64 くろうまが なかまになりたそうに こちらをみている
肉体年齢十六歳、春。
春。春が来た。
春はいい。素晴らしい。
ここに来てから、正確には〈スフィア〉の外に出るようになってから、季節の移り変わりに敏感になった。
昔は春なんてさほど思い入れはなかったし、せいぜい期間限定のスイーツで「もうそんな季節か~」と気付くぐらいだったが、ここでは陽射しや肌に触れる空気の変化さえ体感できている気がする。
特に冬→春!!
春最高!!
北国の三月はまだあちこちに雪が残っているものの、やわらいだ陽射しとぐんぐん成長する新芽のおかげで、四方八方が凍りついていた季節に比べれば段違いの暖かさだ。
久々に森の中の散歩を再開し、外での〈グリモア〉の運用方法を念入りに再確認し、ARK氏による最終調整も行って、よし、と立ち上がった。
「魔物を倒そう!」
一生〈スフィア〉の中にひきこもっていられる保証がなく、森の外に出て人の町へ出かけたりしていた。そこで得た友人知人は、騎士団員や討伐者、その関係者ばかり。右を見ても左を見ても戦闘員である。
そして私は「こいつ戦える奴」と憶えられてしまった。――すなわち、そんなつもりはなかったのに、いつなんどき魔物退治に駆り出されてもおかしくない交友関係を築いてしまったわけだ。
依頼として持ち込まれれば、気が乗らないだの面倒だのウチの暗黒魔女の世話が大変で……だのと断りようもあるだろう。問題は、彼らが持ち込んだものではなく、偶然の事故、突発的な遭遇だ。
確実に戦力として数えられてしまう。
そうなってから「魔物こわい、戦いたくない」なんて言える言えないの話ではなく、戦って勝てなきゃムシャムシャ食べられちゃう現実がそこにある。
そしてその時、私の周りに魔物と戦える者はいないかもしれないのだ。ほかで手一杯、なんて事態も考えられる。こちらを無視して通り過ぎてくれる魔物でなければ、やはり自力で倒せたほうがいい。
自衛なんて消極的なレベルではなく、倒す。できれば先手必勝、短時間で。
あと、実戦における劇物の取扱いに慣れておかなければ、緊急時の誤用や暴発が怖い。いきなり出くわして「キャーどかん!」を防ぐためには、弱い魔物から少しずつ試しておくべきだろう。
魔獣や魔物の生態や弱点などはかなり詳しく教わっているが、実戦で的確に急所を狙えるかはやってみないとわからない。
軽々と動くようになった身体、すっかり手になじんだ魔導刀。それに劇物もといARK印の魔導システム〈グリモア〉が加われば、たとえ倒せなかったとしても、せめて身を守りつつ逃げることぐらいは可能になっているはずだ。
森の中で野外訓練を再開し、一ヶ月。キリが良くていいだろう。
あれおかしいな、三月に立ち上がって四月になってしまった。
いや違う、時を待っていただけなのである。そうなのである。
きちんと区切りでもつけないと、なかなか腰を上げられないのが生来のインドア派。そして思い立ったが吉日、でさっさと勢いをつけて行動しておかないと、また「来月からがんばろう」になるのもヒキコモリ生物の習性である。
《最近はアウトドア派に宗旨替えなさったように見受けられましたが》
「ふ……人間ちょっとやそっとじゃ宗旨替えできぬからこそ、醜い争いが絶えないのだよ……」
《さようですか》
「リアクションが冷たい」
《気のせいです》
先月より空気も身体も温まっていい。それでいいのである。
「しばらくドーミアに行ってないし、一度は顔出しをしといたほうがいいかな? ついでに魔物避けアイテムも買って効果試してみたい」
《そうですね。円滑な近所付き合いのためにはそれが良いと思われます。あいにく辺境伯親子と討伐者の三氏は全員不在のようですが》
「ありゃ、タイミング悪かったか。春って毎年忙しいらしいよね、春祭りあるから。並ぶのに時間かかっちゃうかな?」
《ドーミアへ入る側が混み始めるのは、イシドールを出た隊商が到着する正午手前あたりからです。その前に着くように出発しましょう》
冬の間も定期的に、魔女氏と辺境騎士団の情報交換は続いていた。
私自身はいつも後で報告を聞くばかりで、カルロさん達とは一度も顔を合わせていない。
他人との接触がなくとも生活できていた時代のほうが長く、用がなくとも挨拶をしておくという発想が希薄になっていて、あんまり印象よくないかも? と気付いたのは春になってからだ。後の祭りである。
ウエストバッグに自作の回復薬をたっぷりつめこみ、本当に久々に森を出た。
「――あっ? おまえ!?」
「ヴルルル……」
森の出口で懐かしい顔と再会した。体高二メートルを超える、黒い毛並みの立派な魔馬である。
魔馬は単体でも銀ランク程度の戦闘力を誇るはずだが、こいつはもっと強そうだなと思うのは贔屓目だろうか。
通常、誰かに所有されている魔馬は個体識別登録をされ、耳にその証明のピアスを装着されるらしいのだが、以前この魔馬にはピアスに似せたイヤーカフがつけられていた。
魔馬を捕獲されても足がつきにくいよう、犯罪者が時々使う手らしい。
今、記憶にある普通の馬より肉厚な魔馬の耳にイヤーカフはない。
隷属の首輪と一緒に私が外したからだ。
…………。
なんだろう、じっと見られている。
敵意は感じないけれど……。
「…………えーと、何かな?」
「ヴゥルル……」
すりすり鼻面をこすりつけてきた。
あれ? 懐っこいな?
とても可愛い。
でかいけど可愛い。
……。
じっとこちらを見ている。
瞳孔は縦長なんだが、どうしてか優しそうで可愛らしく見える。
……。
あのね、そんなに見つめても、私はおやつなんて持ってないよ?
……。
「えーと……ウチじゃ飼えないんだけど……」
「グヴゥルル、フスー……」
切なそうにこちらを見ている。
じっとみている。
……。
こら、身体をスリスリこすりつけてくるのはおやめ。
絆されそうになるじゃないか!
私は馬が好きなのだよ!
森じゃ飼えないんだってば!
…… ……。
「あのう、ARKさんよ? ひょっとして私、すっごく懐かれてる? ただの妄想?」
《懐かれておりますね。マスターはこの魔馬を拘束していた敵を撃退したわけですから、ボス認定された可能性もあります》
「ぼ、ボスか。なるほど。魔馬って群れる生き物……もしかして今日、ずっと私が出て来るのを待っててくれたのかな?」
《以前から定期的にこの周辺をうろついておりました》
「早く言ってよ! ……どうしよう、これじゃ心を鬼にして無視しても……」
《この様子では付いて来るでしょうね。所有者のない野生の魔馬は危険ですから、放置すれば討伐対象になりかねません。ドーミアで騎士団の方に相談されてはいかがですか?》
「そうだね。そうしようか」
そう結論づけると、魔馬が「乗れ」という仕草をした。賢い。
ゲームでテイムした魔物に騎乗する要領を思い出し、ジャンプしながら馬の背に両手をつけ、腕をぐっと伸ばして身体を持ち上げる。
すかさずハイキックのように片足を高く上げ、その勢いで身体を半回転させれば、思いのほかストンと乗れた。
手に体重をかけ過ぎないのと、乗るまでに時間をかけないのがコツだ。
「おお……たっか~」
当たり前だが目線の高さが全然違う。
「軽く早足で、街道のほうに行ってもらえる?」
「グルゥオ!」
「わお。言葉が通じてんの?」
《言葉というより、言葉に込められたニュアンスですね。魔馬と雪足鳥には若干の感応力があります。これによって人とも意思の疎通がそこそこ可能になり、共生に適していたようです》
「なるほど~。ってうわ、速っ!」
軽い早足がもの凄く早い。
足音も「カコポコ、ドカッドカッ」ではなく、「ドッドッドッドッドッ……」と鈍い足音だ。
逃げるための蹄ではなく、戦うための鋭い爪があり、足の形状は獅子に似ている。そしてこの足は、遠くまで音を響かせず、潜んで忍び寄るのに適した足でもあった。
口もとから覗くのは、野菜や果物をすり潰す平坦な歯ではなく、獲物に喰らいつくための牙。魔馬は襲われる側ではなく、捕食者なのである。
おそろしく早い時間にドーミアへ着いてしまい、町の門は入る者より出る者で列ができていた。
馬車をひく魔馬や雪足鳥の姿もそこかしこで見られたけれど、比較すれば明らかに風格が違っている。
ジロジロ視線が集中し、塩をかけられたナメクジと化しそうな私は、ささっと降りて門に向かった。
登録していないこの魔馬は町に入れない。すっかり顔見知りになったお喋り好きの受付のおじさんが、「ちょっと待っててな!」と門兵に伝えてくれて、その門兵が騎士団へ伝えてくれたらしい。
「おはようございます、セナ=トーヤ殿」
「あ、おはようございます。あなたは……」
出迎えてくれたのは、セーヴェル騎士団長の腹心の青年だった。
「お話は聞きました。あいにく団長は不在にしておりますので、代わりに私が対応いたしましょう」
「ありがとうございます……」
いや、騎士団長の副官様が直々に対応してくださるだけでも、普通はえらいことだと思うんですが。
さっきから「あれが噂の」とか「あれは何者だ?」なんてヒソヒソ話が、旅の皆さんから聞こえてくるのです。視線が痛いです。
騎士達からはそういう値踏みの視線がないので、却って私をどういうふうに捉えているのか訊くのが怖い。
それはさておき、副官の青年は魔馬の耳に小さな軍馬用のピアスをつけ、所有者を私、保証人を騎士団の名でササッと登録してしまった。
魔道具のピアスは今後、主である私の手でなければ外せない。後から何者が所有権を主張してこようと、よほどはっきりとした証拠でもなければ、私の権利には太刀打ちできないとのこと。
土地建物の所有に関しては、もっと複雑な決まりや手続きが絡んでくる。けれど〝足〟として使う魔馬や雪足鳥に関しては、しっかりとした人物あるいは組織の保証があれば、本身分証を持っていない私でも、正式な所有者として登録できるのだそうな。
ちなみにこのコは「拾ったら懐かれて付いてきました」と言い張ってある。戦って勝利して服従させたんですかとナチュラルに訊くのはやめていただきたい。
もし今後本身分証ができたら、登録の修正が必要になるらしいので、それだけ忘れないように気を付けておこう。今のところ作る予定はないけれど、数年後はわからない。
というか、あれよという間に私の所有物ってことになってしまったのだが、黎明の森では飼えないのだ。
右へ行こうとして左へ進んでしまう迷いの森である。かといって、雨の日も風の日もそのへんで適当に過ごしてなさい、と森の外に放置するのは飼い主として無責任だ。そのあたりはどうすればいい?
「騎士団でお預かりしましょうか?」
「え、いいんですか?」
普通は獣舎レンタルなど受け付けていないけれど、私が領主親子の知人なので特別に、だそうだ。
こ、これがコネの力か……!
自分が恩恵に与れるとなれば素晴らしいものだな。ただし調子に乗って恨みを買わないよう、あくまでもこの件に限定した特例と肝に銘じておかねばなるまい。
有料だがちゃんと軍馬の訓練もつけておいてくれるそうで、飼育も訓練も完全に他人任せになるものの、諦めていた憧れの魔馬を思いがけずゲット。
一応持ってきていた金貨2枚と、売り物の薬を今月分の費用として渡せば、おつりに金貨7枚をもらった。え、銀貨じゃなくて金貨?
どうも私が持ってきた薬は、ゼルシカさんの宣伝のおかげで効き目が確かと広まっている上に、たまたま原料の薬草が最近高騰しているものばかりだったらしい。
あれ、じゃあ私の趣味でいっぱいな薬棚の中身、全放出したらお幾らに…………い、いや、やめておこう。目をつけられるのよくない。
とにかく魔馬ゲットだぜ、ひゃっほう。
ついでにこれ幸いと、初心者なので乗馬のコツを少し教えてもらった。
上級騎士用の馬具を金貨3枚で購入。高級品だが、この魔馬に合うサイズが安物の中にはなかったのだ。
歯の位置や形状が馬とは異なるのでハミはなく、手綱は首に装着したベルトから伸びている。
仮想現実体感型RPGで捕獲した魔獣を乗り回した経験が活きまくり、私自身驚くほど違和感なく乗りこなせた。
魔馬が指示を無視する心配もない。しかも感応力があるせいか、私が「あっちへ行こうかな」と思った瞬間、魔馬もそちらに頭を向けている具合だ。
この感覚は、あのちびっこ達と似ているかもしれない。
意思疎通がかなり楽にできるので、素人に優しい乗り物と言えよう。
「さすがですね、魔馬がこれほどあっさり従うなんて。本当に初心者なのですか? 知能が高いぶん気位も高くて、普通は素人をすんなり乗せたりしないんですよこいつらは」
――と思ったら違った。聞けば、下手くそが乗った場合はろくに動いてくれなかったり、嫌がらせでわざと別方向に歩いて行ったりするらしい。
とりわけ新米騎士が最初にぶつかる試練が、魔馬とのコミュニケーションなのだとか。
「バランスの取り方もお上手ですし、素人には見えませんよ」
「そうですか? 今までは乗る必要が全然なかったもので……自分でもすんなり乗ることができて、びっくりしているぐらいですが」
嘘ではない。まさかゲーム体験がこんなところで活きるとは思いもしなかった。
ちなみに、立派な体躯のこの子はメス。名前はヤナと名付けた。宇宙海賊のお姉様が漆黒のスタイリッシュな戦闘機に〝夜那〟と命名していた、理由はそれだけである。後悔はしていない。
練習に付き合ってくれているのは、副官の青年とその部下達だった。騎士団の運動場を借り、のんびりお喋りしながらいろいろ教えてくれるのはありがたいけれど、私の道楽のためにこんなに時間を割いてもらっていいのだろうか。
「あなたを優先せよと仰せつかっておりますので、むしろお手伝いしなければ叱られてしまいます」
「……そうですか」
「そうです。最近忙しいので、皆にとってもいい息抜きになりますしね」
副官の青年の言に、周りの騎士達もにっこり笑顔になった。私の相手をしていれば堂々とサボれるというわけらしい。
ダシにすんなと思いかけたけど、サボり癖のある連中がこの騎士団でやっていけるはずがないと思い直した。多分、普段は本当に怠けず仕事をしている方々なのだろう。それならば、たまにノンビリしてもバチは当たるまい。
副官殿の名前はセルジュ=ディ=ローラン。ミドルネームの〝ディ〟は、セーヴェル団長と同様、貴族出身だが家を相続する予定のない騎士だ。
長い濃紫の髪を後ろでまとめ、理知的な同色の双眸で見据える姿が、ミステリアスな美貌の騎士様として、ドーミア中の若い女性達の憧れの的になっているらしい。通りすがりの城のメイドさん情報である。
現実に紫髪ってどうなのかなと懐疑的だったけれど、似合う人は似合うんだな。
昔、生まれる前の我が子のDNAをいじって頭髪の色を変える技術が流行り、途中から法で規制されたのを思い出す。
生まれながらに真っ青な髪や真っピンクの髪の子は、親からすればロマンのひとことで片付けられても、一生その色を背負わされる子の側からすればたまったものではない。
まず、典型的な東洋人顔に、果たしてそんな髪色が似合うのか。西洋人でも人によっては微妙な印象になる。
さらに、格闘家を目指す少年の髪がベビーピンクだったり、引っ込み思案な少女の髪がライトグリーンだったりすると、あらゆる意味で悲劇だ。髪だけでなく眉毛その他、全身の体毛がそんな色になるのだから。我が子を芸能人にしたくてハジけた豹柄にしたらばどっこい、〝しょうらいのゆめ〟の作文に〝べんごしになりたいです〟と書かれたらどうする気なのかと。
そういう本来ありえない色をもつ子は、そういう親がいるとレッテルを貼られ、進学や就職などに不利に働いた。ゆえに大人になって貯金し、わざわざ無難な黒や茶色へ色素変換手術を受ける者が多く、やがて法規制に至ったわけである。
ファンタジーっぽいこの世界なら、奇抜な青髪や緑髪の人間は珍しくないかと思いきや、こちらでも普通の人族には存在しない色合いだった。そういう色が発現している者は、他種族との混血だったり先祖返りだったり、特定の属性の魔力に特化していたりと、とにかくどこかが他人とは違っていたりする。
騎士団という器の中には、家督を継げない良家の次男坊三男坊の他に、そんな〝訳あり物件〟も多く受け入れられていて、このローラン殿もそのひとりだった。
主人公だ。ここにも主人公がいる……!
と思いきや、言葉を交わしてみればなんのことはない、ほのかに苦労性の香り漂う、普通に性格のいい好青年だった。
「容姿に勝手なイメージを抱いた猛禽類に群がられては、勝手に幻滅されてしまうそうですよ。モテるだけまだいいだろという意見もあるんですがね」
「私のこれをモテるとは言わん。〝捕捉される〟と言うんだ」
部下の軽口に、ローラン殿は嫌そうに返した。猛禽類とは上手い。
「親しくなるなら、性格も人当たりもいい好人物の方がいいに決まっているでしょうにね」
結構本音でフォローしてみたら、真面目な顔で相槌を打つ者が続出した。
「部下になるなら、上司は好人物がいいに決まっています」
「まさに。私の父は若い頃、上がクズだったせいでさんざんえらい目に遭わされてましたし」
「ああ、グランヴァル侯爵領の騎士だったか。あそこは今も大変と聞くな」
「グランヴァル?」
首を傾げて尋ねれば、忌々しげに「そうです」と返ってきた。
「幼い頃、一家全員でかの地から逃げてきたのですよ。父は騎士だったのですが、上の方に横領の罪をなすりつけられまして」
「それはまた……ご家族は全員無事にこの地へ?」
「はい、幸いにも」
「あの地はいまだ、民の間で別名〝地獄界の入り口〟と呼ばれてますよ」
「地獄界」
治水や治安・防衛費などを遊興につぎこむ領主一家。賄賂で犯罪を見逃す警備兵。命を削っても足りないほどの重税を課される民。
「騎士とは、どんな苦境でも最後まで主君を見捨てず、その場に留まるべき存在――なのですが、そんな父が移住を決意せざるを得ないほど、あの地は酷かったのですよ。父はこちらに着いてから、騎士の名を返上しました。その資格がないからと言って」
「一家全員処刑されるか、飢え死にするかの瀬戸際だったということですし。しょうがないと思うんですがね」
「しかも冤罪で、だろう。おまえの父君が責めを負うべきではないと私も思うぞ。心情的に、己を責めたくなるのもわからんではないがな」
最後にローラン殿がしめくくった。部下の父をいたわりつつ、若干重くなった話題に終了のサインを送る。
若いが出来る上司だった。部下にも慕われているようだし、多少生真面目な傾向はありそうだが、旦那にするならこういうまともな人格者こそが最適だろう。
なのに猛禽類達は、「なんか思ったのと違う」という理由で、美味しい獲物を毎回逃しているわけだ。もったいない。
他人を虫けらのようにあしらったり冷たい瞳で睥睨したりしないところが不満って、何がどうしてそうなるのだろうか。女の人ってよくわからないよね。
≪マスター?≫
≪なにかな?≫
小鳥さんよ、何故そんな目で見るのかな?




