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ヘビに転生した俺は、最弱ステータスからスキル補食と進化しながら迷宮を攻略する  作者: 迫力くん
目覚め

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第005話 「毒沼の隣人」


 5日目の朝、俺はいつも通り池の縁で目を覚ました。


 いつも通り——と言えるほど習慣が固まっていることに、少し驚く。転生4日でルーティンが出来上がっている。起床、周囲確認、水生甲虫を2〜3匹狩る、百足が水を飲みに来たら追加で仕留める、岩の隙間に戻って消化する。以上。


 デイリークエストだ。ログインしてこなすだけの作業。


 楽しくないわけではない。レベルが上がる、毒が強くなる、進化が近づく。数字が動く限りゲーマーには刺激がある。ただ、同じマップを同じ動線で動き続けるのは、そろそろ限界がある。


 今日は外に出る、と決めた。


   ◇ ◇ ◇


 池から伸びる通路は3本ある。


 入ってきた南の通路(最初に使った道)。北に伸びる細い通路(まだ入っていない)。そして東の壁に開いた横長の隙間(体が通れるかどうかギリギリのサイズ)。


 消去法で北の通路を選んだ。東の隙間は体が引っかかった場合に面倒だし、南はもう熟知している。北の未探索区域へ。


 蛇的に言えば「脚がないので段差は嫌い」なのだが、北の通路は緩やかな下り傾斜だった。脚がなくても問題ない。腹で地面を感じながら、ゆっくり進む。


 50センチ、1メートル、2メートル。


 通路が広がった。


   ◇ ◇ ◇


 広い空間ではなかった。ただ、天井が少し高い。4メートル四方ほどの小さな部屋のような空間で、壁に苔が厚く張り付いている。床は湿っていて、水が薄く流れている——先の池から染み出してきているのかもしれない。


 そして、岩トカゲがいた。


 体長20センチほど。4本脚。鱗の質感が甲虫とも百足とも違う——鱗だ、ちゃんとした鱗。同じ爬虫類の仲間か、と思った瞬間、なんとなく親近感が湧いて、次の瞬間「いやお前も俺を食おうとするだろ」と自己修正した。


 岩トカゲはこちらに気づいた。体を固めた。尻尾がゆっくり揺れた。


 俺は止まった。


 どちらが先に動くか、という間が5秒ほど続いた。RPGで言えばエンカウント直後の硬直フェーズだ。お互いに「これ戦うべき?」という計算をしているのがなんとなく分かる。


 岩トカゲが先に動いた。俺の方向ではなく、壁沿いに横移動した。逃げる気はなさそうだが、距離を保とうとしている。警戒しているが戦意はない——今のところは。


 俺も動いた。岩トカゲの動きと垂直に、空間の中央寄りへ。


   ◇ ◇ ◇


 5分後、岩トカゲは壁の苔を舐め始めた。


 俺はそれを眺めていた。


 苔を食う生き物か。草食系か。なるほど、だから警戒はするが積極的に攻撃はしてこない。縄張りを脅かさない限りは共存できるタイプかもしれない。


 俺は水生甲虫を食うし、百足を食う。岩トカゲは苔を食う。食べ物が被らなければ、縄張り争いにはならない。


 問題は、俺が岩トカゲを食べようとした場合だ。


 ……食べる必要はあるか?


 正直、今の池の環境で食料には困っていない。水生甲虫は安定して供給されているし、百足も定期的に来る。岩トカゲを無理に狩る理由はない。


 効率的な狩り場があるのにわざわざ別マップに行く必要はない。ただ、岩トカゲが将来的に障害になる可能性は排除できない。体が大きくなればなるほど、縄張りを巡る衝突は避けられなくなる。


 今は放置。強くなってから考える。


 それが今日の結論だった。


   ◇ ◇ ◇


 その後、空間の壁を一周した。


 北壁にさらに続く通路があった。入口は狭いが、体長30センチの今の俺なら通れる。風が来ている——奥に空間がある証拠だ。


 だが今日はここまでにした。


 理由がある。この空間の東側の壁に、俺の臭いとは別の有機臭が残っていた。舌先で確認すると、かなり最近のものだ。何かがここを通った。何かが住んでいるか、定期的に来ている。体臭の成分は俺にはまだ種類の判別ができないが、規模から推測するに——小型ではない。


 未確認の中型か大型がいる可能性。それを知らずに奥へ進むのは悪手だ。


 今日の探索成果をまとめると:北通路の先に新しい空間があること、そこに岩トカゲがいること(食物連鎖の競合なし)、壁に未確認生物の臭いの痕跡があること。


 収穫はある。


   ◇ ◇ ◇


 池に戻る途中、小型の百足と鉢合わせした。


 15センチほど。昨日より小さい。水を飲みに来る途中だったらしく、こちらに気づいて止まった。


 昨日は同サイズに苦戦した覚えがある。今日は——毒牙Lv2になっている。


 速攻で噛んだ。


 10秒で止まった。Lv2になってからの最短タイムだ。


 食べながら、ふと思った。


 最初の日に始めて小型百足を倒した時、あれほど必死だったのに。今は「速攻で噛んだ。10秒で止まった。食べた。」で全部だ。序盤の死にゲー敵が中盤では雑魚扱いになる感覚——経験したことのある人間なら分かるはずだ。


 俺は今、その過程にいる。


 通知が来た。


『Lv9になりました』


 HPとMPが全回復した。


 進化まで、また少し近づいた。


――――――――――――――――――――

【ステータス】

種族:仔蛇

レベル:9

HP:24/24 MP:12/12

攻撃力:11 防御力:10 素早さ:13 知力:10

魔力適性:なし


【スキル】

熱感知 Lv1、毒牙 Lv2


次の進化まで:37%

――――――――――――――――――――


 Lv9。着実に上がっている。


 それよりも今日の収穫で頭にあるのは、北の空間の臭いだ。あの未確認生物が何なのかを確認しないまま奥に進むのは、リスクが高い。


 明日は、もう少し情報を集める。


 池の縁に体を収めた。水面が静かに揺れている。


 お前たちも分かってるだろうが、俺はいずれここを出ていく。この池は仮の拠点であって、ゴールじゃない。


 水生甲虫が水底を横切っていった。気にする様子もない。


 まあ、当然か。蛇の独白を聞く耳なんか、甲虫にはない。

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