第ゼロ話 夏休みの自由研究
私は職員室に矢満田君が入ってきたのを確認して、彼の宿題を机に出した。
「ヤマダ君、どうして呼び出されたかわかるかい?」
「はい、僕が宿題の朝顔の観察日記を途中で止めたことです。枯れてしまったので書かなくていいと思って」
彼は申し訳なさそうに言うが違う。
「いや、今年は猛暑だったから他の子も枯らしてしまったから、そこはいい。この自由研究の結果は君が書いたのかい?」
「はい! AIについて調べて、どんな未来になるのか想像していくつかの小説にしました」
目の前の坊主頭の少年は満面の笑みを浮かべてハキハキと答える。しかし、私は誰かがやったと疑って呼び出したのだ。
「そのAIに頼んで作っていないかい?」
「お父さんに見てもらったけど、手伝いじゃないです」
「そうか、自分で書いたならここで読み上げてみて」
「え? 長いですよ?」
「構わないから」
「はい、じゃ読みます」
AI問題と世間は騒がしいが、こんなところにもAI使用を疑うなんて嫌な世の中だ。
以前は親や宿題代行業者が代わりにやったのなら、ある程度は見分けはついたものだが、時代は変わる。
実は既にクラスの何人かがAIに丸投げしたとわかる雑な絵を描いてきたので、それぞれ保護者共々注意したばかりだ。
今回の矢満田君のも小学生にしては微妙だ。丸投げしたのなら、読めなかったりつかえたりするはずだ。
こうして彼の朗読が始まった。




