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第34話

「お誕生日おめでとう。ジゼルちゃん。」


翌朝、起きて真っ先に目に入ったのは微笑むベルさんの顔。うう。今日も格好良い。


「有難うございます、ベルさん。」


一番最初にベルさんに祝ってもらえるなんて贅沢。抱き寄せて撫でてくれた。

シータさんとイシュさんも目を覚ましたが、イシュさんは見事な二日酔いらしい。目が覚めて一番先にしたことはトイレにダッシュでの嘔吐だった。2回ほど吐いて胃の中を空にして、水と二日酔いの薬を飲んだ。


「イシュ君。吐くほど飲むのは止めた方がいいわ。胃酸で歯が溶けるわよ?食道だって荒れるし。」


ベルさんが【ヒール】をかけて荒れた食道などを癒している。


「すまないっす。」


朝食は私たちは普通に焼き魚と御飯とかを食べたが、イシュさんは蜆のお味噌汁だけで済ましたようだ。内臓にこれ以上負担かけるのもあれだしね。


「大丈夫か?イシュ。」

「もう吐くものは殆どお腹に入ってないので大丈夫っすよ。頭は少し痛いっすけど。ジゼルさん、お誕生日おめでとうございます。」

「おお。ジゼル、誕生日おめでとう。」

「有難うございます。…………でも、まずは遅れちゃいましたけど、ベルさんのお誕生日をお祝いしていいですか?」


イシュさんとシータさんは顔を見合わせて笑った。


「実はジゼルならそう言うかと思ってボクらも兄殿に誕生日プレゼントを用意したんだ。」


それぞれが鞄から荷物を出した。


「ベルの兄貴。お誕生日おめでとうっす。当日に祝ってあげられなくてすまなかったっす。これはプレゼントっす。」


イシュさんが取り出したのは割と大きな包みだった。


「有難う。何かしら。」


ベルさんがプレゼントのラッピングを開ける。出てきたのは文庫本のセットだった。


「シータさんに読書が趣味って聞いたので、冒険もの、推理もの、恋愛ものと揃えてみたっす。沢山買ったら本屋のおじさんが絵本を1冊つけてくれたので、それもどうぞっす。」


それぞれシリーズもので全部合わせると9冊くらい?+絵本1冊。本は基本的に手書きなので同じシリーズを揃えようと思うと結構大変だったりする。無論割と高価。


「有難う、楽しませてもらうわ。」

「兄殿。これはボクからだ。お誕生日おめでとう…ございました?」

「有難う。」


シータさんが渡したプレゼントの中身は魔道具のランプだった。ボタン一つで明かりをON/OFFできる、火を使わない明るいランプ。言うまでもなく高価。


「夜の読書には最適だろ?」

「ふふ。有難う。」


イシュさんとシータさんは示し合わせて揃えてきたようだ。なにさー。二人していい感じじゃん?


「ベルさん、お誕生日おめでとうございます。私からはこれを贈らせてもらいます。」


私はタブレットにお金を吸わせて『5連アイテムガチャ』を選択した。私のお誕生日モードなので50万になっている。


「あら、それランダムでアイテムが出てくるやつよね?」

「はい。お好きなタイミングで、このタブレットの中心にある黒ボタンを押せばいいみたいです。」

「アタシにも触れるの?」

「ボタンだけなら触れるみたいです。」


このタブレットって他人にも見えるけど、他人は触れないんだよね。触ろうとしてもすかっと空を切る。落としても念じるだけで私の手の中に戻ってくる。


「何が出てくるんっすかね?」

「楽しみだな。わくわくする。」

「リアルな幸運値に引っかかってきそうで、なんか怖いわね。」

「ささっ。ベルさん、遠慮なくぽちっと。」

「じゃあ…」


ぽちっとベルさんがタブレットの黒いボタンを指先で押した。

パパーン!

変な効果音と共にアイテムが排出された。


「あらあ…」


純白のレースとシルクの超可愛い女性下着(上下セット)だった。タブレットに説明文が表示される。

ラブリーランジェリー(未使用):得も言われぬ可愛いデザインのブラとパンティ。これで夜の生活も充実。※ただの下着。


「いきなり不安になるアイテム出てきたな。最終決戦装備を思い出す。今度はボクのサイズじゃないみたいだが。ジゼル、これくらいなんじゃないか?」

「はい。私のサイズです。」

「ジゼルちゃんが着てみせてくれるってことかしら?」

「兄殿、それは見るだけで済むのか?」

「うふふ。」


ベルさんに下着を渡された。


「見せてくれるの楽しみにしてるわ。」


耳元で囁かれて、ちゅっと耳にキスされた。あう…冗談だろうけど…頬が赤くなる。


「さ。次だ。」


シータさんが気持ちを切り替えてきた。ベルさんが再びボタンを押した。

パパーン!

文庫本が二冊排出された。

文庫本『官能のざわめき』上下巻セット:出版されていたら(恐らく)大ヒット間違いなしだった官能小説。腰に震えの走るような愛欲の日々をご覧あれ。


「ジゼル!このガチャ大丈夫なのか!?」

「私も不安になってきました!!」


5つ全部エロアイテムだったらどうしよう…!折角のお誕生日プレゼントなのに。


「うふふ。折角のお誕生日プレゼントだし、しっかりじっくり読ませていただくわ。」


なんか恥かしい!!ベルさんは読む気満々っぽいけど。

ベルさんが続けてぽちっとボタンを押した。

パパーン!

ワインの瓶が2本出てきた。

ワイン(特上)赤・白二本セット:ノーブランドのワイン。赤はストラ・アト・ルビーに酷似した味わい。白はティアラ・マルフォーレに酷似した味わい。両方とも今が飲み頃。

良かった…なんかまともそうなアイテムだった。


「良かったっすね。元取れたっすよ。ストラ・アト・ルビーは飲む『飲む宝石』とまで言われた、素晴らしい味わいのワインのシリーズっすよ。当たり年とそうでもない年があって、味に多少差があるっぽいけど概ね高評価っす。ティアラ・マルフォーレはマルフォーレ国の王家御用達のワイン蔵のワインっす。昔このワインを飲んで感動した姫が『ティアラを授ける』と言ったという由来があったはずっす。こちらも勿論当たり年の関係はあるけれど、美味しいらしいっす。自分は飲んだことないっすけど両方ともふつーに1瓶200万近いお値段するっすよ。」


おお…良かった…本当に良かった…これで残り2つがネタアイテムでも笑って許せる。


「楽しみね。ティアラの方は、夜、皆で開けてみましょう。」

「そんな、ベルの兄貴へのプレゼントなのに…」

「アタシは、『みんなで美味しいものを味わう時間』をプレゼントされたと思うわ。いくら美味しくても、一人酒は切ないもの。ジゼルちゃんもちょっとだけ付き合ってくれる?」

「はい。」


ベルさんがぽちっとボタンを押した。

パパーン!

ニットの幅広い輪っかが出てきた。


「腹巻か?」

「馬鹿ね。違うわよ。」


ニットのスヌード(カーキブラウン):ただのニットのスヌード。


「スヌードってなんだ?」

「シータは少しファッションを学んだ方がいいわよ。」


ごめんなさい、私も知らないです。

ベルさんはくりくりっと長い輪を巻いて頭からかぶって首の位置に配置した。


「お洒落防寒具ね。マフラーとかと系統は一緒だけど、女の子なら腕を通してショールみたいに肩に羽織ったりもできるみたいね。地味に嬉しいわ。欲しかったの。」

「兄貴、なんかだぼっとしてて可愛いっす。」

「うーん。いいなあ。似合ってるぞ?」

「うふふ。今は暑いから取るけど、秋冬は活用させてもらうわ。」


最後にぽちっとベルさんがボタンを押す。

パパーン!

なんかスクロールっぽいものが出た。


「あら、ジゼルちゃんの【アイテム購入】ではスクロールの項目はないのよね。購入できない品なのかしら。」


全員で説明文を読んでフリーズした。

オーバーヒールスクロール:開いたものが【オーバーヒール】を習得できる。効果は永続。ただし元の魔力が増幅される機能はない。使い捨て。※きょ、今日は特別なんだからね!


「嘘…ジゼルちゃんの【スキル購入】でも6億…バースデーセールでも3億ギル相当…しかもアタシが滅茶苦茶欲しかったスキル…」

「お、おめでとうございます――――!!」

「兄殿やったな!」

「ベルの兄貴おめでとうっす!!『金喰虫』のタブレットが微妙に会話してるのが気になるっすけど。」


皆でわあわあ喜んだ。ベルさんが早速スクロールを開いた。


「あら、やっぱり結構魔力消費お高めね。」

「使えません?」

「そんなことないわよ。ただ全快している状態でも1日8回くらいしか使えないわね。代わりに古傷も部位欠損も治るわ。つまり、腕を失っている人に新しい腕が生えてくるってわけ。ただし先天性…生まれつき足がない人とかは無理ね。怪我で失ったのなら戻せるけど。」

「『治癒術師』で【オーバーヒール】を使える人の割合ってどんなもんだろう?」

「あんまり多くないって聞くわね。長生きした長命種にパラパラ使い手がいるって話だけど。アタシも千年くらい生きれば自然に覚えたかもね。」

「あんまり吹聴しない方が良さそうだな。」

「そうね、嬉しくはあるけど、権力者に拘束とかあまり嬉しくない話だし。」


パーティー内だけの秘密という話になった。勿論使うべき時が来たら使っちゃうらしいけど。

ベルさんはお誕生日プレゼントを全部収納リングに収納した。


「みんな、ありがとう。すごく嬉しいわ。」


ベルさんがにっこりと微笑んだ。


「喜んでもらえたなら良かったです。」

「じゃあ、次はジゼルの誕生日プレゼントだな。ボクからはこれだ。」


小さなアミュレットをくれた。『安産祈願』と書いてある。


「……。」

「冗談だ。本当はこっち。消え物で申し訳ないが、ちょっと良いんじゃないかと思っている。」


500mlくらいの瓶になみなみと液体が入っている。


「なんですか?これ。」

「『髪用トリートメント』らしい。使用法の説明書もセットだ。艶々うるうるの髪になるらしい。指通りがサラサラになると聞いた。」

「有難うございます。嬉しいです。」

「あと一応柘植櫛と櫛のお手入れセットも買っておいたから使ってくれ。」

「有難うございます。至れり尽くせりですね。」


美髪を手に入れちゃうぞ!


「自分からはこれっす。」


イシュさんからのプレゼントはピンク色の丸い珊瑚玉が3つついた簪だった。金属で花のような形に細工されている。


「可愛いです。有難うございます。」


やっぱりシータさんと示し合わせて購入してきたっぽいな。艶髪に簪。


「アタシからはこれね。」


ベルさんからの誕生日プレゼント。真珠のイヤリングだ。真珠と下にプラチナで『CC』というロゴがついて、ロゴのお尻に小ぶりなダイヤがついている。すごーく綺麗。柔らかい色合いで艶々輝いている。

鑑定書が入っている。


「なるほど。兄殿はそういう手で来たのだな。」


シータさんが頷いた。


「そういう手?」

「ジゼルの【アイテム購入】では購入できない品がある。」

「スクロールですか?」


スキルスクロールは購入できないんだよね。【スキル購入】が死にスキルになっちゃうせいだと思うんだけど。


「もう一つだ。ボクはさっきまで気付かなかったが、さっきのワインの件で確信した。ジゼルのスキルでは『ブランド品』が購入できない。全てが酷似した『類似品』だ。どんなに良質な品でも、『ブランド品』のネームバリューだけは獲得できない。そうだろ?兄殿。」

「その通りよ。正規品のブランド物がある日突然店から紛失するような能力であるわけがないのだから、ジゼルちゃんのスキルでは『ブランド品』は購入できないわ。」

「つまりそのイヤリングはブランド品っすか?」

「その真珠の下についているブランドロゴ。『チェルシア』というブランドの品だ。」

「聞いたことあるっす。年頃の女の子なら『彼氏からプレゼントされたい』憧れのブランド品っすよね。」

「そうだ。マリーアネットシティにはチェルシアブランドの本店がある。」

「ええ。本店で購入したの。」

「有難うございます。」


綺麗だし、ブランドものなんて初めて。とっても嬉しい。リッチな気分だ。折角なのでつけてみた。


「似合うわ。可愛い。」

「そうだな。ジゼル、よく似合っているぞ。」

「すごく似合ってるっす。」


嬉しい。にまにましちゃうよ。


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