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第7章 悪夢ふたたび-2



 車を走らせてから、すぐ志穂が横のダッシュボードから丸めていたファイルを取り出した。

「諏澤浩一郎。真田が使っていた研究室を使っていた男よ。彼は二ヶ月前に娘を亡くしてい

る。ここまでは昨日話したわよね」

 恭平はファイルに目を通す。

 それには、真田との接点も書かれていた。

 五年前、諏澤は聖ポリアンヌ女子大学に助教授として迎えられ、真田研究室のメンバーに

入っている。

 諏澤は真田から何かを聞かされていたのかもしれない。

「それから一ヵ月後、諏澤は大学を辞め家財を売り払って、奥多摩の例の場所に教会を建て

た。娘との思い出という名目でね」

「短時間でよくそこまで調べたな」

「私は自分が見たものしか信用しないことにしてるのよ」

「三年前もそうだったな」

「警察がおバカすぎるのよ。もっとも恭平さんは別格だけど」

 志穂は今でも三年前の事件から立ち直れていないことを、恭平は痛感させられた。自分だ

けではないのだ。あの悪夢から解放されていないのは。

「まさかまたあの場所に行くことになるとはな」

 恭平はひとりごちた。

 初めて陽香と出会った地。

 また運命のいたずらに導かれるように、陽香はあの地へと連れ去られてしまった。

 三年前の悪夢がまた甦ろうとしていた。





 諏澤浩一郎は、胸の興奮を抑えることができなかった。

 祭壇の上に横たわる、愛しい娘。

 今度は同じ過ちを繰り返さない。亜沙美と共にここで今までの人生をやり直すのだ。あの

笑顔を取り戻すために。

「亜沙美、もう淋しい思いはさせないからね。お父さんはずっとお前といっしょにいるよ。

もうすぐだからね。この真田教授が残してくれたノートが亜沙美を甦らせてくれるんだ」

 諏澤は、手に持っていたボロボロになったノートを亜沙美に見せた。

 亜沙美が自殺した後、自暴自棄になった諏澤は研究室で後追い自殺を図ろうとした。そし

て、家庭を顧みず研究に没頭していた諏澤は、研究資料のすべてを廃棄しようとしていた。

その時、諏澤は見たことがない古いノートを見つけた。それは、三年前に謎の殺人事件を起

こしてこの世を去った真田耕平が、亡くなった娘を甦らせるための資料だった。

 それを読んだ諏澤は、真田が起こした三年前の事件の真相を知った。成功したのかどうか

はわからなかった。しかし、万に一つでも亜沙美が甦る可能性があるのなら、喜んでこの身

を悪魔に捧げよう。

 真田の残したノートを元に、諏澤は行動を実行した。

 そして、悪魔の召喚に成功した諏澤は、今日という日にすべてを賭けたのだ。




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