07
「……島国はおそろしいです……」
「そうよ……それが島国なのよ」
もういい加減寝てよぉ~……!
大体なんで私を挟んで同じベッドに入ってるの!
今日は色々あって疲れてるのにぃー!!
で。今のこの状況だけど……。
お風呂から上がって、さぁ寝よう! って時になってから、モルンとフルーがずっと話をしてるんだよ。
しかも私を挟んでね!
なんか、フルーのお母さんが島国に行ってた時の話をモルンにも教えたいみたいで、数年冒険者をやってた時の話とか、都市伝説系の話で、悪い侯爵をぶっ飛ばして颯爽と去っていった悪魔の女性の話だったりをずっとしてるの。
「でもいつか行ってみたいです」
そりゃあもう盛り上がる盛り上がる。
あと数時間したら日が昇るんじゃないかって時間なのにさ……。
このお元気爆弾どもめ!
「いいわね! お母さんが見てきた世界を、私も見てみたいわ!」
こんなことなら一人部屋がよかったよぉ~。
「でもボクは大陸から出たことないから、なんだかドキドキするです」
何としても二人の侵入を拒むべきだったんだ。
「誰にだって初めてはあるわ。私だってずっと大陸で暮らしてきたもの」
まさかこんな弊害があったなんて……。
「フルーもずっと大陸だったです?」
…………。
「そうよ。あんたに初めてあった頃にしていた旅は、大陸内限定だったも――」
「――ぬぁああああああ~! うるさあああああい! いつまで話してんの! そんなに話したいなら別の部屋でやって!!」
はぁ……はぁ……。
「――ひっ!? ……ごめんなさいです」
「なによ……初めてのお泊まり会なんだからいいじゃない……なんでそんなに怒るのよ」
「私は疲れてるって言ったでしょ! そんなに話したいなら、モルンかフルーの部屋でやって! 私は寝たいの!」
「「…………」」
うっ……言い過ぎたかな……。
眠気のせいで口調がきつくなっちゃったしなぁ……。
まあ、二人の気持ちも少しは分かるけどさ。
何十年も誤解してて、やっとちゃんとした友達になれたんだから嬉しいんだろうけどさ。
ああもう。
「あんたには……感謝してるのよ……」
ん? フルーは急にどうしたの?
「ボクもです」
モルンまで。
この二人は脈絡なく話題を変えるから、ついていくのが大変なんだよね。
「えっと……急にどうしたのさ?」
「この部屋に集まった理由よ」
んん? 感謝してたから睡眠を邪魔してたってこと?
眠くて頭が回んないよ……。
「ナナさんが来てくれたことも。ボクの友達になってくれたことも。フルーと仲良くなれたのも。いっぱい感謝してるです」
確信に向かって遠くから少しづつアプローチしてくる感じだから回りくどいなぁ……。
瞼は重いし寝ぼけた頭では察するのが難しいよ。
「……つまり?」
「「私達はナナ(さん)が大好きってことよ(です)!」」
…………!?
わかんないよ~……この二人はどうして通じ合ってるの~?
「え~っと、んん?」
「察しが悪いのがナナの欠点よね! しょうがないわね」
そっかぁ、私の察しが悪かったのかぁ……そうかそうか。
「私達のことをあんたに知って欲しかったのよ。ナナは自分のことを覚えてないって言うから、まずは私達の事をね!」
「ナナさんはボク達に興味ないです?」
あー、そういうことか。
二人なりに私との距離を詰めようとしてくれてたんだ。
意外とそういうことも考えてくれてたんだなぁ。
いやいや。
それにしたってさ。
睡眠学習的に語ってくれなくてもいいじゃん! 眠れないじゃん!
「興味ないわけじゃないよ。私は……」
……私はなぁ。
「眠いんだよ! お願いだから明日の朝聞かせて!!」
「「――!?」」
絶句しておる、お二人とも絶句しておるよ。
どうだ、参ったか!
「分かったです……じゃあお話の続きは明日にするです」
「仕方ないわね、じゃあ子守唄を歌ってあげるわ」
「なんでや!」
なんでなんや!
この子はいったいどんな教育を受けてきたの!
保護者を呼べ! 断固抗議してやる!
「知らないの? 寝付きが悪い子には、こうしてあげるものなのよ?」
「……誰のせいだと思ってんのさ」
「コホン。あ~、あ~♪ です」
「そこ! 発声練習しない!」
この後、なんとか二人を説得して、やっと眠る気になってくれたみたい。
なんだけど、二人して私の腕を抱きしめるように身を寄せてきた。
まったくもう、しょうがないなあ。
子供が出来たらこんな感じなのかな、なんて想像してみたり――