第004話「水場は、狩り場になる」
主回廊の奥は、まだ早い。
昨日そう決めた。
だったら今日は、池で確実に積む。
池は使える。
ただし、水の中へそのまま突っ込むと危ない。
昨日それも分かった。水の中で虫を追うと、俺の動きはかなり遅くなる。向こうは脚で泳ぐ。こっちは腹で水を押すだけだ。
追いかけたら負ける。
なら、上がってきたところを噛む。
今日は、その狩り方でちゃんと数を取れるようにする。
◇ ◇ ◇
池の縁には、虫が浮きやすい場所がいくつかある。
岩が水面ぎりぎりまで出ている場所。
苔が厚くて虫が集まる場所。
寝床に近い側の岸。
使うなら、苔が厚い場所だ。
餌になる苔があるせいで、水生甲虫がよく浮いてくる。俺はその横の岩陰に体を沈め、顔だけ水面へ近づけた。
1匹目が来る。
虫が苔へ口をつけた瞬間、頭を水へ入れた。
噛む。
硬い殻に当たった。
滑る。
失敗。
すぐ離れて、池の外へ戻る。
追わない。
水の中で追うと、こっちが負ける。
次は横からだ。
◇ ◇ ◇
2匹目は、水面近くで体を傾けた時を狙った。
横腹の殻と殻の隙間へ牙を入れる。
今度は刺さった。
毒を流す。
すぐ水から引き上げる。虫が暴れる前に、石の上へずらす。水の中で暴れられるより、陸へ出した方が動きは鈍い。
虫の脚がばたつく。
俺は距離を取って待った。
しばらくして、動きが止まる。
食う。
水面で噛む。
すぐ石の上へ引きずる。
毒が回るまで待つ。
これなら、池の虫を続けて狩れる。
◇ ◇ ◇
同じやり方で、さらに2匹狩った。
3匹目で、はっきり分かった。
毒の回りが速い。
最初より、待つ時間が短い。
虫の大きさはほとんど同じだ。
俺の毒が強くなっている。
そう思った直後、通知が来た。
『毒牙がLv2になりました』
毒牙Lv2。
うお、来た。
これはでかい。
今まで怖かったのは、噛んだあとだ。相手が暴れる。別の敵が来る。水の中へ逃げられる。その全部が、毒が回るまでの時間に起きる。
その待ち時間が短くなる。
毒牙Lv2は、ただ数字が上がっただけじゃない。
狩りの失敗時間が減る。
今の俺には、それがそのまま命に関わる。
◇ ◇ ◇
調子に乗って池の虫を狩り続ける。
水生甲虫。
小さい百足。
苔の裏にいた丸い虫。
全部がうまくいったわけではない。丸い虫には殻で牙を弾かれたし、小さい百足にはまた胴を噛まれた。
それでも、昨日より早く倒せる。
毒が強くなるだけで、同じ相手への余裕がかなり違う。
夕方くらいの感覚になったところで、俺は寝床の前へ戻ってステータスを開いた。
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【ステータス】
種族:仔蛇
レベル:8
HP:24/24 MP:11/11
攻撃力:10 防御力:9 素早さ:12 知力:9
魔力適性:なし
【スキル】
熱感知 Lv1、毒牙 Lv2
次の進化まで:30%
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レベル8。
HP24。かなり増えた。池の虫に噛まれたくらいで、すぐ終わる数字じゃない。
攻撃力も防御力も伸びている。池の虫相手なら、前よりずっと押し切りやすい。
素早さ12もいい。水際で頭を入れる速さが、昨日より明らかに合わせやすい。
進化率は30%まで来た。
3割だ。
最初の進化まで、もう3割まで来た。
◇ ◇ ◇
問題は、池が俺だけのものではないことだ。
池の反対側を回った時、湿った泥の上に跡が残っていた。
虫の脚跡ではない。
四つ足の跡だ。
前脚と後脚があり、指の跡もある。大きさは俺の頭より少し小さいくらいだが、歩幅が広い。
俺より大きい四足の生き物が、ここで水を飲んでいる。
足跡は新しい。水で崩れていないし、泥の縁もまだ尖っている。
そいつは、今日か昨日ここへ来た。
池を使うなら、いずれぶつかる。
俺は足跡の横で舌を出した。
かすかに匂いが残っている。
虫ではない。
もっと肉の匂いがする。
池の虫は食える。
だが、池へ来る四足はたぶん食う側だ。




