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最弱ステータスでヘビに転生した俺は、スキル補食と進化をしながら迷宮を攻略する  作者: 迫力くん


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第058話「一音」

 拠点を出た。結晶域に向かう。


 三叉路を左。爪痕の通路を通過。切断面のある区画を抜ける。壁面の結晶が増え始めた。


 結晶域の境界で止まった。ここから先は結晶が密集する。奥に入るほど結晶共鳴の効果が増す。戦うなら、ここだ。


 壁面に張りついた。反響定位を1発だけ飛ばした。


 像が返ってきた。結晶の林の奥、推定40メートル先。大きな影が結晶の合間に静止している。擬態。前回と同じ位置で、動かずに獲物を待っている。


 反響定位を切った。


 暗闇が戻った。


   ◇ ◇ ◇


 静寂。


 呼吸を浅くした。壁面に張りついたまま動かない。振動感知だけが世界を伝えている。自分の心拍が壁面を微かに揺らしている。それ以外、何も聞こえない。


 1分が過ぎた。2分。


 ———こつ。


 結晶が鳴った。遠い。クリスタルストーカーが結晶を叩いた。探査音。共鳴が数本の結晶に伝わったが、境界のこちら側には届かない。結晶の密度が足りない。


 反応しなかった。音を出さない。


 また静寂。


 向こうも待っている。音で獲物を見つける捕食者。獲物が音を出さなければ、見つけられない。


 俺の方から動く。


 壁面に鱗を擦りつけた。小さな音。石の壁に鱗が擦れる、乾いた音が通路に響いた。


 鱗を離して、壁走りで3メートル横に移動した。無音で壁面を這い、別の位置に張りつく。そこで止まった。


 振動感知が壁面の変化を拾った。遠くで、何かが動き始めた。重い。壁面を伝って、低い振動が近づいてくる。


 熱感知を合わせた。結晶域の方角に、大きな熱源が移動している。境界に向かっている。


 来た。


 熱源が近づく。20メートル。15メートル。振動も大きくなる。壁面と床の両方から響いてくる。


 10メートルで、止まった。


 静寂。


 向こうは境界の手前で止まっている。結晶域の端。まだ結晶が周囲にある位置だ。ここなら結晶共鳴が使える。自分の有利な領域を完全には離れない。


 互いに黙って、互いの音を待っている。安全なのは今だけで、次に音が鳴った瞬間に全てが決まる。


 反響撃が来た。


 Lv2の音波が通路を走った。俺が鱗を擦った位置に向かって、空気を引き裂くような衝撃波が叩きつけられた。壁面が砕けた。石の破片が飛ぶ。


 3メートル横にいる俺には、減衰した衝撃しか届かない。鱗硬化で受け止めた。


 反響撃の発射音が、壁面を伝わってきた。方角と距離が振動感知に刻まれた。右前方、8メートル。


 壁走りで突進した。全速。音を消す余裕はない。鱗が壁面を叩く音が通路に響いた。


 熱感知に熱源が急速に大きくなる。距離が縮まっている。


 クリスタルストーカーが動いた。後退しようとしている。結晶域の奥に逃げ込もうとする。


 逃がさない。壁走りLv3の速度で詰めた。


 5メートル。3メートル。


 結晶を叩く音。結晶共鳴が発動した。周囲の結晶が震え始めた。だが境界の端では結晶が少ない。共鳴は2つか3つの偽反響しか作れない。しかも俺は反響定位を使っていない。偽の像を作っても、見ている者がいなければ意味がない。


 熱源が目の前にある。


 飛びついた。


 頭部が結晶質の外殻に触れた。硬い。冷たい。全身が結晶で覆われている。


 締め付けLv2で巻きついた。胴体を結晶の体に巻く。結晶甲より硬い外殻を、圧で包み込む。砕けはしない。だが拘束はできる。


 クリスタルストーカーの前肢が動いた。鎌状の爪が鱗を裂いた。鱗硬化の上から切り込んでくる。血が出た。構わず締め付けの圧を上げた。


 反響撃が来た。


 至近距離。俺の巻きついた体の中で、音が炸裂した。


 内臓が揺れた。視界が白く飛んだ。頭蓋の中で音が暴れている。鱗硬化では防げない。HPが一気に削れた。


 離すな。


 締め付けの圧を維持した。筋肉が痙攣しかけるのを押さえつけた。ここで離したら2発目が来る。距離を取られたら、また結晶域に逃げられる。


 外殻粉砕Lv2。頭部を結晶の外殻に叩きつけた。密着状態での一撃。ひびが放射状に走った。結晶質の外殻に、蜘蛛の巣状の亀裂が広がる。


 毒霧を吐いた。距離ゼロ。亀裂の中に毒の粒子が流れ込んだ。外殻の下の肉に直接毒が届く。


 クリスタルストーカーが暴れた。前肢の鎌が俺の胴体を3回切った。血が流れた。だが動きが鈍り始めている。毒が回っている。


 2発目の反響撃が体内で震えた。だが1発目より弱い。締め付けが音の出口を潰している。圧で歪んだ外殻が共鳴を殺している。


 外殻粉砕をもう1発。同じ亀裂に叩き込んだ。結晶が砕けた。拳大の穴が外殻に開いた。


 穴に毒牙を突き込んだ。


 直接注入。毒が体内に流れ込む。


 クリスタルストーカーの動きが止まった。前肢が垂れた。結晶の体が、締め付けの中で重くなった。


 食った。


   ◇ ◇ ◇


 通知が連続で鳴った。


『レベルが上がりました Lv7 → Lv9』


 HPが全回復した。切り傷の痛みが消える。反響撃で削られた内部のダメージも、レベルアップの全回復で帳消しになった。


『捕食継承により 反響撃 Lv1 を習得しました』


 反響撃。


 散々殴られた技を、食って奪った。……最高の仕返しだろ。


 音を攻撃に変えるスキル。この層で2回食らって、臓腑を揺さぶられて、鱗硬化では防げないと叩き込まれたあの攻撃を、今度は俺が使える。


 試しに壁面に向けて反響撃Lv1を放った。低い衝撃音が壁面に当たり、石の表面にひびが入った。Lv1。クリスタルストーカーのLv2には届かないが、音波攻撃の基本形は手に入った。


 反響定位で音を飛ばして「見る」。反響撃で音を飛ばして「殴る」。同じ音。出力が違うだけだ。


――――――――――――――――――――

種族:沼喰大蛇

Lv:9

HP:112 / MP:36

攻撃力:52 / 防御力:79

素早さ:28 / 知力:29

【スキル】

 捕食継承 Lv1 / 毒牙 Lv3 / 締め付け Lv2

 鱗硬化 Lv2 / 壁走り Lv3 / 振動感知 Lv3

 熱感知 Lv2 / 外殻粉砕 Lv2 / 毒液圧縮 Lv1

 酸耐性 Lv1 / 粘着無効 Lv1 / 毒霧 Lv1

 鱗弾き Lv1 / 急旋回 Lv1 / 嗅覚強化 Lv1

 反響定位 Lv2 / 鑑定 Lv2 / 反響撃 Lv1

次の進化まで:46%

――――――――――――――――――――


 防御力79。攻撃力52。Lv9。ロッククローラーのLv7を数値で超えた。


 だが数値より大きいのは、反響撃の獲得だ。石殻Lv3で物理を弾く相手に、音なら通る。この層の支配ルールが、ようやく俺の側にも回ってきた。


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