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ヘビに転生した俺は、最弱ステータスからスキル補食と進化しながら迷宮を攻略する  作者: 迫力くん
目覚め

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第008話「ボス研究」


 8日目の朝、俺は北西の通路の入口から10メートル手前の地点に腹ばいになっていた。


 目的は調査だ。


 昨日の大型百足を倒せる気は、今の俺にはしない。体長1メートル超の多脚生物を、毒牙Lv2の30センチ蛇がどうにかできるかと言われれば、できない。数字の問題ではなく、戦術の問題だ。あのサイズの相手の外骨格に牙が通るかどうか、毒がどの速度で効くか、何か弱点はあるか——何も分かっていない状態で突っ込むのは、ゲームで言えばボスのHPゲージを確認せずに正面から殴りかかるプレイスタイルだ。


 トロフィーコンプリート狙いの縛りプレイ勢じゃないんだから、そんな真似はしない。


 まず知る。それから考える。


   ◇ ◇ ◇


 10メートルという距離は、俺の熱感知の認識範囲(2メートル)では届かない。でも振動感知がある。


 顎を地面に押し当てた。


 地面を通じて振動が伝わってくる——大型熱源の動きが、微細な振動として足元から届く。1ステップごとの重さが全部違う生き物と比べると、大型百足のそれは均一で、リズムが一定だ。脚が多い分、歩行振動が連続的に滑らかに続く。


 動いている。


 俺が来る前から動いていたのか、俺の接近を察知して動き始めたのか——判断はできない。でも方向は確認できた。北西の通路の中を、奥から手前に向かって移動している。こちらに来ている。


 距離を追加で5メートル引いた。


 大型百足が通路の出口付近まで来た——熱感知で、かろうじて輪郭が見えた。体が通路いっぱいに広がっている。多脚が地面を叩く振動が明確になった。


 5秒。10秒。


 向きを変えた。今度は奥に戻り始めた。


 俺は動かなかった。


 往復している。これはパトロールだ。一定の経路を行き来する行動パターン——MMOのフィールドボスにある「リーシュ範囲から出ると戻る」仕様に近い。縄張りが設定されていて、その範囲内を定期的に巡回している。


 面白い。これは使える情報だ。


   ◇ ◇ ◇


 30分ほど、その場で大型百足の振動を追い続けた。


 パトロール周期はざっと10〜15分——往復で一サイクルだ。通路の奥から入口付近まで来て、戻る。その繰り返し。入口付近まで来ても、外には出てこない。縄張りの境界が通路出口あたりにあるらしい。


 三叉路のエリア——東、北東の空間——には入ってこない。大型百足の縄張りは北西の通路とその先に限定されている可能性が高い。


 一つ分かった。昨日の岩トカゲや百足を狩ったエリアは、大型百足の縄張り外だ。あのエリアは比較的安全に使える。


 振動を観察し続けていると、何かが変わった。


 振動の感知精度が上がっている——気のせいかもしれない。でも30分前と今では、地面から拾える情報の解像度が違う。大型百足の脚の1本1本が立てる振動が、以前より細かく分かる気がする。


 通知が来た。


『振動感知がLv2になりました』


 あ、そうか。スキルだったのか。


 転生してから毎日やっていた「顎を地面に押し当てて振動を確認する」行為——あれが振動感知というスキルとして習熟していたらしい。使いすぎてもはや無意識でやっていたから、スキルとして認識していなかった。


 そして今、Lv2になった。


 確かに、先ほどから感知精度が上がっている。大型百足の位置が、以前より正確に把握できる。距離の感覚も少し伸びた気がする——10メートル先の振動が、以前より鮮明に拾える。


――――――――――――――――――――

【ステータス】

種族:仔蛇

レベル:11

HP:26/26 MP:13/13

攻撃力:12 防御力:11 素早さ:14 知力:11

魔力適性:なし


【スキル】

熱感知 Lv1、毒牙 Lv2、振動感知 Lv2


認識範囲:2m

次の進化まで:55%

――――――――――――――――――――


 スキル欄に「振動感知 Lv2」が追加されていた。


 無意識でやっていたことがシステムに拾われているのか——ゲームの習熟度型スキルシステムはこういう仕様のことが多い。「剣を振り続ければ剣士スキルが上がる」的な。蛇として生きている以上、地面との接触は常にあるわけで、振動感知は勝手に鍛えられていたらしい。


 これは良い発見だ。


   ◇ ◇ ◇


 大型百足の調査を終えて、今日の残り時間を北東エリアの狩りに使った。


 昨日百足を3匹倒した空間——今日は奥にさらに通路があることを確認していなかったので、今日はその先まで入ってみた。


 10メートルほど奥に進むと、また空間があった。


 先客がいた。


 岩トカゲが1匹と、洞窟蜘蛛が1匹。


 2種類が同じ空間に共存している——というより、岩トカゲが壁の苔を食んでいる側に、蜘蛛がいて、互いに干渉していない。食べ物が被らないから、棲み分けができているらしい。


 どちらも俺を見た。


 岩トカゲは逃げる素振りを見せた——前に会った個体と違って、警戒心が強い。俺の臭いが「捕食者」として認識されているのかもしれない。昨日同種を2匹食べているから、岩トカゲ社会に俺の情報が広まっていたりするのだろうか。


 蜘蛛は昨日の個体と違い、すぐに糸を出し始めた——壁と地面の間に薄い膜を作ろうとしている。昨日の個体は糸を飛ばしてきたが、こいつは先に地面に罠を張ろうとしている。タイプが違う。


 罠を張られる前に動いた。


 蜘蛛に向かって直進——糸が完成する前の段階で距離を詰めた。蜘蛛が糸の射出体勢に切り替えた——昨日と同じパターンだ。射出後の硬直を待って、腹側に噛みついた。


 蜘蛛が暴れた。脚が体に絡んだ——HP-5。毒を流し込んで、離れた。


 岩トカゲが逃げようとした。岩トカゲは素早さが高い——逃走ルートに先回りする必要がある。通路の入口方向に先に体を向けた。逃げる方向を塞いだ。


 岩トカゲが方向を変えた。壁沿いに回り込もうとした。それに合わせて体を動かした。


 正面から向き合う形になった。岩トカゲが尻尾を振って威嚇した。俺は動かなかった。


 にらみ合いが5秒続いた。蜘蛛の動きが鈍くなってきた——毒が回り始めている。岩トカゲはそれを見ていた。


 岩トカゲが動いた。俺に向かってではなく、壁の穴の方向に——脱出口を見つけたらしい。走った。


 追いかけた。穴の入口で追いついた。後脚に噛みついた。


 岩トカゲが暴れた——HP-7。それでも離さなかった。毒を流した。


 90秒で止まった。


 蜘蛛も止まっていた。


 2匹食べた。


 通知が来た。


『Lv12になりました』


 HPとMPが全回復した。進化が63%になっていた。


   ◇ ◇ ◇


 池に戻る道で、今日の収穫を整理した。


 振動感知がLv2になった。これは思ったより大きい——大型百足のパトロールを把握できるようになったのは、Lv2の感知精度があってこそだ。Lv1のままだったら今日の調査はできていなかったかもしれない。


 そして大型百足の行動パターンを掴んだ。縄張りの境界、パトロール周期、どこまで出てくるか。これは戦術を立てる上で欠かせない情報だ。倒せる見込みは今のところないが、回避する方法は分かった。


 あとは——強くなるだけだ。


 池の縁で水生甲虫を1匹食べた。


 65%。


 まだ道半ばだが、毎日少しずつ、確実に近づいている。



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