第043話「追い込み」
二日間、格下を確実に食い続けた。ミストトードを二体、マッドニッパーを一体。どれも鑑定で確認してから仕留める、手堅い狩りだ。進化率は91%から95%前後まで上がった。
今日も同じルートを回る。主の一回目の巡回通過を確認し、拠点を出た。
岩棚の下層を壁走りで南東へ向かう途中、壁面に吊り下がっている影があった。
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種族:モスバイパー
Lv:6
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俺が吊り苔蛇と呼んでいた種。Lv6は初めて見る。普段の個体はLv4か5だった。体がやや太く、体表を覆う吊り苔の量が多い。
仕掛ける。
壁走りで接近した。モスバイパーがこちらを感知し、体を引き上げた。壁面に吸着したまま、頭をこちらに向ける。この種は体幹の柔軟性が高い。蟲と違って関節がないから、胴体のどこからでも巻き返しが来る。
首の付け根を狙って飛んだ。モスバイパーが体を振った。壁面に吸着したまま旋回し、胴体で俺の体を巻き込もうとする。巻き込んで壁面から剥がし、落下させる動きだ。蛇が蛇を落とす戦い方。
牙を離して壁面を蹴った。急旋回で体の向きを変え、二メートル離れた壁面に着地する。
Lv6。壁面で噛み合えば、向こうの柔軟性にこちらの壁走りで対抗し続けることになる。切りがない。
毒霧を使った。
口腔から霧状の毒を吐き出した。今まで使ったのは防御的な場面だけだったが、狭い壁面の間に霧が溜まる。モスバイパーの体表を覆う吊り苔が毒を吸った。苔が変色し、吸着力が弱まっていく。
モスバイパーが苔ごと壁面から剥がれ始めた。吸着を維持しようと体を振るが、苔が溶けている。足場そのものが消えている。
壁走りで上方に回った。モスバイパーの吸着が限界に達し、壁面から剥がれ落ちる。
落ちてくるモスバイパーの上から飛び降りた。締め付けLv2で頭部から胸部を巻いた。二匹の蛇が絡まったまま泥底に落下する。鱗硬化で衝撃を受けた。
———着地と同時に、締め付けの圧を全力に上げた。
モスバイパーの体が痙攣した。絞めている箇所から骨の軋む音がした。蛇には蟲のような殻がない。柔軟な体は外殻粉砕では砕けないが、締め付けには弱い。
五秒。巻きつけた部分の力が抜けた。動かなくなった。
食った。
通知が来た。
『レベルが上がりました Lv9 → Lv10』
HPとMPが満タンに戻る。モスバイパー戦で使った分が一瞬で消えた。
ステータスを確認した。
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種族:鎧鱗毒蛇
Lv:10
HP:78 / MP:32
攻撃力:42 / 防御力:53
素早さ:32 / 知力:27
【スキル】
捕食継承 Lv1 / 毒牙 Lv3 / 締め付け Lv2
鱗硬化 Lv2 / 壁走り Lv3 / 振動感知 Lv3
熱感知 Lv2 / 外殻粉砕 Lv1 / 毒液圧縮 Lv1
酸耐性 Lv1 / 粘着無効 Lv1 / 毒霧 Lv1
鱗弾き Lv1 / 急旋回 Lv1 / 嗅覚強化 Lv1
反響定位 Lv1 / 鑑定 Lv1
次の進化まで:97%
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HP78。防御53。攻撃42。全項目が仕上がっている。
鎧鱗毒蛇という器で出せる力が、限界に近い。今日のモスバイパー戦でも、毒霧で足場を剥がし、落下させて締め付けでようやく仕留めた。Lv6一体にこの手数がかかるなら、Lv16のスワンプロードに今の器で挑んでも結果は見えている。
進化97%。あと3%。明日、一体仕留めれば届く。
拠点に戻り、主の通過を待った。振動が来て、過ぎた。
体を丸めた。次に拠点を出る時が、鎧鱗毒蛇として最後の狩りになる。




