌』『夕歌』のことよ。こっちで止めるスロットは1~999までの数字が表示されるわ。『あ』の『23』なら朝歌の23番目の曲を1小節ごと交互に演奏していくのよ。」
「イヤリングがないとクリアは無理なんじゃないか?」
「そうでもないわ。朝歌999曲、海歌999曲、夕歌999曲暗記してランプでタイミングを合わせればクリアできるし、全部覚える自信がないなら目視で回ってるスロットの中から『あ』『う』『ゆ』を選んで止めて、10曲ぐらい周辺の曲を暗記して目視でその範囲に当たる番号のスロットを止めれば何とかなるもの。」
「ちょっと練習が必要そうではあるな。」
「まあね。」
私は知らないが、ベルさん曰く『朝歌』『海歌』『夕歌』はマリーアネットシティに伝わる古い民謡らしい。流石にベルさんも全曲は覚えていないらしいが、漁師さんなんかは伝統深く覚えている人が多いそうだ。
「さ、アイテム取りに行きましょ。文献通りならそっちの箱に入ってるはずだから。」
部屋の中央には箱が置かれている。結構大きめで丈夫そうな箱だ。ちょっと宝箱に似ている。
「ミーニャちゃん、一応罠がないか調べてくれる?」
「わかったにゃ。」
ミーニャさんが箱を調べる。
「罠はないにゃ。」
確認が取れたので箱を開けてみる。中にはクッションが敷かれ、上に5つの銀のペンダントが乗っていた。虹色の鱗のようなものがペンダントトップになっている。ベルさんが鑑定眼鏡をかけて鑑定する。
「海神の加護のペンダント:水中での呼吸、会話、歩行が可能となる…ね。みんな、これを一つずつ装備してちょうだい。今から真・青のダンジョンに行くけど、準備はいい?」
「真・青のダンジョンって何っすか!?」
ベルさん曰く、お魚牧場はただの青のダンジョンの表面に過ぎない。青のダンジョンにはさらに裏がある。普通のダンジョンと同じく凶悪な魔物や罠のあるダンジョンだ。数千年前は冒険者がよく潜っていたらしいが、時代と共にそこに辿り着く術が忘れ去られ、今は口伝で『昔はそういうのがあったらしい』と言われている伝説のダンジョン。因みに結構攻略難易度は高いらしい。
「気を引き締めて行かないと死ぬわよ。」
「はい。」
みんな気を引き締めてペンダントを首にかけた。
「まずは転移石で青のダンジョン第1層に戻ってちょうだい。」
「はい。」
全員で第1層に戻る。




