第27話
お金さえあれば必需品の類はいつでも【アイテム購入】できるので、私達は至って気軽に旅立った。とりあえず夏を過ぎてしまうと海で泳げなくなる!とシータさんが急かした。手頃な護衛依頼はなかったので、乗合馬車での旅だ。
「お客さん…言いにくいんですけど、横幅的にも重さ的にも運賃は2人分は頂かないと、こっちとしてもまずいんでさあ。」
「…はいっす。」
イシュさんはやはり2人分の運賃を取られていた。
「兄殿!トロがボクを呼んでいる!」
「そうねえ。青のダンジョンがあるから魚だけは旬を無視して食べられるのが利点ね。アタシはカツオのたたきがいいわねえ。甘エビなんかも美味しいけれど。」
当然だが私はどちらも食べたことがない。イシュさんもマリーアネットシティや青のダンジョンに入ったことがないらしいから、多分食べたことはないだろう。
「ジゼルはまた兄殿とデートだな。」
シータさんがこそっと耳打ちしてきた。うう…で、デートか…
「シ、シータさんだって、イシュさんとデートしたら…」
「そのつもりだが。全然脈がないんだよな…」
うーむ。イシュさんは自分は恋愛とは無縁と固く信じ込んでるからなあ…イシュさんは性格が良いんだから惚れる女性がいてもおかしくないと思うのに。わ、私はベルさんくらいお兄さんな方がタイプだけど。二人でちらちら想い人に目をやる。
「あーあ。地元ねえ…」
ベルさんがちょっと憂鬱そうな溜息を吐いた。
「何か嫌なことでも?」
「別に嫌って程でもないけど。アタシももう35じゃない?長命種の友人は割とのんびり構えてるけど、短命種の友人はもうお嫁さん貰って一人か二人くらい子供いるのよね。嫁自慢、子供自慢されるのかと思うと……ハンカチ噛んでキーッ!って言いたくなるのよ。」
「ふふ。」
コミカルな表現方法にちょっと笑ってしまった。
「私の村でも結婚した友人がいるって両親が手紙に書いてました。」
「ジゼルちゃんの村ってどんなところ?」
「信じられないくらい寂れた農村です。」
私は成人までの村での極貧生活を語って聞かせた。みんな余りの貧しさに絶句していた。うんうん。今くらいの生活レベルを基準で考えると村での暮らしなんてありえないよね。私も、もし冒険者やめてどこかに腰を落ち着けるとしても、自分の出身地だけは選択肢に入れてない。アイテム購入で商人暮らしできるし、どっか住み良い街が良いよ。人間贅沢に慣れてしまうと貧乏生活には戻れないのさ。
ぎゅっとベルさんに抱きしめられた。
「これからはいーっぱい楽しい経験しましょうね。」
「はい。」
「ボルルックシティはどんなところだ?」
シータさんがイシュさんに水を向ける。
「緑豊かな平和なとこっす。『シティ』ってついてるっすけど、村が巨大化した都市みたいなとこっす。お隣さんが気軽に調味料借りに来るような…。職業は果実農園が多いっすね。葡萄酒の生産がシルディア国で4番目に多い都市っす。ちょっと離れたところに緑豊かな森もあって、緑のダンジョンに少し似てるっす。季節季節で色んな果物が生るし、猟師の方はよく森で獲物を狩ることも多いようで、飼育された豚や牛や鶏の肉より、野生動物の肉の方が多いっす。自分は子供時代から肉と言えば兎が真っ先に思い浮かぶような食生活だったっす。」
因みにシルディア国というのが私たちの住んでいる国である。中々大きな国らしいけど、私は世界地図を脳裏に思い浮かべられないくらいの知識貧乏です。
「因みに自分の実家は一市民で父の職業は商人ギルドの平職員っす。高給取りではないけど安定職っすね。母は針子の内職をたまにするくらいの、ほぼ専業主婦っす。商人ギルドの職員は世襲じゃ無いんで自分は関係ないっすけど。」
「へえ。」
「ボルルックシティの人口は竜人族の占める割合がかなり多いっす。両親ともに竜人族っす。」
「うちは両親は母は魔族で父は有翼族だ。」
有翼族も長命種なんだよね。ランディみたくハーフ○○みたいなのは結構珍しくて、大抵両親どちらかの種族に偏って生まれてくる。
人間とか獣人とかの35歳って言ったらもう殆ど妻子持ちだろうなあ…ん?35?
「ベルさんっていつ35になったんですか?以前お聞きした時は34でしたよね?」
「誕生日は6月22日なの。ダンジョナー内でひいこらいってたときね。ジゼルちゃんは誕生日いつ?」
「8月20日です。」
「じゃあ、お祝いしましょうね。」
ベルさんが微笑んだ。
「私もベルさんのお誕生日、お祝いしたかったです。」
「気持ちだけで嬉しいわ。良ければ来年祝ってちょうだい。」
「はい…」
うー…遅れちゃったけど、何かプレゼント用意してみようかな。ぴかっとタブレットが光ったので見てみる。
『告知:バースデーセール開催のお知らせ。ジョブ主【ジゼル】の誕生を祝して8月20日にセールを開催いたします。【スキル購入】50%OFF!【アイテム購入】50%OFF!』
ちょ!?ぅえっ!?私は慌ててみんなにタブレットを見せた。
「……『金喰虫』って随分お茶目なジョブね。」
「【アイテム購入】の方ならボクらにも恩恵あるってことだな!?ジゼル、魔法武器の項目を開いて見せてくれ!」
「じ、自分もなんか買うっす。色々見せて欲しいっす!!」
「厚かましくてごめんなさい。アタシも色々購入してもいいかしら?」
「勿論です!」
皆でバースデーセールに向けてウキウキと購入したい品目を考えた。みんなは【アイテム購入】だけだけど、私は【スキル購入】の方も半額になるみたいだし。うー…お金がいっぱい欲しいっ!ていうかもしかしてセールって毎年開催する気なのかな?17まではこんなサービスなかったのに。
因みに12月3日がシータさんの誕生日で2月15日がイシュさんの誕生日だそうだ。イシュさんが「ツィーツェの誕生日も自分と同日っす」と言っていた。それはどうでもいいかな。
夏物一掃セール的なノリで
ストックが尽きました。
今後は不定期更新になります。




