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殺すなら、早めの方が良い  作者: 白川れもん
7/7

シンゴウキの、おしごと②

お待たせ致しました。

「なに、これ」


 私は今、セーラー服を着て、仁王立ちしている。

青を基調としたセーラー服で、アイちゃんが興奮しながら写真を撮りまくっている……盗撮じゃね?


「ねえ、これなに」


 写真を撮り続けているアイちゃんにドン引きしながら聞く。

 突然渡されて、着てみたら、コスプレみたいなセーラー服。私、成人してもう四年目ですけど。なんならもうすぐ五年目になりますけど。


「皆はスーツなのに、どうして私だけセーラー服?」


「そりゃ、お前。…………の、趣味だろ」


 私の問いに答えたのは黄色くん。

目線で興奮中の実兄を冷めた目で指している。


 シンゴウキの仕事服。

興奮しているアイちゃんは、青のYシャツに、皆お揃い黒のスーツ。

黄色くんは黄色のYシャツを腕まくりして、ジャケットは無し。

赤色くんは赤色のYシャツに黒いベスト。皆、とても殺し屋っぽくて似合っている。


「私は、何故? 一人だけ学生みたいじゃん」


「雪は何を着ても可愛いよ。青いセーラー服、素晴らしい。特注で作ったんだ。俺と同じ、青色!」


 落ち着きを取り戻したアイちゃんは、ドヤ顔を見せるがセーラー服は特注で作る物じゃない。つか、よく分かったな、私のサイズ。びっくりするほどピッタリ。

気持ち悪いくらいだ。


「ねえ、青兄、本当に雪ちゃんを連れて行くの?」


 赤色くんがアイちゃんに近づく。アイちゃんに近づく、ということは、まあ、私にも近づく、ということ。

 その表情は、不安げだ。


「そうだよ、アオ兄。セツちゃん、連れて行って大丈夫?」


 黄色くんもこっちに来る。

シンゴウキに囲まれて、もう電信柱に囲まれているみたいだ。


「…………二人共、俺の知らない所で、雪と仲良くなったんだね。雪がいて、自分達が大丈夫か、の心配なら分かるけど、お前達の言い方は、雪を心配している。義理とはいえ、姉弟愛は素晴らしい。けど、度を越えたら、分かるね?」


 何を思ったのか、アイちゃんの返答は、完全に二人の問い掛けを無視している。

そして二人を見る目が、ホストクラブで黄色くんを蹴り飛ばした時に似ている。


「……はい」


 それっきり二人は口を閉ざした。

いやいや、良いの? ちゃんとした答え貰ってないよ?

私が心配だったんじゃないの? とんだ恐怖政治だ。


「怖いの? 雪。大丈夫だよ。俺が守ってあげる」


 ふわり、と花が咲いたかの様に私を包むけど、恐怖してるのは仕事じゃなくてアイちゃんだからね。





 そして着いた、戦場。

え、そこまで危険じゃない、的なこと言わなかったっけ? アイちゃん。

 目の前にあるのは、でかでかと書かれた「柴田組」の文字。

完全にヤの付く、来ちゃいけない場所だよ。

絶対怖い人しかいないなら、ここ!


 帰りたい。


 三兄弟はそれぞれ武器を出した。

アイちゃんは拳銃、黄色くんはメリケンサック、赤色くんはやけに長細い針。

 そんなんで殺せるの? 私もナイフを装備する。


 シンゴウキはそれぞれ目を合わせると、アイちゃんが私の肩を抱いた。

 あ、いつものアイちゃんの匂い。そう思った瞬間、黄色くんがドアを蹴り飛ばした。


 そこからは、あまりの早さに、私と組の者達は、唖然だ。

黄色くんが次々と殴り殺して、奥へ奥へと進んでいく。

赤色くんは殺す気あるのか、って言うくらい、針で人を刺すのでは無く、かすめていく。

赤色くんがかすめた三秒後くらいに、唸り、もがき、苦しみながら倒れていく。

 そう、様は、ドミノ倒しの勢いで、バッタバッタ倒れていくのだ。人が。


 口を開いて、その光景を眺めていると、アイちゃんが死体の上へ。


「さあ、雪、おいで。汚れちゃうから、ゆっくり行こう」


 さながら王子様にでもなったかの如く、手を私へ差し出す。とても良いスマイルで。

 大きな手に重ねると、ゆっくりと私を誘導しつつ、奥へと進む。

その間にも、例の二人は例のやり方で、返り血を浴びまくっている。

 私とアイちゃんはただ死体の上を歩いているだけ。


何をしているのだろうか、私は。


 奥へ着いた頃には、もう全てが終わっていた。

満足げなアイちゃんと、息を切らしている二人。


「終わったぜ」「終わったね」「帰ろうか、雪」



 いや、本当に何しに来たの、私?

ただ死体を踏みに来たんじゃ、ないのだよ!!


 てか、あの二人は何を心配していたの?

どこにも危険な要素なんて無いじゃないか。

ただセーラー服着て、アイちゃん興奮させただけだよ。


 ため息を、盛大につきながら、再び死体の上を歩いた。








 その頃の、二人。赤、黄コンビは後ろから、雪と蒼生に視線を向けていた。


「なあ、セツちゃんの、あの死体に免疫がある感じ、何? オレの思ってたのと違うんだけど」


「……僕も。普通の女の子だと思っていたけど、違うのかもしれない」


「ならよ、何でこんな簡単な仕事に連れてきたんだ? アオ兄は。知ってるんだろ?」


「青兄は頭良いから。たぶん、何か考えているんだよ」


「…………セツちゃん、死んだりしないよな?」


「それは無いと思うよ。だって、アイちゃんって呼ばせてるくらいだから」


「ああ、そうだった。じゃ、やっぱり……」


「……うん」


 可哀想。哀れみの目を二人から向けられていることを、雪は知らない。




 情報を収集するどころか、恐怖だけが残った。


「私、逃げられるかな。あんな、化け物だった」




 その日の脱出計画書は広げられなかった。


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