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第25話

まずは宿屋へ戻り、ベルさんの部屋へ集合した。ベルさんからお金を預かり、タブレットに吸わせて鑑定眼鏡の項目を開くと眼鏡のデザインが色々選べた。試着できないことだけが唯一の欠点だ。みんなであれがいい、これがいいと相談して、フレームレスのスクエア型の鑑定眼鏡を購入した。眼鏡と、保護用の眼鏡ケース、レンズ拭きがセットで付いてきた。眼鏡の方は中々お洒落である。ベルさんが掛けてくれたが、これまた似合う。知的な感じがして格好良い。眼鏡姿のベルさん…格好良い…はう…


「ジゼル。目がハートだぞ。」

「う、うるしゃい。」


シータさんにからかわれてしまった。


「あらあ。すごいわねえ…」


宝箱の中身を眺めてベルさんが呟いた。


「『全部』呪われてるわ。」

「え?全部ですか?」

「ええ。全部。ひとつ残らずよ?本当に執念深いみたいね。あの狐。ジゼルちゃん。パパッと【アンチカース】かけちゃってくれる?」

「はい。」


私は全ての品に順繰り【アンチカース】をかけていった。

ベルさんのアイテム解説が入る。

1つ目の箱。

フレイムソード:火属性の魔法剣。炎のように揺らめく真っ赤な剣身。平原や森に現れる魔物には特に効果が高い。水属性の魔物と火属性の魔物には効果が薄い。

変身リング(狐獣人):指輪型マジックアイテム。装備者はどの種族でも気軽に狐獣人になれる。ただし耳と尻尾に触覚はない。サイズ自動調節機能付き。

赤のティアラ:宝飾品。ダイヤモンド、ルビー、ガーネットなどで出来ている赤と白の対比が美しいティアラ。美術的価値は高い。

赤のネックレス:宝飾品。ダイヤモンド、ルビー、ガーネットなどで出来ている赤と白の対比が美しいネックレス。美術的価値は高い。


「シータ、魔法剣だけど、欲しい?」

「いやー…エンチャントできないならいらないよ。基本的に属性のついた魔法武器は他の属性をエンチャントできないのだろ?不便じゃないか。」

「ジゼルちゃんが居る日常に慣れると我儘になるわね。」


ベルさんが苦笑した。


「でも火属性の魔法剣は緑のダンジョンでは高需要よ。売るには良いと思うわ。」


確かに。高値で売れそうな予感。ちょっとワクワクするね。


「ジゼルちゃん、変身リングつけてみてよ。見てみたいわ。」

「え?はい。」


私はリングをつけてみた。ぽふんとエルフ耳が消えて狐耳と狐尻尾が生えた。


「かわいーい。尻尾はスカートに穴がないのに見える仕様なのね。」


モフモフされた。触られる感触は全然ないけど自分でも触れた。もふもふやった。ベルさんとシータさんとイシュさんにかわいいかわいいともふられまくった。全員順繰り狐獣人スタイルを楽しんだ。勿論みんな可愛かったです。最近親愛の情が芽生えてきてるのでイシュさんの見た目も普通に「愛嬌があるな」と思うようになってきている。変身リングはちょっと欲しいような気もしたけど売ることにした。


「宝飾品は売却ですか?」

「欲しいのか?ジゼル?」

「欲しくないですけど、シータさんに似合いそうだなあって…」

「そうっすね。ちょっとつけてみるっすよ。」


シータさんも私もそれぞれ着用してみた。


「ジゼルちゃんは青系の石の方が似合いそうな気がするわねえ。パステルカラーとかも似合いそうだけど。」

「そうですねえ。」


鏡を見てみたが自分でもルビーってキャラじゃないなというのはわかった。ルビーかサファイアかって言われたら確実にサファイアの方が似合うと思う。真珠とかオパールも好きなんだけど、うちは貧乏だったから宝飾品は遠くから見たことがあるだけって感じだ。


「シータさん似合うっす。」

「そ、そうか?」


イシュ君に褒められてシータさんはテレテレしていた。まあ売却する予定になったけども。

2つ目の箱。白いのっぺらぼうのマネキンが膝を抱えて入っていた。

身代わり人形:ボタン(臍の位置にある)に触れた人間と同じ容姿になる人形。息もするし脈もある。ボタンを3度押すと元のマネキンになる。


「身代わり人形って何の役に立つんですか?」

「読んで字の如くじゃない?お偉方の身代わりだと思うわ。それなりに需要あると思うけど。」


シータさんが試しにぽちっとボタンを押した。


「うわあああ!」


イシュさんが慌てて目を背けて後ろを向いた。確かにシータさんそっくりになったのだけれど…服…着てない。生まれたままの姿のシータさんだ。お風呂で見たシータさんと変わらぬボディラインをなさっている。


「あらあ…体温もあるのね。」


ベルさんが平然とペタペタ触っている。


「兄殿…流石に兄妹とはいえ、遠慮がなさすぎるぞ。」

「陰部もあるとしたら、もしかしたら、夜用の人形としての需要の方が高くなっちゃうかもしれないわね。どれ。」

「ウワア!兄殿!足を開かせるな!ボクが自分で確認する!!」


人形を引きずってベッドの陰まで行ったシータさんのお答えは「あった…」だった。多分夜用人形としての需要が生まれそう。シータさんは真っ赤な顔で人形をマネキンに戻して連れてきた。


「本当にこんな卑猥な人形を世に送り出していいのだろうか…」


シータさんが眉を顰めた。


「ふふ。アタシたちが持ってても意味ないから売るしかないけどね。それともイシュ君使いたい?」

「けけけけ、結構っす!!」

「兄殿!」


ベルさんがイシュさんとシータさんをからかった。

3つ目の箱。

リロード式スローイングナイフ×10(ホルダー付き):魔法武器。物自体はよく切れる普通のスローイングナイフ。どこへ投擲してもホルダー所持者の『リロード』の掛け声に応えて、何度でも投擲したナイフを呼び寄せて、ホルダーに装填できる。ホルダー内に入れておくと刃毀れなどを自動修復できる。

逆転スイッチスクロール×10:スクロールを開いた人間の性別が逆転する。効果は永続。基本的に本人が異性だったら、という基準で容姿及び筋肉量などが変化するが、美醜の保証はしない。使い捨て。

ファイヤーボールスクロール×5:開いたものが【ファイヤーボール】を習得できる。効果は永続。ただし元の魔力が増幅される機能はない。使い捨て。

ファイヤーアロースクロール×5:開いたものが【ファイヤーアロー】を習得できる。効果は永続。ただし元の魔力が増幅される機能はない。使い捨て。


「……リロード式スローイングナイフ貰ってもいいかしら?」

「どうぞっす。」

「一気に実用的だな。」

「というかベルさんの為に存在するようなアイテムですね。ダンジョナーでのスローイングナイフの無念が通じたのでしょうか。」

「あの時のナイフ代は切なかったわあ…背に腹は代えられないとはいえ。」


ベルさんが遠い目をした。満場一致でリロード式スローイングナイフはベルさんの物になった。


「逆転スイッチスクロールは欲しい人からすれば喉から手が出るほど欲しいものでしょうけど、誤って開いてしまったら洒落になりませんね。」

「兄殿が開いたら、母殿は喜ぶと思う。」

「やあよ。特殊性癖の女の子にしかモテないじゃない。」

「男にならモテるだろ?」

「そんな拷問は受けたくないわ。」

「ベルの兄貴の立派な逸物が勿体ないっす。」

「イシュ君お口チャック。」


ベルさんの…うあ…


「んん~?ジゼル、想像しちゃったか?真っ赤だぞ?見せてもらえばいいのにな~?」

「シ、シータさん!」


私はアワアワして、ベルさんが咳払いした。


「まあ、売却ね。ファイヤーボールスクロールはジゼルちゃん、開いておいたら?」

「そうだな。ファイヤーアローの下位互換みたいなものだから出番は少ないかもしれないが、とると良い。」

「有難うございます。」


スクロールを開いてみた。スキルを買ったときに似た感じだ。何もせずとも使用方法がわかる。

4つ目の箱。

迷い人の糧(食料ケース付):マジックアイテム。食べても一度食料ケースの蓋を閉じると、食料ケースの中に何度でも新しく作られる食料。見た目は携帯ビスケット風。味は激マズ。でも栄養は満点。お腹も膨れる。

ハニー&ラズベリーパイスクロール×5:開いた者(既婚女性限定)が夫に愛されて仕方なくなるスクロール。効果はスクロールを開いた時点で結婚している相手との婚姻期間。死別・離縁したら無効。使い捨て。

クリアスキンスクロール×30:開いた者に美しい白い肌を与えるスクロール。どんな紫外線にも負けない。日焼け、シミ、そばかすと無縁でいられる。お肌がワントーン明るく。効果は永続。使い捨て。

最終決戦装備(未使用):黒のレースのブラとパンティ。スケスケ。ただの下着。


「迷い人の糧がダンジョナー攻略後に出てくるという無力感。」

「出てくるのが遅いぞ!こういうのはダンジョナーの入り口に置いておけ!」

「2度あることは3度あると言いますし、保存しておくべきだと思います。」

「そっすね。お金がなくても生き延びられる奇跡のアイテムっすから。水はついてこないっすけど。」


迷い人の糧は自パーティーで使うためのストックということになった。味的な問題で、きっとお金があるうちは私の【アイテム購入】の方を使うと思うけど。いつかの保険の為にあってほしい一品。


「あの…クリアスキンスクロール欲しいです…」


どうしてもこれは主張したい。日焼け、シミ、そばかすと無縁の肌…滅茶苦茶欲しい。


「アタシも欲しいし、30本もあるんだから全員使いましょう?」

「そうだなあ。長命種は一度シミとかできてしまうと、中々長い付き合いになってしまうからな。」


新陳代謝で色褪せてくれないほどの深層のシミだと長々と残っちゃうんだよね。お母さんも自分で森に薬草を取りに入って薬草パックしてるほどシミについてはピリピリしてるのだ。皴とは無縁なんだけどシミばかりは…長命種のご年配の女性は割とお化粧が濃いめの方が多い。


「自分が白い豚でも黒い豚でも構わないっすけど、沢山あるなら自分の母親用に1本欲しいっす。」

「私も。」

「そうねえ、アタシも母さんに1本あげたいわ。」

「母殿にあげたら叔母君が黙ってないと思う。」

「ああ。『小さな頃はいっぱい遊んでお世話してあげたのに!ベルちゃんとシータちゃんがそんな、薄情な子供だったとは思わなかったわ!』って言われちゃいそうね。悪いけどもう1本頂戴。」


ここで親孝行&叔母孝行しておこうという話になった。


「でも『野性的な褐色の肌』とかいうのとも無縁なんっすね。」

「アタシは褐色の肌が似合うキャラじゃないからいいわ。イシュ君はそういうの憧れる?」

「ぶっちゃけどうでもいいっす。自分の見た目に対する期待感はゼロっす。でも夏に露出しても日焼けでヒリヒリしないのはいいんじゃないっすか?」


全員でクリアスキンスクロールを使った。


「ジゼルちゃん肌綺麗ね…すごい透明感出ちゃってる。」

「ベルさんもお綺麗ですよ。」

「有難う。でもこれ…」


ベルさんが鏡で自分の顔を見た。


「自分が生まれてから今までできたシミも全部消えるのね。具体的に言うなら目尻の黒子が無くなっちゃったわ。」

「あ、ほんとだ。」


私も自分の腕にあった黒子が消えていることに気付いた。


「まあ、別に気に入っていたわけじゃないけど、あるのが当たり前だったから少し違和感あるわね。」

「ちょっとセクシーで私は好きでした。」

「じゃあ、ちょっと残念ね。」

「でもそれだけ透明感出るなら母さんも喜ぶっす。」

「そうだな。いい親孝行になるだろうな。」


自分たちとそれぞれのお母さんに送る分と、その他に『自分に娘が出来たら』という想定で一人2本は別にストックしておいた。残りは販売予定。


「最終決戦装備…」

「こういうのが紛れてるとイラっとするな。」

「泣けるわー。あの狐が後生大事に女性下着を身の内に抱えてたんだと思うと泣けるわー。」

「サイズの自動調整とかついてない普通の下着みたいっすけど…これ本当に売れるんっすか?」

「地味にボクのサイズなところが更にイラつく。」

「シータのサイズなら、それはシータのってことでいいわ。」

「こんな透けてる下着、着られるわけないだろ!」


シータさんが怒り狂ってる。うん……デザインは可愛いんだよ?最終決戦の名に恥じないセクシーさが盛り込まれてるけど。

ハニー&ラズベリーパイスクロールは正妃様、正妻様向けということでそれなりの需要はありそう。


「でもぶっちゃけこれって呪いのスクロールよね?精神操作系の。」

「兄殿、シッ。」


5つ目の箱。

シンデレラドレス:ワンピース型マジックアイテム。自分のイメージ通りのドレスに見た目を変えられるワンピース。ただし0時になると1回効果がリセットされてクールタイムを2時間挟まないと効果を発揮できない。

エレガントオーラスクロール×20:開いた者がなんとなく高貴な雰囲気を纏える。効果は永続。使い捨て。

アトラクションダンジョンボックス:手を翳すとダンジョナーの体内を模した空間に入れる。モンスター、もしくは人間に攻撃されると痛みを感じるが、怪我はない。ドロップは出ない。転移石は使えない。2ヶ月に1度、中に滞在者がいない時間に地図の変更が行われる。

以下の場合ダンジョンから排出される。

①致命傷に匹敵するダメージを負う。

②死亡に値するほど体調を損なう。

③飢餓状態が極限に達する。

④アトラクションダンジョンボックスに1週間滞在する。

⑤アトラクションダンジョンボックスが外から壊される。

⑥中で『エスケープ』と唱える。

アトラクションダンジョンボックスを出ると傷、体調変化は平常時に戻る。飢餓状態は半減するが、元には戻らないので、速やかに飲食してください。


「随分不思議なものが出たわねえ。」

「アトラクションダンジョンボックスか。中では兄殿がやったように地図を描くのかな?」

「儲けもしないけど安全にダンジョナーの体内を学習できる装置っすね。」

「死の危険がないなら少し楽しそうですが…」

「アタシは『嫌いな奴に拷問を加える』のに最適な空間だと思うけど。猿轡かまして、死なない程度に斬ったり殴ったり。痛みを感じるけど、ダンジョンの外に出てしまえば無傷だし。危害を加えなくても猿轡をかまして簀巻きにして放り込むだけでも飢餓感を味わわせられるわ。」

「兄殿の発想が怖い…」

「あと、追手がかかってるときに1週間雲隠れするのに使えるわね。」

「兄殿の発想は黒い。」


エレガントオーラスクロールは貴族全般に需要がありそう。シンデレラドレスはお遊びアイテムだけど。物はラクダ色のあんまり可愛くないワンピースだ。ドレスを買うほどの資産のない下級貴族はもしかしたら欲しがるかもね。自動調節機能はついてないけど、サイズは一般女性の平均くらいのサイズだ。


「中々面白かったわね。」

「そうですね。」

「碌でもないものもあったけどな。」

「楽しかったっす。自分宝箱なんて初めて見たっす。」

「私も、こちらのパーティーに加入してから宝箱を見ました。」

「まあ、ダンジョンと宝箱は切っても切り離せない関係よ?アタシはダンジョン潜り長いから、割とたくさん見てきたわね。クズもそれなりにあるけど。前のパーティーには盗賊シーフの子がいたから鍵開けは出来たんだけど、鑑定はギルドでお金払ってやってもらったわ。やっぱり一律10万が相場みたいね。エイミィ君の所もそうだし。」

「へー…」


そう言えば…


「どうしてベルさんって、エイミィさんのことエイミィ『君』って呼ぶんですか?」

「特にどうしてって決めてるわけじゃないけど、アタシは年下の男の子は大抵『君』付けで呼んでるだけよ?」

「「男の子ォ!?」」


私とイシュさんが素っ頓狂な声を上げる。


「本人に尋ねたわけじゃないけど、骨格は完璧に男の子よ?」

「シータさん知ってたっすか?」

「自分では気付かなかったが、兄殿の呼び名の法則は知ってたから『多分そうなんだろうなあ』とは思ってた。中々美人だよな。スカート穿いてるし、もしかしたら『逆転スイッチスクロール』が欲しい人の一人かもしれんが。」


エイミィさんがなあ…美人なのに。多分10人いたら9人は女の人だと認識すると思うよ。



***

オークションは大反響だったらしい。私たちはウハウハである。


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